love1109さんの映画レビュー・感想・評価 - 25ページ目

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父の初七日(2009年製作の映画)

3.9

葬式はいつも騒がしい。慌ただしくバタバタしているうちに過ぎていく。その賑やかさの中で、身内の死をしみじみ実感するひまはないが、かといって、悲しくないわけでもない。悲しみながら笑うこと。ある意味で、死を>>続きを読む

ドライヴ(2011年製作の映画)

3.8

カンヌが認めた新しい才能! ほんとうに「贅肉を削ぎ落としたような」ゾクゾクするほど美しいクライム・アクション。無駄口を叩かず、群れず、媚びず、愛する者を守るために命をかける。名前も家族もない孤高のハー>>続きを読む

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜(2011年製作の映画)

3.8

自分の子供を預けて、他人の子供を育てる。白人家庭で家事と育児を担った黒人メイドたちの苦悩が描かれる。映画の時代設定は1960年代だが、これは過去の話ではない。現在もビバリーヒルズやマンハッタンには最低>>続きを読む

アニマル・キングダム(2010年製作の映画)

3.9

法律によって守られるという幻想。裏切りが裏切りを、暴力が暴力を生む、負の連鎖。どこにも行き場のない人間の弱さと脆さが容赦なく抉られる。その息が詰まるような緊張感たるや! ジャッキー・ウィーヴァーの存在>>続きを読む

おとなのけんか(2011年製作の映画)

3.8

自分の正義が他人の正義であるとは限らない。物事を平和的に解決するためには、お互いを尊重することが欠かせないが、多くの人間は、尊重を装いながら、自らの正義に固執してしまう。わずか79分のユーモラスかつシ>>続きを読む

夏をゆく人々(2014年製作の映画)

3.7

詩的という言葉がぴったりな美しい映像によって綴られる一人の少女のひと夏の体験。人里離れたトスカーナ地方の豊かな自然、昔ながらの方法で養蜂を営む一家の暮らし、夏の日の陽光に照らされた湖の水面のきらめき、>>続きを読む

千年の愉楽(2011年製作の映画)

3.8

若松孝二監督。大学の授業でお会いしたときに「このひとは嘘をつかない大人だ」と思った。媚びず、日和らず、いつも弱者の側に立ち、撮りたいものを撮る。そんな気骨のある映画人がもういない。その優しさと純粋さに>>続きを読む

ロボジー(2011年製作の映画)

3.8

自分のためにつく嘘は寂しいが、人のためにつく嘘は温かい。真実をことさら追求し、何でも糾弾することが、正しいことではない。知らなくてもいいこと、露わにしなくてもいいこともたくさんあるのだ。矢口史晴監督の>>続きを読む

少年と自転車(2011年製作の映画)

4.5

親に必要とされない。捨てられる。ということを想像したことはあるか。そう迫ってくる。いい映画は説明をしない。説明をしないかわりに想像力をとことん掻き立てる。悲しみ。絶望。かかわり。信頼。裏切り。赦し。希>>続きを読む

ハードロマンチッカー(2011年製作の映画)

3.8

痛みの残らない暴力映画を信じてはならない。暴力には切なさや悲しみがつきまとうからだ。人間が人間を殴れば、血が流れ、限度が過ぎれば、死ぬ。そんなリアリティーがどんどん失われている。そもそも暴力とは何か。>>続きを読む

ルート・アイリッシュ(2010年製作の映画)

4.0

現代の映画監督の中で最も敬愛しているケン・ローチ。彼は常に「伝えるべきこと」を映画にし、現実から目を背けてはならない、と警告する。イラク・アフガンからの帰還兵の自殺が現地での戦死者の数を上回りかねない>>続きを読む

ファミリー・ツリー(2011年製作の映画)

4.0

こんな映画を観ると、人間って、単純なようで複雑で、複雑なようで単純だなぁとしみじみ思う。「アバウト・シュミット」に「サイドウェイ」、長編映画をわずかしか撮っていないものの、アレクサンダー・ペインは、紛>>続きを読む

孤島の王(2010年製作の映画)

3.5

抑圧された閉鎖的な世界では善が悪になり悪が善となる。これはそんな状況の中で人間はどこまで自由でいられるかを問うた事実に基づく衝撃作だ。魂に従って生きているか。何人たりとも侵すことのできない自分だけの領>>続きを読む

RIVER(2011年製作の映画)

3.6

メジャーとかマイナーとか関係のないところで映画を撮り続けている廣木隆一監督。突然の喪失という耐え難い現実。救いとなるのはそこから目を背けない強さだ。ただひたすら秋葉原の街を歩き続ける蓮佛美沙子さんの凛>>続きを読む

WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々(2011年製作の映画)

3.6

悪人ではないが弱い。弱いから過ちを犯す。過ちはやがてバレる。そんな誰にでも起きそうな些細な出来事。生死をわけるような大事件も、地球が滅ぶような大惨事も起こらない。加えて、巨匠が撮ったわけでも、スターが>>続きを読む

ポテチ(2012年製作の映画)

3.8

ちょっとひねりのきいた軽妙な語り口に騙されてはならない。伊坂幸太郎という小説家は熱い。というより、熱血だ。中村義洋監督はその独特の世界観をいつも見事に映画化する。運命から逃げない人間だけに奇跡を起こす>>続きを読む

ピナ・バウシュ 夢の教室(2010年製作の映画)

3.4

羞恥心を捨て去って、自らを解き放つこと。世紀の天才舞踏家ピナ・バウシュが徹底的にこだわるのは、「からだ」で表現することの根幹に据えるべきそんな姿勢だ。偉大なる芸術家の視点はいつも、人間の限界に挑むこと>>続きを読む

朱花(はねづ)の月(2011年製作の映画)

4.0

ゴダールはかつて「もっぱら、私が映画を自分自身のために必要としている」と語った。純文学ならぬ純映画というものが、もしもあるなら、河瀬監督ほど純粋に、かつ、全身全霊をかけて、映画と向き合っている監督はい>>続きを読む

愛と誠(2012年製作の映画)

3.5

観るものを熱狂させる三池ワールド。バイオレンスはもちろん、コメディ、ホラー、ラヴストーリーまで、アイドル主演も、低予算も、オールOK。監督の「オファーは来たもの順に受ける」というその姿勢には、プロして>>続きを読む

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

3.6

撮り続けることのすごさ。ほぼ毎年1本のペースで撮っているということは、それだけオファーが絶えないということだ。ハリウッドに背を向けながら、アカデミー賞に最多ノミネートという事実も、放っておけない彼の天>>続きを読む

アリス・クリードの失踪(2009年製作の映画)

3.9

冒頭5分。台詞ひとつなく進むテンポのいい物語にすぐに心を奪われる。わずか3人の登場人物が繰り広げる、密室空間での二転三転の愛憎劇。ほんの微かな疑心が、やがて嫉妬や裏切りを生み、関係そのものを崩壊させる>>続きを読む

ビフォア・ザ・レイン(1994年製作の映画)

3.5

世界には、とても複雑で、誰もが完全には理解していない様々な問題が存在する。今こうしている瞬間にも、私たちの知らない世界の片隅で、確実に起こっている悲劇。その負の連鎖が克明に描かれた傑作。公開から18年>>続きを読む

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)

3.7

頭に浮かぶのは「いつまでも存続するのは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である」という新約聖書の一節。ミュージカルならではの高揚感が心の奥底から湧き起こる。必見はアン>>続きを読む

Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(2011年製作の映画)

3.6

そこには国境がない。宗教も、イデオロギーも、価値観も、モラルでさえもない。ピナ・バウシュの舞台では、人間を抑制する一切が排除され、すべてが解き放たれる。本物の、本当の、自由がある。生前「私に興味がある>>続きを読む

ぼくたちのムッシュ・ラザール(2011年製作の映画)

3.5

例えば、身近なひとの自死について。どうすればその悲しみを乗り越えられるかということを学校では教えてくれない。教師も、他の大人も、答えようがないからだ。もちろん、そんな方法はないし、正解だってない。ただ>>続きを読む

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人(2008年製作の映画)

3.7

二人の「自分の好きなことを他人に押しつけてはいけない」という姿勢がいい。価値は何人も侵すことのできないその人だけのものだからだ。価値を突き詰めていくと「好き」か「嫌い」になる。自分の好きなものに囲まれ>>続きを読む

きっと ここが帰る場所(2011年製作の映画)

3.9

哀しくて、おかしくて、美しい。魂との邂逅を描くロードムービーの傑作がまたひとつ。「答えを見つけることが重要なのではなくて、問題について問い続けることこそが大切なのだ」とソレンティーノ監督は言う。誰もが>>続きを読む

絞死刑(1968年製作の映画)

4.0

予告編で語られる大島監督自身の「笑いながら魂を締めつけられるような痛みを感じるはずだ」という予言。今まで観た映画の中で最も衝撃的だったのがこの「絞死刑」だ。底しれぬ怒りと悲しみを原動力として、映画を武>>続きを読む

ニーチェの馬(2011年製作の映画)

3.5

生ける伝説、ハンガリーの鬼才タル・ベーラによる引退作品。「人生は労働であり、それは、生き残るため、自分を守るための労働である」という真実を、映画表現の極限ともいえるミニマムなかたちでフィルムに焼きつけ>>続きを読む

セカンド・カミング(2012年製作の映画)

3.6

深く記憶に残る役者。あるいは、存在感のある役者、味のある役者と言ってもいい。そんな役者は、良い役柄、良い作品を、自ら引き寄せる。弱いけど憎めない哀愁漂うダメ男っぷりが見事。イギリスが生んだ名優ロバート>>続きを読む

るろうに剣心(2012年製作の映画)

3.5

佐藤健はとても良い俳優だ。岡田以蔵を演じた「龍馬伝」の演技は鬼気迫るものだったし、大友監督がもう一度、彼で撮りたいと思った気持ちもよくわかる。64ヶ国で公開。日本が誇る Chanbara で世界を熱狂>>続きを読む

無言歌(2010年製作の映画)

3.8

厳しい言論統制下の中国で、危険を顧みず、また、規制を掻い潜って「伝えるべきこと」を映画にしているワン・ビン監督に心からの敬意を表わしたい。権力という暴力がいかに人間を貶めるのか。人間を悍ましくさせるの>>続きを読む

Virginia/ヴァージニア(2011年製作の映画)

3.6

抑圧された願望が反映されるという夢。フランシス・F・コッポラが実際に見た夢をヒントに制作したという本作。そこには美しく幻想的な世界、荒唐無稽でありながら耽美的な世界が広がっている。ホラーではあるけれど>>続きを読む

小さな池 1950年・ノグンリ虐殺事件(2010年製作の映画)

3.7

戦争における最大の悲劇は、主義主張を持たない、罪のない人々の穏やかな暮らしを、一瞬にして奪ってしまうということだ。どんなに大義名分を並べたところで、人が人を殺める戦争という愚かな行為に正義はない。戦争>>続きを読む

ミラル(2010年製作の映画)

3.6

1948年の建国以来、争いが日常化しているイスラエルでは、普通に生まれ、育ち、恋をして、結婚し、子供を産むことが難しい。戦争や紛争について描くとき、国家や民族や組織といった集団ではなく、この作品のよう>>続きを読む

ヘンリー・アンド・ザ・ファミリー(2011年製作の映画)

4.8

映画ファンにとって最高のときは「これは僕だけがわかる、僕だけに向けられた、僕だけの映画なんだ」と錯覚する瞬間にやってくる。有名だろうが、無名だろうが、誰が撮ろうが、誰が出ていようが、そんなの関係ない。>>続きを読む