耶馬英彦

ボイリング・ポイント/沸騰の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

3.5
 レストランの一日は、届いた食材の検品と整理からはじまる。注文通りの品が注文通りの個数と状態で届いているか。生で頼んだ肉が冷凍で届いたら、その肉は翌日にならないと使えない。肉は冷蔵解凍するのがきまりだからである。検品が終わった食材は所定の場所に入れる。先入先出が基本だ。
 ホールでは店内と店周りの清掃を行ない、テーブルと椅子の状態をチェックする。マネジャーは当日の予約状況を確認し、イレギュラーな要望やVIPなどの情報を伝える。売上目標や注意事項を共有して、いよいよ客を迎えることになる。

 一般のレストランでは大抵は平穏に日々が過ぎるが、何年に一回かは保健所の検査が入って、対応に気が狂いそうになることがある。
 食中毒が発生することは滅多にない。開店から一度も食中毒を出さない店の方が多い気がする。あるとしても数年に一度だ。
 食品アレルギーの客はたまにいる。予約時に言ってもらえれば大丈夫だが、注文時にいきなり言われても対応が難しい。
 ハラルの準備ができている店も稀にあるが、費用がかかるので殆どは何もしていない。やはり注文時にいきなり言われても対応が難しい。
 メニューにない料理を注文する我儘な客もいる。強引だからウイエトレスは断れない。

 本作品では、滅多に起きないアクシデントがクリスマスの夜、一度に起きてしまう。オーナーシェフのアンディにストレスが一挙に襲いかかるのだ。気の弱いアンディにはとても対処できない。

 スタートからずっと同じカメラでアンディその他の登場人物を追いかけていく。こういう撮影の映画ははじめて見た。とてもスリリングだ。登場人物の個性や悩みを上手く表現していて、とても痛々しい。よく出来たユーチューブを見ているみたいだった。
耶馬英彦

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