中庭さんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

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PASSION(2008年製作の映画)

4.4

圧巻、かつあまりに卑猥な恋愛会話劇。誰一人ろくな発言をしていないのに、早く次の言葉を繋いでくれと言いたくなるほど対話の間が長くしんどく感じるようになっていく。

螺旋銀河(2014年製作の映画)

3.6

片割れとして接近しているように見せかけて、二人の個性は力強く別方向に発展しており、気付けば関係性は大いに変貌を遂げている。女性バディものの確信的なアップデート。何より二人の顔の違いが良くて、どんな会話>>続きを読む

love machine(2012年製作の映画)

3.3

小島可奈子たまらん。“machine”のタイトルが示す通り、物語の自働のシステムが観客へ戦慄を運ぶ。

親密さ(2012年製作の映画)

3.9

言語化されない、非常に微弱な装いをした感情エネルギーの行先をとらえるために、最も純粋な方法として選ばれたのがこの形式なのか。
前半と後半の結節点に当たる長回し、見ていて大いに取り乱す。

コンティニュー(2021年製作の映画)

3.0

人知れずロードショー、ジョー・カーナハンの新作。まさかの転生ものだが、流行りの形式からは一線を引く。やはり凄まじいのはエンディング、物語の切り方だろう。何が解決したのかよく分からない。ナオミ・ワッツが>>続きを読む

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

3.4

石田法嗣の裸身にまとわりつく色香。得体が知れない、触れたら自分と自分を取り巻くものとの関係が何か別の状態に変わってしまいそうな吸引力があり、染谷将太がおそるおそるその肌に近付こうと息を殺して踊り続ける>>続きを読む

echoes(エコーズ)(2000年製作の映画)

2.6

サンクスシアターにて、現在盛んに活動を続ける日本の映画監督たちの初期作を立て続けに見て、ロードムービーの多さに驚かされる。

彼方からの手紙(2008年製作の映画)

2.5

瀬田版精神と時の部屋。踊りを登場人物の感情と一致させず、即物的に撮ることの困難さ。

怯える(1998年製作の映画)

3.4

自転車の勢いと鈴木卓爾の焦った無表情。これは必見。サンクスシアターで最たる収穫の一つ。

5 windows mountain mouth(2013年製作の映画)

2.3

山口?
場所にこだわれば場所は消え、口ずさむ歌が立ち位置をかろうじてとらえさせてくれる。

瀬田なつきの映画に登場する少女たちの顔、何か共通する作りがある気がする。

5windows(2011年製作の映画)

2.3

まなざしは単体で存在せず、相互に連なり合うことで歴史に固有の時間が生まれるとでも言いたげな。街を歩き、結界を迂回するようにしながら、誰かと誰かが作用し合う寸前の瞬間を捕まえに行くような、実践的なアプロ>>続きを読む

何食わぬ顔(2003年製作の映画)

3.4

long versionを鑑賞。目を引くロケーションが続く。競馬場は最高だと思った。何気ない会話が時間を超えて場所を変えて繰り返されるうち、全員が重要な何かを取りこぼしていく。青春映画か。濱口竜介の声>>続きを読む

永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

3.5

岡部尚の虚ろなひたむきさにこそ、心奪われる瞬間が潜んでいる。卑猥な会話劇の応酬に、正しさらしさに包まれた牧師の存在そのものが鋭い違和感を残す。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(2021年製作の映画)

3.6

ジョナス・メカスが画面に映る自分の姿と声を同期させて話している映像を初めて見たかもしれない。
同時代の猥雑なイメージが、画面を等価的に通り過ぎて行く。バンドのエピソードが時代の過激さを包む。しかし音源
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

1.9

母と砂漠に投げ出されるくだりが二度、サンドワームが登場するのは二度でなく三度、一本で5人分の水がと説明された木々が燃えるショットのダサさなど、ノーランの映画を見たときによく感じる呼吸の合わなさと似た感>>続きを読む

クローネンバーグの ファイヤーボール(1978年製作の映画)

1.8

レースの仕組み上、勝負はどうしてもあっという間に決まってしまう。その緊張感をいかに引き伸ばすか。

牛乳王子(2008年製作の映画)

2.0

後半のミュージカルの徹底的なずれ方はよく分からないが(『高速ばあば』でも変な楽曲あった気が)、怨念の化身が人間の形を保つ優れた方法の一つのように思えたし、赤と白が混ざり合い生起するピンク色には目を奪わ>>続きを読む

ラビッド(1977年製作の映画)

3.1

『シーバース』と同じく、メインの舞台装置は得体の知れない感染現象。向こうは強姦などの性的な暴力行動をまるで本能に従わせただけだ、とでも言わんばかりの剛腕さがあったが、こちらはより無差別な、純粋な捕食行>>続きを読む

Talkie & Silence(1999年製作の映画)

2.4

物の壊れる音、割れる音に男女の破局が象徴されるが、老人が身を置く世界に残されたものの静けさは、まさにその騒々しきあり方と対比され、提示される。

あとのまつり(2009年製作の映画)

2.1

瀬田なつきを知るための一本にようやく導かれる。映画の記憶は何年後の未来の自己と他者をも結ぶ。

旧支配者のキャロル(2011年製作の映画)

3.1

映画作りは新世代に乗り越えられるものでなく、無駄打ちに終わる破壊を目論む必要さえあり得ない。ある意味もう勝つことはかなわない、れっきとした事実。ねじ曲げるには誰が死ねばいいか。一つの試論として立ち上が>>続きを読む

八月八日(2016年製作の映画)

2.3

孤独のあり様など、つつましい形式で肯定してみせながら棄却出来る。永遠の囚われから解放された個人映画。彼女が生きていることは、何故こうも意識させられるのか。

All Night(2014年製作の映画)

2.7

ミニシアターの待合室で、一人の男が杖を広げて弧を描くように暴れた。誰かを探し当てるために。飛び上がったり、勢いよく逃げ出す観客たち。普段あんな機敏に動く印象の無い人たちが。

ジョギング渡り鳥(2015年製作の映画)

4.0

見ている途中、こんなに遠くまで来れたと情動に駆られた映画は久しぶりで、とても嬉しく思った。全ては私たちの目に見えない何者かの主体によって集団的に撮影されており、誰にも語られることのない日常のエピソード>>続きを読む

ヘカテ(1982年製作の映画)

3.6

デジタルリマスター版を見逃したため、VHSで鑑賞。
画面越しに見つめるだけで口が渇きそうになる駐在地、モロッコの路地裏で愛に狂う男が、全く仕事が手につかなくなるという物語運びが良い。出張先で本来の居場
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この茫漠たる荒野で(2020年製作の映画)

3.3

岩石の上下で繰り広げられる銃撃戦の静けさは無声映画のようでいて、微音の構成にも賭けられており、音響のダイナミクスが命。信頼のおける出来になっているか、西部劇の成立を問うかはともかく、非常に野心的な試み>>続きを読む

ステレオ/均衡の遺失(1969年製作の映画)

2.4

ヘリコプターの運動をゆっくりととらえたショットがやけに印象に残っている。『クライム・オブ・ザ・フューチャー』に比べ物語に架空の重厚さはなく、コミュニケーション能力を奪われた数組の男女の観察実験を、ドキ>>続きを読む

100人の子供たちが列車を待っている(1988年製作の映画)

3.6

半径1〜2メートルの身の回りと、暴力的な社会との境界線が限りなく薄れゆく子供たちへ映画の成り立ちを講義する。何がもたらされるか。フレーミングを教わり、被写体との距離感を一つずつ考える。フィルムの実在性>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

3.6

防波堤を走る伊藤万理華を金子大地が追い越し、全速力のまま立ち止まって振り返り、一切力を抜かないまま両者が衝突して吹っ飛ぶショット。良すぎる。涙が溢れた。
ビート板役の河合優実の名前は覚えねば、と思った
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返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)

2.2

校庭で化け物に遭遇し校舎内に逃げ込み、そのまま狭い廊下を逃げ惑う一連の流れは『学校の怪談』シリーズを彷彿とさせる。校舎の造形も只ごとでなく、第一章の美術はとにかく見惚れてしまう。
職員室にある鏡がドラ
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ロシアン・エレジー(1993年製作の映画)

3.6

匿名の個人が息を引き取る直前に、その確固たるものであった主体が複数性に開かれ、誰のものであるかも判然としない美しい風景が流れ始める。堂々たるフィクション。騙されたように感動を覚える。

黒い太陽七三一/戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌(1988年製作の映画)

3.5

悪趣味という言葉に還元することなど到底認められぬ、暴力描写の無意識的な快楽と国家的な怨嗟の与りが産んでしまった、簡単に見ることの許されない猟奇的大作。計り知れない数の人間の感情エネルギーが伝わってくる>>続きを読む

クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立(1970年製作の映画)

2.2

ルージュ病の症状が画面上に直接表現される機会は奪われているが、化粧品から感染するというこの疾患のテクスチャが、何故かこの寒々とした風景と男性同士の静かに高まり合う絡みの姿から浮き上がってくるように感じ>>続きを読む

トビー・フーパーの世にも不思議な怪奇アパートメント(1998年製作の映画)

3.8

アパートメントの敷地内が箱庭に例えられた、フーパー流のクローズドなコメディ群像劇。登場人物の行動に一貫性がなく、主人公の倫理観があわや破局を迎えそうになるが重篤な雰囲気は回避される。何があの建物を運営>>続きを読む

オキシジェン(2021年製作の映画)

1.8

注射針が同じポイントに抜き差しされる痛覚のイメージが、この壮大な設定の中でも残されているという表現のバランスが笑える。目の前が開けたときのショック描写もやけに素朴で(『ゼロ・グラビティ』にも同じような>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

3.2

正方形に近くジャラジャラとした幕で区切られた舞台のあらゆる設計が素晴らしく、パフォーマーが矢継ぎ早に様々な角度から入退場を繰り返す様を見ているだけでも圧巻。ドラムセット、パーカッションをばらすとあれだ>>続きを読む