鹿山さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.5

ただ漫然と画面を観て、そこに溢れる生活音を聴いていただけなので、スッと感想が出てこない。むしろそれこそ、幸福な鑑賞体験の証左かもしれない。

当然ながら、書くことと話すことには超えがたい隔たりがある。
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レナードの朝(1990年製作の映画)

4.2

デニーロの演技の凄絶さ。
みずから当事者として体験したことのない病気に自分なりに理解を示し、身体全体で表現すること──これを「想像力」 と呼ばずしてなんというべきか。

このころのハリウッド映画は俳優
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少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録(1999年製作の映画)

4.4

​​TV版制作陣によるセルフ二次創作。
​​作画も構成もアニメ版よりずっとぎゅっと凝縮されていて、そしてなにより思想性をTV版よりもずっと肯定的に描いている。特に第三幕の展開には涙ぐむ。TV版ではつい
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関心領域(2023年製作の映画)

3.7

「うんうん、悪の凡庸さだね……」

本作は特筆すべきところのない凡庸な日常風景を描いた映画だ──ただし、数m先で起きている民族虐殺からは目を逸らしつづけている、という点を除いては。
冒頭の長ったらしい
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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.7

・コナン映画を観たのはおそらくこれが初めて。いままでアニメや映画が地上波放送されているのを、断片的に観たくらいの記憶しかない。
けれど、友人が「気になる」と言ってたり、あと興行収入がとんでもないことに
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ミーン・ストリート(1973年製作の映画)

3.7

チンピラどもの金絡みの揉め事、愚痴を延々と見せられる。つまりはくだらなくて、そして痛快。中盤の情けない殴り合い〜発砲がハイライトか。
やはり全体として荒削りな造りなのは否めないものの、音楽の使い方や、
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

4.1

2024/4/9 2回目。
再見。終盤で内田樹が指摘していたとおり、全共闘の本質は反米愛国運動であった。いいかえれば、一見すると左翼的な政治運動の根源にはきわめて右翼的なナショナリズムが通底していると
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ヤジと民主主義 劇場拡大版(2023年製作の映画)

3.7

 「言論の自由」というよりは、「暴力の独占=警察」の問題だった。札幌で警察の職権乱用事件があったのはシンプルに勉強になった。それはむろん批判されるべき横暴である。
 現代社会において「ドキュメンタリー
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ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)

3.7

 料理に内在する運動とはなにか。
 スープなどを注ぐ、鍋に入れる、湯気が立つ、井戸から水を汲み上げる、湯気が立つなどの「垂直運動」。調理場を動き回るという、「水平運動」のふたつだ。
 撮り方もこれらを
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メドゥーサ デラックス(2022年製作の映画)

3.5

 擬似ワンカット×密室ミステリー。全編においてカメラが特定の人物の背後をさながら亡霊のように追従していく。これは『クローバーフィールド』『1917』にも似た、3Dゲーム風世界観の輸入のように思える。け>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

3.9

・ストップモーションアニメと実写映画とだいぶ異なる表現なのだな、とふと思った。というのも、映画は既存の空間を映すものだけれど、ストップモーションアニメは空間がまるごと変わっていく。画面内に新たなできご>>続きを読む

マイ・ライフ・ディレクテッド・バイ・ニコラス・ウィンディング・レフン(2014年製作の映画)

3.7

 世界的映画監督だろうと生活はあるし、痴話喧嘩をしてなんとなく仲直りするし、自分が何を創作しているのかわからなくなるし、作品発表まで緊張するし、ヤケクソになるし、周囲に理解者がひとりでもいると嬉しいし>>続きを読む

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)

3.7

 レフン監督本人がホドロフスキーからの影響を公言しているために、アート映画として受容されているが、ぼくはむしろテレビゲーム的な映画におもえた。ドギツイ色彩感覚、爆裂するエキゾチズム、横スクロール化する>>続きを読む

この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019年製作の映画)

4.6

 一見するだけではとても感想がまとまりそうもない。演出面に注目してもういちど観てみたい。

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

3.9

 前作『グッドタイム』同様、Oneohtrix Point Never目当てで鑑賞。だんだんとサフディ兄弟のファンにもなってきてしまった……。

 前作同様、ロクデナシの無軌道な博打をいかがわしい電子
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ゆるキャン△(2022年製作の映画)

3.7

 人気TVアニメの劇場版にして、本シリーズにとってひとつの節目となる本作。現監督:京極義昭が手がける『ゆるキャン△』はおそらくこれが最終作だろう。演出や画造りを TVシリーズ から大きく変えることなく>>続きを読む

そして人生はつづく(1992年製作の映画)

4.2

 これを観たあとは「リアリズム」という言葉を軽率に用いることができなくなる。