文字さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.4

1968年に駒場の900番教室で行われた全共闘と三島由紀夫の討論会。焚祭。
その時の映像がTBSから発見されこのドキュメンタリー作品が制作されたとのことだったが、その映像が全て用いられたのではなく、ナ
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戦争と平和(1965年製作の映画)

3.7

サタンタンゴ以来の体験と疲労感。大分端折られてはいたけれども、艶々しい奈落。
頽落した今となっては二度とこんな映画作れないだろう。
もし窓の外にあったものが反動であったとして、その反動はどう振る舞うの
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エルミタージュ幻想(2002年製作の映画)

4.9

白夜か、いや追想だ。
もううんざりだ。ポスト・フェストゥム意識
妖精のように空想的な、見栄ばかりの戯言に過ぎない。なんと退屈なことか、
10年は要する。浅薄な合理主義め。
星を見たことがない、地図しか
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孤独な声(1978年製作の映画)

4.6

明け方/黒い牛乳を思い出す
オクシモロン/
声の形象

自由と壁とヒップホップ(2008年製作の映画)

3.7

 2008年にジャッキー・リーム・サッロームによって制作されたドキュメンタリー作品。原題は"SLINGSHOTS HIP HOP"。本作品では、DAMら「48年組」とPRら「67年組」がヒップホップを>>続きを読む

ノスタルジア(1983年製作の映画)

4.7

 "NOSTALGHIA"であって、決して"NOSTALGIA"ではない。 イタリアで撮影されたタルコフスキーの映画作品だが、これ以後タルコフスキーがソヴィエトに帰国することはない。撮影後しばらくイタ>>続きを読む

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)

3.7

 タルコフスキー初の長編作品。原題は「イヴァンの少年時代」とでも言ったところだろうか。邦題には些か不満がある。ボゴモロブの短編小説を映画化した作品である。独ソ戦の断片をソ連側の視点から描く。
 “らし
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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)(1969年製作の映画)

4.2

 ずっと観たかったタルコフスキー作品。二日間に分けてワンショットずつじっくりと見た。ソラリスと同じ轍は踏むまい。タルコフスキーの大作であるが冗長さはあまり感じなかった。いや、あらゆる間隙を冗長と形容す>>続きを読む

サタンタンゴ(1994年製作の映画)

5.0

 観た方がいい。でも、どうせなら10月に観たかった気もする。
 タル・ベーラの7時間18分に及ぶ超大作。この作品を作り上げたタル・ベーラに感服する。この長さを超える作品というと、寡聞につきランズマンの
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ウンベルトD(1952年製作の映画)

4.1

 初めてヴィットリオ・デ・シーカの作品を観た。ネオレアリズモの代表作である。戦後敗戦国であるイタリアの堕落した姿を克明に描いている。見ていて陰鬱な気分にさせられる。あるいは私がこの作品を見るのは50年>>続きを読む

白夜(1957年製作の映画)

3.3

 ヴィスコンティ作品。ドストエフスキーの短編『白夜』をヴィスコンティがパスティーシュしたといったところだろうか。舞台はイタリアの港町に移り、名前も変わっているが、大筋は変わらない。しかしながら、あくま>>続きを読む

密林の慈悲(2018年製作の映画)

4.6

 久しぶりのキニヤルワンダ。第二次コンゴ紛争最中における、立場の異なる二人の兵士の心理的葛藤を描く。反復強迫か。上映後のトークセッションでも語られていたが、黒澤明の「デルス・ウザーラ」を思い出した。コ>>続きを読む

ブーベの恋人(1963年製作の映画)

3.2

 ファッショ統制下にあったイタリアの市井を描く。パルチザンのブーベ。司祭を「サン・ラッザロ」で降ろす。政治的、であるがあまり意識させられない。クラウディア・カルディナーレがただただ美しい。そしてその効>>続きを読む

Hotel Magnezit(原題)(1978年製作の映画)

-

ドキュメンタリー.であるか,
やはり/盲いた映画/は/
噴出して,抹殺される
それは決して/無用のアイデン_ティティを与え/ず,本来的/生起はそこにない
አሰቃቂ። 野蛮だよ
本質/とは,共同現存在な
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世界の涯ての鼓動(2017年製作の映画)

3.8

 ヴィム・ヴェンダース監督作品。終わり方が印象的。原題は”Submergence” 。まあこの原題が示している通り、やはりライフセーバーやった。水と、ライフセーバー。ライフセーバーの70%は水で構成さ>>続きを読む

ツリー・オブ・ライフ(2011年製作の映画)

3.2

 重力レンズ効果と、赤方偏移の追体験。そんなところにあなたはいない。ヨブ記が参照されているが、本作品においてはその神議論的問題への一定の解を求めていたように思う。でも違う。天国と地獄は結婚したのだ。ブ>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

4.8

 レバノンが舞台ではあるが、現代社会を集約したような作品だった。しかし、それでもこの作品の全体性は全体化されない。自己にとって一定の否定性を持つはずの他者によって、自らの認識を超越したところで存在が規>>続きを読む

ニーチェの馬(2011年製作の映画)

4.4

 タル・ベーラ。既に古典的風格を備える。やはりいい。とてもいい。モノクロームと、モノローグ。ロングショットが印象的。全景は、決して見えない。
 作品自体は非常に単調と言って仕舞えば単調である。人里離れ
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サムライ(1967年製作の映画)

3.9

ジャン=ピエール・メルヴィル作品。ヌーヴェルヴァーグ期に制作されつつ、フランスのフィルムノワールを代表する映画である。冒頭からフィルムノワールの特徴が顕著に表れていて、色彩が素晴らしい。そしてと>>続きを読む

奇跡の丘(1964年製作の映画)

3.7

 パゾリーニ監督作品。以前パゾリーニの「オイディプス王」を見たときは色の使い方が好きだったが、本作は全編がモノクロで構成されていた。唐突に「やってくる」、聖歌や音楽もいい。どこかエキゾチックな印象を受>>続きを読む

全身小説家(1994年製作の映画)

3.6

 原一男による、作家井上光晴の晩年期を追ったドキュメンタリー。と謳いつつも、井上の幼年期(の嘘)をドラマのような形式で再現しており、従来のドキュメンタリーの紋切り型に当てはまらないような作品だった。本>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

 映画ではあるが、映像は3秒ほどしかない。SF小説に写真を合わせたような作品だった。ヌーヴェルヴァーグ調のdécadent。素晴らしい。ハイコントラストで、黒飛び、白飛びが所々にあるスチール写真が印象>>続きを読む

話の話(1979年製作の映画)

4.2

 断片的なものをただ繋ぎ合わせた様な作品。極私的な記憶を基に構成されている極私的な映像。意味を措定することをどこか拒絶している様にも思う。しかしどこか寓話的でもある。アニメーションの効用か。
 記憶な
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アオサギとツル(1974年製作の映画)

3.8

 これまでの切り絵アニメーションに変わり、手描きで構成された作品。背景描写が綺麗だった。
 フィシオログスのミュルメコレオン。アオサギもツルも人間と同じくアリライオンであった。自分の言葉と反対の行動ば
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キツネとウサギ(1973年製作の映画)

3.2

 これ以前の「25日・最初の日」や「ケルジェネツの戦い」は大人向けのアニメーション作品という印象を受けたが本作はロシア民話が原案ということもあり、子どもでも楽しめる様に作られていると感じた。
 無粋で
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ファントム・ミュージアム(2003年製作の映画)

2.1

奇妙な美。デカダンス的でグロテスクな美。なぜグロテスクなものに惹かれるのか。
痙攣的で、スポンジを持った鈍色のライフセーバーと猥雑で麁陋な拝火教徒の運命的な出会いのように美しかった。その道程は遠い。や
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(1990年製作の映画)

-

櫛の歯と、歪んだ梯子が印象的だったが、理解するまでには至らなかった。

アナモルフォーシス(1991年製作の映画)

3.6

キノ・グラース。
遠近法、透視図法、アナモルフォーシスについて理解するためには役立つ。人形を使い視線を再現する試みは面白かった。有名なホルバインの「大使たち」なんかについても解説しててわかりやすかった
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ナチスの強制収容所/ナチス絶滅収容所(1945年製作の映画)

-

ムーゼルマンをみた。
相貌をみた。
双眸をみた。
そうぼうをみた。
閾に在った。
其處此處にあった。
愧じていた。
黒い仮象は、口を開いていた。

戦場でワルツを(2008年製作の映画)

4.5

 アニメーション・ドキュメンタリーの嚆矢となった作品。まさしく現象学的芸術といっても差し支えない素晴らしい作品だった。レバノン侵攻時の悲劇を描く。監督自身の従軍時代の経験あるいは記憶を元に制作されてい>>続きを読む

月世界旅行(1902年製作の映画)

3.3

世界初の娯楽映画と言われているメリエスの本作品。SFというよりかはファンタジー要素が強かった。100年以上経過した今この作品を見ても、普通に楽しめる。映画の発展というものを知らしめられた。この作品が作>>続きを読む

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)

3.4

 ヴィスコンティ作品。所謂「ドイツ三部作」最終作。タイトルが示す通り、「狂王」ルートヴィヒ2世を叙事詩的に描く。長い。終始絢爛な映像が続いていた。制作費がとてもかかってそうな作品だった。
 ただ観想的
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存在の耐えられない軽さ(1988年製作の映画)

4.1

 ミラン・クンデラの同名の小説を映画化した作品。原作未読。3時間近くあるが、冗長さは特に感じなかった。
 当事者性のようなものを持ち合わせていない私がこの作品で描かれていることについて何かもの語ること
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かくも長き不在(1960年製作の映画)

5.0

 パルムドール受賞作品。陰影際立つモノクロームで描かれる映像が秀逸だった。直接的な戦争表現はない。あくまで対話と市井の暮らししかカメラは映していないのである。しかし、逆説的だが収容所における生の表象不>>続きを読む