スイート&ビター! ちょっとお洒落でシニカルな惚れた腫れたのドタバタ劇。これぞウディ・アレンの真骨頂。こんなに下世話なお話が下品にならないのは彼の巧みな脚本と演出のなせる技。これはある意味「幻想だけが>>続きを読む
黒澤明の第4作。お馴染みの歌舞伎「勧進帳」をベースにした、黒澤監督、最初で最後の緊迫のミュージカル⁉ 59分と最短の作品ながら、一つひとつのシーンの濃密さたるや、すざまじいものがあります。特筆すべきは>>続きを読む
「ラストは幸福なるべし」と伊丹万作は言った。疑うことをやめて信じることから始める。現実はそんなに甘くないにしても、前向きかつポジティブに生きる人たちが、幸せを掴んでいく映画はやっぱり気持ちがいい。それ>>続きを読む
ごく私的に中村義洋×濱田岳の組み合わせは、現在の日本映画界における最強のコンビだと思っている。これは単なる相性の問題なのか、彼らが描く世界すべてが、どうにも心の琴線に触れるのだ。日本がいろんなものを得>>続きを読む
黒澤明の第5作。戦後すぐに彼が描いた「自由」と「自立」。「自由は闘い取るべきものでありその裏には苦しい犠牲と責任がある」という台詞が印象に残る。こんなにも人間臭い、鬼気迫る原節子を見たのは初めて。人間>>続きを読む
さすがはアン・リーだ。とても映像の美しい3Dサバイバル映画が、ある告白で一転、人間の極限を描く衝撃作に一変する。割り切れないもの、答えのでないもの、永遠に続くものの隠喩としての少年「パイ」くんが投げか>>続きを読む
PFFスカラシップによる新鋭・吉田光希監督の作品。台詞を極限まで削り、崩壊寸前まで落ちていく家族の姿を、一定の距離を置きながら見つめる視点が痛々しいほどリアル。こんなにも実験的な映画を、田口トモロヲと>>続きを読む
黒澤明の第6作。彼唯一のラヴストーリー。とにかくダメな主人公と前向きすぎるヒロインの痴話喧嘩やんけ! というツッコミは置いておいて、アラン・レネが「これまで観た映画の中でもっとも美しいシーン」と称賛し>>続きを読む
ルーマニアが EU で最も貧困な国であることと、同国で胸を突き刺すような傑作が次々に生まれていることは、決して無関係なことではない。映画は社会を映しだす鏡であり、社会は人々の内面に潜在する意識の表われ>>続きを読む
ほんとうの強さは、殴られることよりも、殴ることの痛みを知ることで培われる。聖人君子のような人間がときに脆いのは、彼らが殴ることの痛みを知らないからだ。挿入歌にある「僕らは強くなる/すべてを糧に」という>>続きを読む
黒澤明の第7作。ついについに三船敏郎が登場! 圧倒的な存在感とゾクゾクするほどのカッコ良さはやはり群を抜いている。この野心溢れる作品を傑作たらしめているのは、貧困、暴力、社会に対する強い「怒り」だ。戦>>続きを読む
ドカドカ笑ったあとに、背筋がゾーと寒くなり、そのうち猛烈にいたたまれない気持ちになるブラック・コメディの傑作。カルト映画の神様ジョン・ウォーターズの作品というよりも、キャスリーン・ターナーの一世一代の>>続きを読む
平均2.1%の低視聴率ドラマが映画化されたというニュースは感動的ですらあった。作品が残してくれる余韻や感覚。それらを数値で測ることは到底できないし、何より大切なのは「伝えたい」という意志だからだ。誰も>>続きを読む
黒澤明の第8作。この作品のモチーフである梅毒をHIVに置き換えると今でも切実な問題として胸に迫ってくる。本作の魅力はなんと言っても、晩年は味のある婆さん役でお馴染みだった、若き日の千石規子の名演技に尽>>続きを読む
バイト感覚で行った693回の精子提供によって、ある日突然533人の子どもの父親であることが発覚! こんなに奇想天外な物語も、やたらと都合のいい展開も、超ハッピーな結末も、良質なコメディなら許される。ド>>続きを読む
黒澤明の第9作。のっけからグッと惹きつけられ、最後までハラハラ・ドキドキの連続。手に汗握るスリリングな展開に思わず時を忘れる、これぞ娯楽! といえる刑事ドラマ。コルト拳銃、闇市、復員兵、レビュー劇場の>>続きを読む
強制される状況にあっても人間は自由でいられるし、平和であるからといって誰もが自由であるとは限らない。大切なのは、魂に従って生きているか、ということだ。冷戦下の東ドイツ。ひとりの女性のある決断が、誇り高>>続きを読む
黒澤明の第10作。戦後わずか5年。民主化の進む日本で、自由を履き違えたマスコミによる言論の暴力を、いち早く危惧し、そのメッセージを自らの作品に込めた感覚の鋭さはさすが。後の傑作「生きる」にもつながる、>>続きを読む
タランティーノが、白人からも黒人からもタブー視されてきた奴隷制度をモチーフに、西部劇を撮ったというだけでゾクゾク。カメラワークも、台詞まわしも、そのすべてが美しく、エンターテインメントの高みに達してい>>続きを読む
恋は無敵。二人でいれば世界を敵に回してもへっちゃら。向かうところ敵なしの12歳の少年と少女の究極のラヴ・ストーリー。同じような閉塞感を持った二人が、胸の奥の秘密をそっと打ち明け、お互いの夢を語り合う様>>続きを読む
黒澤明の第11作。クロサワの名が初めて世界に知れ渡った記念碑的作品。絶対的な真実などないに等しく、すべてが曖昧模糊としたこの世界。人間のエゴを受け入れた上で、どう生きるべきかを問いかけた傑作。この映画>>続きを読む
小説もいいけど映画もまたいい。高良×吉高の最強コンビによる、沖田修一監督の待望の最新作。青春の愛おしさを、こんな風に可笑しく、切なく描けるのは、やっぱり彼しかいない。なんでもない日常が、ある日突然、輝>>続きを読む
黒澤明の第12作。敬愛するドストエフスキーの小説を映画にするのだという並々ならぬ覚悟がその断片を観るだけでひしひしと伝わってくる。この芸術超大作を企業の理屈で切り刻んだ松竹の罪はあまりにも大きい。4時>>続きを読む
人間にとっての演劇。その不思議な力に迫った画期的な試み。服役中の囚人たちの表情、その一つひとつが、演技とは魂の発露であるということを証明する。そして、何といっても驚くべきは、紀元前の古代ローマの時代か>>続きを読む
頑張っても、頑張っても、報われない。空回りがなんともいじらしい。そんな思春期のピュアな気持ちを思い出させてくれる。鬱屈としていて、どこかシニカル。だけど、ユーモアを忘れない。そして、何よりセンスがいい>>続きを読む
夢を追いかけるピュアな人間を食いものにする連中や、そんな人間の人生をいともかんたんに狂わせてしまう落とし穴が、世の中には掃いて捨てるほど存在している。とても恐ろしいのは本作がコメディを装っているという>>続きを読む
ぬいぐるみが主役なのにまさかのR15指定。酒と薬と女に溺れる、とにかくお下劣なエロ・テディが最高にキュート。箍のはずれたやりたい放題のアメリカン・コメディは無敵。良識人が眉をひそめる「健全な」笑いが炸>>続きを読む
東映創立60周年記念作品。主演・吉永小百合、撮影・木村大作、監督・阪本順治の重鎮に、これからの日本映画を担うに違いない6人の俳優たちが挑んだ贅沢な映画。それにしても、圧倒的な美しさで、「特別」に、画面>>続きを読む
左翼ゲリラと右翼民兵の内戦が50年にも亘って続いている国、コロンビア。その背後に乱れ飛んでいるのが麻薬資金というのも始末が悪い。貧困、裏切り、虐殺。これ以上ない絶望の中でも、恋は芽生え、人間は生きてい>>続きを読む
黒澤明の第13作。志村喬がブランコを漕ぎながら口ずさむ「ゴンドラの唄」の抒情性はもちろん、死を覚悟した彼の「わしは人を憎んでなんかいられない。わしにはそんな暇はない」という揺るぎのない台詞が強烈に印象>>続きを読む
一緒に幸せになろうでも、幸せにしてもらおうでもない。不幸になっても後悔しない。そんな風に思えるひとが最高の結婚相手なんじゃないか、という糸井重里の言葉をふと思い出す。理屈では説明できない、ときに理不尽>>続きを読む
ごく稀に映画を映画以上のものにしてしまう驚異の天才が現われる。ポール・トーマス・アンダーソンがスタンリー・キューブリックと比して語られるのは彼が真の天才だからだ。クリストファー・ノーラン、サム・メンデ>>続きを読む
黒澤明の第14作。ジョン・フォードの西部劇に憧れて作った渾身のサムライ映画がジョージ・ルーカスのSFを生んだ。世界で最も有名な日本映画は、何度観ても圧巻の出来栄え。それにしても「羅生門」から「白痴」「>>続きを読む
何かを失いながらかけがえのないものを得ていく。これからは、いかに美しく豊かに老いていくか、ということがほんとうに大切な時代なんだと思う。円熟の域に達する名優たちの滋味深い競演は見どころ十分。人生に遅す>>続きを読む
3000人以上が犠牲となった史上最悪の無差別テロの首謀者を、どのように突き止め、そして殺害したのかが赤裸々に描かれていく。ストーリー性をなるだけ排したその淡々としたタッチが「正しさ」とは何かを問いかけ>>続きを読む
カルト教団そのものが怖いのではない。都合の悪いことを隠蔽するために、監禁、脅迫、飢餓、暴力、強姦、薬物、あらゆる卑劣な手段を使って、信者のアイデンティティを破壊し、強制的に思想改造を行う組織のありよう>>続きを読む