次男・コンラッドの涙を挟む一連のシーンからラストまでの温かさが長く心に残る。あと、難しい年頃の息子に対する父親の(墓穴も掘りつつ)誠実な態度が良かった。とても素敵な「アイムソーリー」だったと思う。
野生の動物が互いの匂いを嗅ぎ、本能のままに寄り添うのに比べて、遠慮したり、戸惑ったり、人目を気にしたりしなければ成り立たない人間関係のなんと回りくどいことか。
空気を読まず思ったまま話し、言われた事>>続きを読む
タイトルが「ハッピーエンド」なだけで観たくさせるんだからハネケはずるい。あの夫婦の物語が今も胸の奥に深く残っているせいで、後半に語られたある「告白」には身震いさせられた。そしてラストのイザベル・ユペー>>続きを読む
こってりした色味やライティング、良いダシが出てる顔たち、決まりすぎてる構図に不器用なお芝居。カウリスマキならではの劇画タッチの紙芝居みたいなアンバランスさがおかしくてやさしい人情話でした。
肝の座った人たちのど根性な底力に、張り手で善悪を叩き込まれてきた(オレンジジュース…!)。あんな話でそこそこ笑わせるとか一体どうなってるんだ。すごいな。最高だ。
第一印象が「ジャームッシュ映画顔」だったアダム・ドライバーが、ついに「パターソン」で降臨。
レイトショーが終わって深夜のスーパーマーケットに駆け込むと、クリスマスもまだ半月先なのに、お爺さんがひとり>>続きを読む
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アンドロイドも「夢なら覚めないで」と願うだろうか。
大切な思い出だけじゃなく、愛する者や自分のアイデンティティ、「肉親」がいるかもしれないという仄かな希望までもが虚像だったと知ったら、どれだけの喪失>>続きを読む
品のない連中からは、臭い、汚いと蔑まれ、教師からさえ「あなたたちの脳では高等な教育は理解できない」と貶められ、それでも(だからこそ)「そちら側」の世界に憧れる少女。容赦のない差別と、慎ましくも美しいサ>>続きを読む
アネット・ベニングが語った全てのセリフが完璧だった。まるで奇跡みたいな脚本だ。ずーっと忘れたくない、こんな映画と出会えて本当に幸せだ。
引っ越した先で起きたある事件をめぐる話。
ファルハディ作品らしく今回も強烈な結末が待っていて、足元が崩れ落ちて立っていられないような感覚に襲われる。思い返せば冒頭でも、住んでいる建物が土台から>>続きを読む
丹念に積み上げた映画の景色を、最後の最後でひょいとひっくり返す余裕に撃ち抜かれました。地に足のついた静かでやさしくてだけど唐突なこのラストシーンの美しさには、心の準備ができてなさすぎて声が出そうだった>>続きを読む
しつこく笑わせにきたり、押し付けがましくハートをウォーミングさせようとしたりだったら嫌だなあと思いながらおそるおそる観た。結果、満足。変人の父親がやらかすあれこれよりも、それに腹を立てながらもそれなり>>続きを読む
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観ているときは中盤で少し飽きたのに、今になって好きなところばかり次々と思い出す。
あれだけ周到に準備したお兄さんが彼に託したのだから、甥っ子の面倒だってただの厄介ごとなんかじゃない。心を壊して人生を棄>>続きを読む
「この人にこれを言わせるため」の映画っていうのがあって、この作品では、あのケイト・ブランシェットが切れ味するどい見せ場を作ってくれる。語る内容も研ぎ澄まされていて胸のすく思いだ。だけど彼女の本領は、そ>>続きを読む
絶体絶命でもなさそうなんだけど、ウッカリするとヤバいことになっちゃうっていう、こんなユルめの危機がここまでゾワゾワさせるとは。その手があったかっていうちょっとした発明が、映画を面白くするんだな。
あのくせ者監督が、オチがすべてのこの設定に挑んだとなれば、期待して観るしかないわけですが、いかにもワケありムードたっぷりに大風呂敷広げといてそうまとめちゃう!?みたいな、ある意味スカッとするエンディン>>続きを読む
ぼくがミシェル・ウィリアムズを好きなのは、この映画のせいです。
平凡なぼくらの毎日に、映画みたいな出来事なんてなかなか起こるもんじゃない。だけどこれを観てしまうと、どんな些細な出来事でもちゃんと「物語れる」もんなんだなあとじわじわ可笑しくなる。居心地が悪すぎて逃げ>>続きを読む
余分なものを削ぎ落とせば削ぎ落とすほど、物事の本質は正しく浮かび上がる。それはそうなんだけど、ここまで徹底して禁欲的な演出で、どうして観る者の心をスクリーンに引きずり込むことができるんだろう。素晴らし>>続きを読む
1番が他にあるのが申し訳ないのだけれど、ラストシーンのマイベストの2位でよければぜひ入ってほしいと思う忘れられない名作。ヤレた大人たちの微糖なおとぎ話。
まさに今にも割れそうな氷の上を這っていく人を何もできないまま見守る気持ち。行けば行くほど氷は薄く、底は深くなるのに。
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少しずつ明らかになる彼女の人生の寂しさが生々しいので気落ちしてしまう。ただ、彼女の写真の輝きはすばらしい。撮ることがただただ喜びだったんだろうな。