みほみほ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のみほみほのレビュー・感想・評価

3.6
🐴2023年205本目🐴(字幕)

ルーニー・マーラ主演との事で、題材から連想できるイメージからキツイ内容なのではと危惧していたけど、思っていたよりもずっと寓話的で会話劇がメインな為、観やすいという表現が正しいかは分からないけど普通に観ることができた。

基本的に話し合いのシーンからなっているので、集中力がプツプツ切れる瞬間もありましたが、油断していると辛い記憶を呼び起こすような描写が差し込まれるので一気に現実に引き戻されます。

実際の事件からインスパイアされて作られた作品ではあるが、そこにあまりリアリティは感じられず 女性一人一人にスポットを当てるわけではなく、大きな枠組みとして連なっている女性達として焦点を当てていた気がするので、思っていたイメージとは違いました。(同じ女性でも考え方や捉え方に違いがあるものだし、一部ではなく全員が耐えているという状況が特殊でイメージしにくい部分もあった。)

しかしそれぞれ置かれた状況が違う中で、彼女達がどんな選択をするのかは興味深いものがありました。悪魔の仕業、女性達の妄想とされても信じられてしまうようなコロニー自体恐ろしいけど、昔話かと思ったら割と最近の事件らしくて、そこが一番衝撃的でした。

閉鎖的な世界だからこそ成り立つ悪習にも思えるが、何がやばいって宗教という存在がそれを可能にしている事。赦す 赦さないの前に、誰の子かも分からずに受け入れて育てるという概念が通っているのも理解しがたかった。が、自分がここに生まれ宗教を基盤に生きていたらその枠にハマって馴染んでしまいそうだから怖い。

ルーニー・マーラ演じるオーナの言葉が、実際にそのコロニーで暮らす人のセリフとは思えない感性で随分と映画的な登場人物だなと思った。どちらかというと残って闘うと息巻いてた女性への共感の方が強かったけど、現実問題を加味するとただの感情論でしかなくて、皆で出した結論が身を守るには今できる最善策だったのかもしれないなとも感じるし、正解が何なのかは私にも分からない。

強い信仰が邪魔をし、宗教が問題を複雑化させており理解しにくい面もありましたが、閉鎖的なこの場所で自分が生まれ育ったらと想像すると、自分が親ならサロメのように怒り続けていそうだし、自分が妻であり親ならマリチェのような動きをしてしまうのかも。ひとつだけ言えるのはオーナのように冷静に言葉を選ぶことは出来ないってことかな。

ただ女性達の話し合いの中で、オーガストの扱いに疑問を感じたのと、女性達の選択があまりにオーガストにとって重荷過ぎて、それでいいのか…となってしまった部分もある。オーガストに男性の教育をと言っても、どれだけ難しい事をたった一人の人間に託すのか…と思う。

漠然と男達が物語に関わってこないことへ違和感があったけど、保釈の為に町から居なくなる2日間だから物理的に居なくていいのか…と理解しつつも、なんか物語としては すっぽり抜けてしまったような違和感があった。

実際の事件では男性の被害者もいたようだし、もっと闇深いものを感じるが、映画だからこそ出来る思いを込めて昇華することで、このような話し合いがそれぞれの世界で行われて欲しいという願いが込められているようでそこは良かった。

実は試写会にも当たっていて参加予定でしたが、調子が悪い時期にこの題材はキツイと判断し欠席していたので、ようやく観れて良かった。

ルーニー・マーラも良いことは良いけど、何にでも果敢に挑む自然派リアリティ女優だと思っているので、今回はちょっと物足りなさがあった。(これはルーニー・マーラが私にここまでやる?!と度々思わせた事もあり、それらと比較しての主観です。)

ジェシー・バックリーは、何作か観てきた中で妙にインパクトに残っていたから、本作で見つけた時は嬉しくてなんだか好きになりました。

フランシス・マクドーマンドはもっと観たかったけど存在感が流石。彼女が演じた女性の答えも当然あっていいはずだから支持したいと思った。
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