archさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ソウルの春(2023年製作の映画)

4.5

文句のつけどころがない。
これまで一度も映画化されることのなかった12.12軍事反乱を題材に、未だに詳細の判明していない空白の9時間を、フィクションを交えてエンタメとして見事に昇華している。

エンタ
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エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)

3.8

上下方向のアクション、つまり《落ちること》と《這い上がる》の正反対の運動の拮抗状態についてのアクションは、沢山の映画で扱われてきたものであるし、それを指摘する蓮見フォロワーの2142番煎じみたいな輩も>>続きを読む

映画検閲(2021年製作の映画)

4.5

大傑作。
サッチャー政権下の80年代イギリス、ファッキン新自由主義に基づく経済政策の影響によって長期的な不況と失業率増加に覆われた時代。
そして当然増加する犯罪率は、保守派プロパガンダによって「暴力的
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THE DEPTHS(2010年製作の映画)

3.9

「カメラは脚本段階の「物語」や「ドラマ」といった《幻想》を削ぎ落としてしまう、そんな道具で作ろうとする映画はそもそも破綻したメディアである」と、黒沢清が『21世紀の映画を語る』で述べ、濱口竜介が『他な>>続きを読む

最後の晩餐(1973年製作の映画)

4.2

マルコ・フェレーリのヤバさは噂には聴いていたが、本当に奇怪で異常なヤバい作品で素晴らしかった。そして何より至極真っ当なロジックの元にエピキュリアン達は死んでいくことに驚いてしまう。

自殺願望を持つ快
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ナショナル・シアター・ライブ 2024 「ナイ 〜国民保健サービスの父〜」(2024年製作の映画)

4.5

偉大な功績を残した者の走馬灯ってこんな感じかなら腑に落ちながら見えていた。

イギリスで国民保険サービス(NHS)を設立した偉大な功績者だからこそ、《舞台化》されるわけだが、私が知っている他舞台以上に
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カワツヒロアキ君、はい!(2013年製作の映画)

3.5

離婚する両親、その原因は父親が作った300万の借金。
映画監督を目指す「カワツヒロアキ君」は、カメラを持ち実家に帰ることにした。

シンプルな帰省映画なわけだけど、男系親子のぶつかり合いが衝撃的。監督
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ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)

4.3

ナミビアの砂漠と言えば『マッドマックス怒りのデスロード』のロケ地だという偏った知識と、予告編で「映画なんか観て何になんだよ」という台詞が記憶に残っていたせいで、現代社会で色々鬱屈を抱えた女性がたまたま>>続きを読む

アンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年製作の映画)

4.0

・地球外からの捕食者が、アンドロセントリズムな社会の構造を利用して、油断しきった男性を捕食していくスリラー。
単なる色仕掛けを利用したSFスリラーと違うのは、捕食空間の抽象的な造形と"捕食"シーンで必
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うんこと死体の復権(2024年製作の映画)

4.9

「人間が生み出すもので最も価値あるものはうんこではないか」

野糞をする為に山をひとつ買って、「プープランド」と名付けたオジサンとかが出てくるので、キャッチーな映画にも思えるのだけど、出てくる大人皆が
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ラストホール(2023年製作の映画)

2.1

実際に父親を亡くした監督が経験に基づき「食べたいものリスト」を消化していく旅。食べて食べて食べて、それが二人の旅の目的で喪失の受容の形でというロードムービー。

正直な話、全く好きな映画じゃなかった。
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灼熱のドッジボール(1992年製作の映画)

4.6

クラスのマドンナ(?)の転校最後の日、飛行機の時間まで後40分、最後のドッジボールが始まる。

ワイドで撮影された場面とアップ、人物のインアウトだけで面白い。(ヒッチコックの映画術の「2つのEmoti
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リリー・マルレーン 4K デジタルリマスター版(1980年製作の映画)

3.4

ナチス党が政権をとった33年から戦争終了までの期間を「リリーマルレーン」の曲と共に駆け抜けるヴェリーのメロドラマ。

輪郭をぼやける程のライティングによって描かれる戦時ドイツの耽美な世界観の中で、実際
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自由の暴力 デジタルリマスター版(1974年製作の映画)

4.5

最初のクレーンショットから示唆するように、この物語はひたすらに落ちていく破滅に魅入られた作品だ。最後に彼がたどり着く場所は必然なのだ。

不幸の星の元に生まれたフォックスが奇跡的に手に入れ50万マルク
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BAGHEAD/バッグヘッド(2008年製作の映画)

4.3

終始しょうもない人間達が、何となく展開の分かる物語を進めていく。
何か特筆するほど凄い場面がある訳では無いけれど、一貫性のある空気感とウィットな演技と情けなさで笑わせてくる瞬間瞬間によってなんだか最後
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ナイツ&ウィークエンズ(2008年製作の映画)

3.1

二人の遠距離恋愛を近視的かつ自由なフレーミングなカメラワークと、その"瞬間"を丹念に描写する構成によって上手いこと《余白》を生み出していた。
二人の関係性を変えてしまう逡巡や決定的な瞬間が、その《余白
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マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選(2005年製作の映画)

3.1

元のタイトルの"分断された国家"の方が本作のテーマを表していて良い。
邦題を観ているといつものマイケル・ムーアの露悪的な逆が光る作品のようだが、その実本作ではマイケル・ムーアのナレーションで茶化す場面
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箱男(2024年製作の映画)

4.3

箱のもたらす孤立と匿名性なんてものは副次的な結果でしかなく、本質にあるのは現実と妄想を等価にして他者性の抹消してくれる《境界線》。あの《境界線》の中では書き手として、"世界の創造主"となれるのだ。
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GAMERA1999(1999年製作の映画)

4.2

ガメラ3の製作の裏側を撮影したメイキングという体裁だが、実際メイキングに必要な販促的な役割や記録としての役割がかなり希薄なドキュメンタリーになっている。
特に特徴的なのは、時系列を提示していながらも、
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モンキーマン(2024年製作の映画)

4.3

超大好物!
シンプルな三幕構成と『死亡遊戯』形式的な階級制度を可視化した舞台設定、まるでワンカットかと思わせるほどに精錬されたアクションモンタージュ、それらが全てが本作の《アクション》に徹底的に貢献し
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キルマゲドン(2023年製作の映画)

5.0

去年観た短編の中で最も素晴らしい作品だった。

スナッフフィルム映像と成長記録映像が連続性を帯びていることの狂気性や歌謡曲や低画質映像から感じる強い作家性に心奪われた。

カナザワ映画祭でまた見れるの
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ラストマイル(2024年製作の映画)

4.3

野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』『MIU404』を鑑賞してからの鑑賞。

《シェアードユニバース》という設定が昨今のアメコミ映画やそれに準じて製作された映画シリーズによって《集結》することに意義を持
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侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)

4.2

本当に素晴らしい。
自主映画とは思えないウェルメイドなコメディ映画で、劇場がこんなに笑いに包まれていることも珍しく、多幸感に包まれる映画体験だった。

自分が特に響いたのは、とにかく"優しい人たち"の
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パパママ卒業(2024年製作の映画)

4.4

大抵セルフドキュメンタリーにはナルシズムが伴うわけで、『アリラン』みたいに自意識との闘いを具体的に見せることで消化したりなど、それをどう払拭するのかが1つの課題になっていると思う。
その中で本作は最適
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フォールガイ(2024年製作の映画)

4.5

『デッドプール&ウルヴァリン』と比べるのはお門違いなのかもしれないが、じゃあどっちが本気で蔑ろにされてきた/見えざる所で"闘い続けてきた"人々をフックアップし、活躍を賞賛する映画になっているかと言った>>続きを読む

ブルース・リー/死亡遊戯(1978年製作の映画)

3.0

ブルース・リー急逝によって未完成の映画を『燃えよドラゴン』の監督が代役や過去のフッテージを利用して形にした作品。
歪でツギハギだけどギリギリ成立…してないなってぐらいの作品にはなってるのだが、逆説的に
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DOGTOWN & Z-BOYS(2001年製作の映画)

3.6

スケートボードの歴史は大体70年代から語られるイメージがあるのだが、本作は発祥の地"ドッグタウン"で、その前史たるサーフィンカルチャーのzephyrから始めて、63-65年の一時的なブーム、z-boy>>続きを読む

都会のリュウ(2023年製作の映画)

1.9

正直何か書く気にもならない『復讐のワサビ』以来の地獄体験(映画のせいだけじゃないけれど)。

いつか回り回って自分にぶっ刺さることを予感しつつ一応戒めの為にも箇条書きしておく。


・家出るまでのシー
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何食わぬ顔(2003年製作の映画)

3.8

『PASSION』や『ハッピアワー』にて完成を迎える濱口作品イズムの原点。
最初から一貫した作家性を持っている、と言うよりもこの学生が素人丸出しで製作したが故の、独特な空気を如何に自覚的に醸成できるの
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Walden(2022年製作の映画)

1.1

これを映画館を流せること事態が、今が「濱口竜介の時代」だということの証左。
この映画はいわば濱口竜介の爪の垢。
ありがたがって煎じて飲めよ。俺は飲まないけど。


思想家ソローの著作からタイトルと内容
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ドコニモイケナイ(2011年製作の映画)

5.0

夢を追って上京し、そして夢破れて故郷に帰る。
そんな典型の話ではあるのだけど、あまりに生々しい「上手くいかない人生」の様子に言葉がない。

本作は「才能を過信した女性が渋谷という街に翻弄され挫折する」
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蟻の兵隊(2005年製作の映画)

4.5

45年のポツダム宣言後、戦い続けることを命令された兵隊が居た。
日本は彼らが自主的に戦い続けたと現地除隊と判定し、戦後補償をしなかった。


日本という国の加害者的側面を知るという意味でも、価値がある
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ラルジャン(1983年製作の映画)

4.8

ロベール・ブレッソンとは正直相性がいいとは言えないのだが、本作は問答無用で傑作。心をぶち抜かれた。

富裕層の遊びで使われた偽札が、貧困層の男を不幸に陥れる不条理劇。
省略の美学を追求してきたブレッソ
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ツイスターズ(2024年製作の映画)

3.2

地震大国日本の災害に対する心構えでも、この《怪物来たり》といった恐ろしさは耐え難い。世の中には本当にこんな"モンスター"を追いかける人々がいるのかと戦々恐々としてしまうが、それ以上に彼らを掻き立てる《>>続きを読む