ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

とまどい(1995年製作の映画)

4.2

エマニュエル・ベアールは感情を表に出さず、その左右非対称の曖昧な瞳はこちらをまごつかせる。年甲斐もなくベアールに魅せられるセローの落ち着きもまた素晴らしい。編集者の軽薄さと査定に来る司書の慎ましさの対>>続きを読む

マックィーンの絶対の危機(ピンチ)(1958年製作の映画)

3.8

書割りスタジオで繰り広げられる夜の物語。リッチな色調だが、予算は乏しい。終始ゆるい展開。50年代のダイナーやグローサリーストアが垣間見れてそれだけで嬉しい。若者達のささやかな反抗!The End...>>続きを読む

夕なぎ(1972年製作の映画)

4.2

年甲斐もなく嫉妬で暴れまくるイヴ・モンタン!その身勝手な行動に周囲は迷惑するものの愛嬌もあるから憎めない。恋敵サミー・フレイもいずれモンタンと友情を深めることになる。鉄屑屋の実業家とバンドデシネ作家っ>>続きを読む

雨のしのび逢い(1960年製作の映画)

4.0

"普通の速さで歌うように"港町を徘徊するデュラスが刻印された映画。モローは労働者階級のベルモンドに惹かれてパーティでは上の空、魂すらも彷徨い、並木道の木々を見上げる形で視覚化される。ドリーで横滑る建物>>続きを読む

肉弾鬼中隊(1934年製作の映画)

4.2

唐突に隊長が殺される冒頭から只事ではない。狙撃によって何ら打開策もなく殺されていくマクラグレンの部下たち。悪夢。オアシスにおける地獄の籠城戦。過去を語り出した連中から死んでいく。カーロフは狂信者として>>続きを読む

鄙より都会へ(1917年製作の映画)

4.2

1910年代NYの社交界を暗躍する泥棒カップル。豊満な女性の方がカンピオン監督『スウィーティー』を彷彿とさせる。過度なホテルの装飾に興奮。シェードランプの陰が落ちる怪しげな女の顔。広大な牧場に点在し群>>続きを読む

パリは霧にぬれて(1971年製作の映画)

4.0

ソフトフォーカスと抒情的な音楽。貨物船に飛び入り乗船。早朝の霧立ち込めるセーヌ川に沿って流れる景色を丁寧に捉えるリッチな映像体験。フェイ・ダナウェイの躁的な振る舞いで安心できない。そういう宙吊りにされ>>続きを読む

逃亡者(1947年製作の映画)

3.8

殉教に取り憑かれた男と宗教弾圧。寓話すぎて眠い。サイレント様式の冒頭、チンダル現象による光が床に十字架を象る。フォンダ演じる神父が逡巡と恐怖を乗り越え死に至る様は内に閉じていて共感し難い。賞金首のボン>>続きを読む

最敬礼(1929年製作の映画)

4.0

海軍士官学校に進学した名家の弟を主軸とした学園ドラマ。若き日のワード・ボンドのコメディ・リリーフ。友人のプライスも最高。クライマックスは10万人収容のスタジアムで陸軍との一戦。兄貴との恋の鞘当て。男は>>続きを読む

親愛なる日記 レストア版(1993年製作の映画)

4.2

鑑賞後は世界がギンギンに開かれる系の映画。まさかのオムニバス!そしてアフレコと音楽のデカさはまさにイタリア映画。モノローグが統合失調のように溢れ出し世界へ拡張する感覚の現代風刺劇。

第1話
街の人た
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野人の勇(1920年製作の映画)

4.2

多幸感。そして怒涛の展開。乞食同然のビム。ホーボーの少年との心温まる活劇。少年を納屋の2階に滑車で吊り上げたり、室内のシャンデリアにぶら下がったりとスタンダードサイズに映るモノが悉く動く!集団リンチは>>続きを読む

肉体(1932年製作の映画)

-

少し足りないが黄金の心を持つレスラー。確かに突発的な暴力に切れ味がある。如何せん眠すぎた。プレコード期によくある身重なヒモ付き女と兄と偽るヒモ男との三角関係による恋の鞘当て。刑務所の面会室でガラス越し>>続きを読む

ポーター 鷲の巣から救われて(1908年製作の映画)

3.8

父役はD.W.グリフィス。赤ん坊が置き去りにされる描写はフィクションと知りながら不穏な気持ちにさせられる。『三悪人』の荒野、『アンダー・ザ・スキン』の浜辺。

ザ・テディ・ベアーズ(原題)(1907年製作の映画)

3.8

熊一家の視点で観ると不条理で救いがなさ過ぎる。不法侵入する少女が熊の留守中に食卓を荒らしベッドで就寝。見つかると2階の窓から飛び降りて雪道を疾走する。追走劇は猟師のために中断。両親熊は射殺され子熊は捕>>続きを読む

三悪人(1926年製作の映画)

4.0

三悪人の人物像だけで既に勝っている。それまでひたすらコメディリリーフだった2人、土壇場スペードがトランプのいかさまで殿を自ら引き受け、マイクが火薬庫でモーセのなぞなぞを問う。火を纏った幌馬車で教会を強>>続きを読む

誉れの一番乗(1926年製作の映画)

4.0

没落したアイルランドの名家オハラ一族。厩の下男が渡米して騎手に!同僚のユダヤ人騎手の黒人執事が纏う死の影。そのブラックユーモアの数々。諍いに巻き込まれ、殴れられると咄嗟に仕込んだ剃刀を取り出す。病院の>>続きを読む

勇者たちの休息(2016年製作の映画)

4.0

還暦を超えた男達が大アルプスを自転車で縦走!ホワイトアウトしかけてる氷点下の山道を登っていく凍傷も厭わない狂気のような冒険心。過去のTour de Franceのフッテージ。サドルが合わなくてお尻に塗>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

4.2

第一部『日曜日の友だち』
休日に出会った騎士はTシャツで汗だく。男らしさは空回る。すっかり疲れ切って友達の肩を借りて眠る電車の帰路。

第二部『ハンネと革命記念日』
ノルウェー人ハンナの散々な留学最終
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ウディ・ガスリー/わが心のふるさと(1976年製作の映画)

4.2

地上に舞い降りた天使a.k.aウディ。『北国の帝王』然り大恐慌後のホーボーと貨物列車といえば無賃乗車を許さぬ暴力警備員との対決!ソフトフォーカスで映し出される淡い光の中で繰り広げられる貧しいながらも分>>続きを読む

ゴー!★ゴー!アメリカ/我ら放浪族(1985年製作の映画)

4.0

卵を失ったと50回言え!と妻に命令を下してダムの駐車場で決裂する2人。意味深。地獄の沙汰も金次第である自明の事を強化するからこそ全然笑えない。慎ましき会社の駒に戻って、子供を作り末長く暮らしました。誰>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

-

グラシネのIMAXで観たというのに、こういうスペクタクル系の映像に対して全く感覚が鈍麻している自分がいる。映像の価値が均された現在、手回しの撮影機器で挑む主人公たちが残す映像は信じてもらえるのだろうか>>続きを読む

やさしい人(2013年製作の映画)

4.0

作曲しろ!!!ロメール 『夏物語』と同様にツッコミを入れたくなるが、あの主人公と違ってこちらは中年。ベルナール・メネズ演じる好々爺の父親と犬がいるそれだけでだいぶadvantageがあるはずだ。犬でも>>続きを読む

新婚道中記(1936年製作の映画)

4.0

フロリダに出張していたと嘘をつくため日焼けマシンとフルーツ盛り合わせ(カリフォルニア産)まで使って誤魔化すグラント!おそらく情婦(作中には現れないので実在しないのでは?)との逢引を隠蔽するためだ。離婚>>続きを読む

アダム氏とマダム(1949年製作の映画)

4.0

原題は『アダムの肋骨』つまりイヴ(女性全般)を指し示す。不倫した夫を銃撃した妻の裁判を検事のスペンサーと弁護士ヘプバーン夫妻が受け持ち対立することに。夫婦が昼の法廷と夜の家庭を繰り返す。最初は仕事と割>>続きを読む

フィラデルフィア物語(1940年製作の映画)

4.0

第3の男であるジミーが狂言回しとして令嬢ヘプバーンの再婚までの道のりをかき回す!酩酊状態でプールから『Over the Rainbow』口ずさみながらヘプバーンをお姫様抱っこで部屋まで運ぶジミー。高潔>>続きを読む

或る夜の出来事(1934年製作の映画)

4.2

箱入り娘のマイアミからニューヨークへの逃避行。ロードムービーとして最高だが、何と言ってもモーテルのツインベッドの間に掛けられた布a.k.aジェリコの壁の存在。消灯後にコルベールが寝衣に着替える背中のシ>>続きを読む

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

4.0

フェリックスの他人の顧みなさとアルマの幼稚ぶりに目も当てられない!再会したカフェでの噛み合わなさ!恋愛要素は脱臼を繰り返す。常識的に見えるアルマの姉も何だかんだでイケメンと出かけてしまう。エドゥアール>>続きを読む

雨の訪問者(1970年製作の映画)

4.2

ウェットな大人の映画。好き。冒頭のミニカーレース場兼ボーリング場の建築から相当いい。ジョベール演じるメランコリーa.k.aラブ・ラブは白いレインコートから始まり、ずっと白コーデ。硝子窓に胡桃を投げる占>>続きを読む

燃える平原児(1960年製作の映画)

4.0

艶かしい弱冠25歳のエルヴィスのあり得たかもしれない映画スターの片鱗。ハードな展開の西部劇。先住民の母を持つ家庭。兄は先妻の子で完全な白人だが弟エルヴィスは混血児。序盤のサプライズ・パーティーに参加し>>続きを読む

血涙の志士(1928年製作の映画)

4.0

颱風上陸なので家で翻訳鑑賞。絞首人の家の外観が禍々しくて素敵。デカい犬と執事が素直で素敵。馬の障害物走で転倒する撮影が野蛮で素敵。荷車を付けたロバが過積載で文字通り浮き足立つ。帰国した意味があまりない>>続きを読む

晩菊(1954年製作の映画)

4.4

2度目
沢村貞子の店で北海道へと出稼ぎに発つ小泉博との別れを惜しむ二号さん坪内美子の眼帯姿。外して患部の様子を尋ねる婀娜っぽい声と仕草を遠くから眺めながら煙草をふかす貞子の夫・澤村宗之助の目線。人間の
>>続きを読む

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

3.8

グレタ・スカッキが「映画は観ないの。人生は短いから』と何の衒いもなく言い放つ。パサデナ警察署でゴールドバーグがタンポンを振り回しながらロビンスを問い詰め、尾行していた強面の部下がハエ叩きを振りまわす場>>続きを読む

ハリケーン(1937年製作の映画)

4.5

ディザスター映画ではあるが文明と人間がぶつかる骨太な演出だった。マストから飛び降りるあの高さ!劇的に男女が再会する天国のようなポリネシアかと思いきや一転地獄に。主人公のジョン・ホール演じるテランギはレ>>続きを読む

若き日のリンカン(1939年製作の映画)

4.2

法廷劇として最高。太陽の日差しで眼窩に陰が落ちてのちの風貌を示唆する演出からして既に素晴らしい。付け鼻の特殊メイク。石を投げると波紋が拡がり、流氷だらけの川の流れを背景にさっき迄いい感じで話していたガ>>続きを読む

アイアン・ホース(1924年製作の映画)

4.0

殺し屋たちが集まる酒場で、仲間が先回りして制圧、からの拳での一騎打ち。2人を衆人環視する人々が円形に取り囲み動きに合わせて移動する。『静かなる男』でも出てきたやつ!デスマッチ!さらにテントに映る陰で勝>>続きを読む

制服の処女(1931年製作の映画)

4.0

抑圧の塊みたいな学園に編入したら麗しき先生に恋をした。食いしん坊マリーの食べる骨付きチキン。イルゼのクローゼットの扉に貼ってあるブロマイド。生き生きした無名の生徒たちが光り輝く。ベルンブルク先生が消灯>>続きを読む