黒澤明の第15作。大島渚が「鉄棒で頭を殴られたような衝撃を受けた」映画を、黒澤明が、しかも「七人の侍」の直後に撮ったというのが面白い。なるほどこれは超が付くほどの問題作。「水爆」を「原発」に置き換える>>続きを読む
自分の仕事に没頭しなきゃだめ。好きにならなきゃだめ。惚れなきゃだめ。超一流の人たちはいつも同じことを語る。この当たり前を、十何年、否、何十年と、変わらずに継続させることが大切なのだ。作中で明かされた、>>続きを読む
馴れ合いはクリエイティブを殺してしまう。かといって、衝突だけでモノを生みだすことは到底できない。大切なのは、お互いの主張を認め合い、尊重し合い、受け入れ、そこから共に前に歩むことだ。そうして初めて、A>>続きを読む
黒澤明の第16作。金に糸目をつけず完璧を追い求める黒澤明の桁外れのスケール感がいよいよ本領を発揮。美しさと恐ろしさは表裏一体。幽玄な世界を映像化した、娯楽性と芸術性を兼ね備える隠れた名作。名シーンは数>>続きを読む
地位や立場で人を蔑むことなくどんな意見にも耳を傾ける。自問自答を繰り返し、検証し、熟考して練り上げた政策は、極めて論理的で、それゆえぶれることもない。一旦決断したらどんな手を使ってでも実行する。見識と>>続きを読む
黒澤明の第17作。彼の作品を順を追って観ていくと、誰もが楽しめる超一級のエンターテインメントを撮る一方で、驚くほど実験的で革新的な作品を多く手がけていることがよく分かる。この滑稽でいて、ある意味、残酷>>続きを読む
貴重映像の連続。神格化されていない、ありのままの人間ボブ・マーリー。良いところも、悪いところも、まるごと受け止めると、彼の魂そのものが音楽を通じてびんびん伝わってくる。なぜレゲエが世界的に愛されるグロ>>続きを読む
偏見や思い込みは真実をいとも簡単に歪めてしまう。私たちが恐れるべきは、多数派の意見に盲目的に同調すること、善か悪かを一方的に決めてかかること。そして、人間にとって最も卑劣な行為は、流されるまま他人の真>>続きを読む
黒澤明の第18作。C-3POとR2-D2のモデルとなった太平と又七。ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」のベースにした映画としてあまりに有名だが、北野武の「座頭市」のラストシーンもまた、この作品へ>>続きを読む
愛とは何か―。どストレートな問いかけに、巨匠ミヒャエル・ハネケが、すべてをさらけだし、真正面から取り組んだ野心作。愛は耐え難いほど残酷で、愛はすべてを包み込む。これほどまでに愛を緻密かつ完璧に描いた作>>続きを読む
黒澤明の第19作。誰もが知っている傑作はもちろんスゴイけれど、その陰に隠れた作品に、余韻がずっと頭から離れない名作が多い。自らのプロダクションの立ち上げに、社会派の現代劇を選んだところに彼の「反骨」が>>続きを読む
どうしようもない男たちによるサイテーにカッコいいクライム・サスペンス。ブラピはB級テイストがほんとによく似合う。そのすべてが「アメリカは国じゃない。ビジネスだ」という台詞への伏線といえる97分。夢や理>>続きを読む
俳優のフィルモグラフィーには天賦の才が表われる。スコセッシ、スピルバーグ、サム・メンデス、クリストファー・ノーラン、イーストウッド、タランティーノ。「タイタニック」の成功以降、彼がタッグを組んだ監督を>>続きを読む
黒澤明の第20作。男の中の男。ハリウッドにハンフリー・ボガートがいたように、日本には三船敏郎がいた。彼が演じた主人公・三十郎は、余計なことは一切語らず、これぞと決めた仕事を独り粛粛とこなしていく。それ>>続きを読む
他人の過ちを許す。そんな寛容さはなくても、見逃すことはできる。誰一人傷つけない嘘さえ許されない社会では、生きていけない人間もたくさんいるのだ。社会人の半数が失業者だと言われるグラスゴーの労働者階級に向>>続きを読む
ほぼ台本のない即興演出。大胆不敵というかなんというか、こんな風に映画を撮るには、よっぽど肝が据わってないとできない。それを旬の女優をキャスティングし、商業映画でやるところもスゴイ。他愛もない会話に何気>>続きを読む
黒澤明の第21作。無駄なカットを極限まで省き、ユーモアも、アクションも、ドラマも、そのすべてを詰め込んだ単純明快な痛快娯楽作品。この96分がエンターテイメントの一つの高みに達していることは多くの人たち>>続きを読む
世界最大の紛争国。その国の子供たちは、戦闘の最前線で「弾除け」や「地雷除け」として使われ、まるで虫けらのように死んでいる。その国の女性たちは、兵士たちの性の捌け口となり、10歳にも満たない少女たちが餌>>続きを読む
黒澤明の第22作。のちに4億円かけて建てた城を一瞬で燃やしてしまう黒澤監督が、国鉄から借りた日本最速の列車を実際の東海道本線に走らせて撮った一発撮り2000万の緊張感といったら! 金をかけるということ>>続きを読む
役所広司、小日向文世、佐藤浩市、鈴木京香、浅野忠信といったお馴染みのメンバーに加え、大泉洋、中谷美紀、伊勢谷友介、さらには剛力彩芽までキャスティング。登場人物おのおのにドラマがあり、それぞれの人生がく>>続きを読む
編集者にとって最も難しく最も偉大なことは新しい「価値」を創造するということだ。世界最高のモード誌を手がけながら、ジーンズも、美容整形も、サーファーも、スケートボードも、彼女が新しいものをことごとく肯定>>続きを読む
つながることを無意識に強要されるSNS世代の青春の過酷。何百人もの「ともだち」と交わす日々の膨大なやりとりから、彼らはどれだけ自由でいられるのだろう。ここではないどこか遠くへ。自分探しの旅に逃避できる>>続きを読む
黒澤明の第23作。映画産業が斜陽化する時代、抵当に入っていた自宅を売ってまで、映画の可能性をとことん追求した黒澤ヒューマニズムの最高傑作。人間のいやらしさ、業の深さを描きながら、それでもなお、その存在>>続きを読む
殴り合うことや、求め合うことで得られる「生」の実感。生きることは、カッコ悪く、むきだしで、痛みも伴うけれど、だからこそ、かけがえがなく、愛おしいものになる。その過激な描写から15Rの指定を受けているけ>>続きを読む
争いや諍いを最後まで良しとしなかったカミュ。「私は正義を信念としているが、正義よりも母を先に守るだろう」という彼の言葉は、思想に縛られない思想もある、ということを教えてくれる。そんな彼の良心を育んだ、>>続きを読む
黒澤明の第24作。公開から1年後に自殺未遂を起こす彼の鬱屈とした感情がどろどろと渦巻いている。全編にわたり感じるのは、自分を取り繕い、口ばっかりで、責任から逃れる人間への憤りと諦め。60歳にしてこのや>>続きを読む
銃を持ったビキニの少女たち。パッと浮かんだイメージで映画を撮ってしまうのがハーモニー・コリンだ。ウサギの着ぐるみを被った少年の「ガンモ」も、マイケルとモンローのソックリさんがボートから手を振る「ミスタ>>続きを読む
私たちの暮らしは、数え切れないほどの、誰にも気づかれない、地味で、気の遠くなるような仕事に支えられている。名もなき多くの人たちの胸のうちで密かに燃え滾っている情熱と、働くことの尊さを、丹念に描いた傑作>>続きを読む
黒澤明の第25作。森で生きる人間は、自分が食べる以上の獲物を捕らえたり、自然への畏怖を忘れたりしない。どんな苦難や苦境に陥ろうとも、何も恨まず、何も求めない。自らの無力を知り、すべてを受け入れることで>>続きを読む
人生は喜劇だと思えばほんの少し楽になる。「将来なんて考えてたら今をちゃんと生きれねえぞ」なんてまさかの名台詞も飛びだす、くだらなさ100%のコメディ映画。堤真一の役者魂と、橋本愛の美少女っぷりが炸裂。>>続きを読む
何十年もの間、演技と真摯に格闘してきたものだけに出せる圧倒的な存在感と説得力。阿部サダヲでも、菅野美穂でもなく、これは山﨑努を見るべき映画だ。木村秋則さんが達した「ひとつのものに狂えば、いつか答えはみ>>続きを読む
黒澤明の第26作。最強を誇った武田の騎馬隊が織田・徳川の鉄砲隊に敗れ去った長篠の戦い。次々に倒れ死ぬイメージを具現化するため、100頭以上の馬を一堂に集め、麻酔を打つ10数名の獣医を同時に待機させる。>>続きを読む
音楽という芸術に身も心も捧げた四人による弦楽四重奏。心のズレをお互いに修正して奏でるハーモニーは人生そのもの。悲しみ、苦しみ、妬み、恐れ、すべてを受け入れて前に踏みだすラストが素晴らしかった。クリスト>>続きを読む
目立ちたがりのお調子者に、桁外れなお金持ちの息子、美人で優しい先生に、あまりに理不尽なダメ教師。学校という場所が万国共通であることがなんとも微笑ましい。が、一転、それが社会の縮図であることも突きつけら>>続きを読む
障害者を描くには勇気と覚悟がいる。どんな風に描いても、当事者ではない以上、多くの批判を受けざるを得ないからだ。この映画の根底にあるのは、社会の不条理に対する、強くやり場のない憤りだと感じた。表現をする>>続きを読む
黒澤明の第27作。シェイクスピアの「リア王」を映画化し、「人類への遺言」にしたいという野心に漲る大作は、総製作費26億、製作日数273日、撮影フィルム46時間、出演者延べ1万2000人、出演馬延べ1万>>続きを読む