随分と控えめな内容だったというのが第一印象である。井浦新の滑舌のいい落ち着いたナレーションが教育現場の危機を淡々と伝える。
第二次大戦中に日本軍が行なったことをきちんと教えることは、戦争を反省す>>続きを読む
映画「シン・ゴジラ」を鑑賞したときのような感動を期待したが、何故かしら、何も感じなかった。樋口真嗣監督と庵野秀明さんのコンビは同じなのに、本作品には「シン・ゴジラ」にあった重厚感がない。ずっしりした>>続きを読む
何のエッセイか忘れたが、大江健三郎が、数年に一度はドストエフスキーを読み耽ることがあって、それは幸福な時間だという意味のことを書いていた記憶がある。ドストエフスキーを読んだことがある人ならご存知だと>>続きを読む
カブールで暮らす妊娠した3人の女性のそれぞれの生き方を描く。それにしても、アフガニスタンの男性権威主義と女性差別は酷いものである。
ハヴァが暮らすのは、妊娠中の妻の身体を心配するよりも世間体を優>>続きを読む
主人公はチェルノブイリ原子力発電所のある地域を担当する消防士アレクセイ(愛称アリョーシャ)である。チェルノブイリ原発は、ベラルーシとの国境近く、ドニエプル川の支流であるリカ・プリピャチのそばに作られ>>続きを読む
ベネディクト・カンバーバッチは繊細な演技のできる名優である。アカデミー賞にノミネートされた「パワー・オブ・ザ・ドッグ」では高い演技力を発揮していたが、あまり目立たなかった映画「クーリエ:最高機密の運>>続きを読む
阿部サダヲを見ると大島渚監督の映画「愛のコリーダ」を思い出し、どうしてこんな芸名を付けたのだろうと訝る。しかしすぐに忘れてしまい、次に阿部サダヲを見ると、また同じことを思うのである。因果な名前だが、>>続きを読む
川平慈英ではないが、絶対に負けられない戦いがある。負けてもどうということのない川平慈英の戦いと違って、国家主義権力との戦いは、負けたら平和を失い、自由を失い、最後は命を失う。
古今東西、女性は常に>>続きを読む
印象は壮大なゲゲゲの鬼太郎である。しかしゲゲゲの鬼太郎のような分かりやすさがない。アヤカシも女郎蜘蛛もどこから来て何をしようとしているのか、何もわからない。そもそも説明しようとする意図が感じられない>>続きを読む
テレビドラマの方はときどき見ていた。主人公は窪田正孝の演じる放射線技師としてのスキルが高い五十嵐唯織だが、必ずしも毎回活躍する訳ではなく、一話ごとに技師や医師のそれぞれにスポットが当てられる。群像劇>>続きを読む
小林聡美の演じた五十嵐芙美さんが、大林宣彦監督の映画「転校生」の斉藤一美とタブって見えた。三つ子の魂百まで。女は歳を重ねても乙女のままなのだ。
芙美さんは古臭い価値観から抜け出せないでいる。子供>>続きを読む
伯父さんと甥っ子。シーンの多くがふたりのやり取りに割かれる。情緒の発露とその後の反省、そして人生観。ふたりの演技があまりにもハイレベルで、本当の伯父さんと甥っ子にしか思えなかった。ホアキン・フェニッ>>続きを読む
パリは恋愛に自由な街だ。浮気や不倫で相手を責めるような野暮なことはしない。セックスの相性がいいかどうかは、セックスしてみないとわからない。一度セックスしてから付き合うかどうかを決めるような、そういう>>続きを読む
1968年に黒人解放運動の指導者キング牧師が暗殺された。本作品は1971年の話だから、その3年後のことである。アメリカ映画ではなくイギリス映画というところが変わっている。KKKについては知らない人は>>続きを読む
日本ではセックスについて正面から語られることは、日常生活ではあまりない。話そうとすると猥談と思われたり、場合によってはセクハラだと訴えられることもある。
しかし性は食と並ぶ基本的な欲望である。どこ>>続きを読む
超有名なロックスターと無名の一般人とのシチュエーションラブコメディである。虚像を売って名声と高収入を得るスターのキャットと、実像でフランクに暮らす一般人チャーリーとの間にはギャップがある。チャーリー>>続きを読む
はじめて人を殺すには、超えなければならない壁がある。飛び越えなければならない障害と言ってもいい。それは人を殺してはいけないという心の中の禁忌だ。
我々は子供の頃から、悪いことをすれば罰せられると>>続きを読む
ラストシーンは唐突な終わり方に思えたが、これでいいのかもしれない。主人公シムは、してやったりの笑みが浮かびそうになるのを押し殺して、厳しい顔で立ち去る。まだ何の成果も得ていない。やっとスタートライン>>続きを読む
音楽がいい。チェロとコントラバスと打楽器を中心に、終始不穏な空気を醸し出す。ホラー映画みたいなジャンプスケアを使うのではなく、じわじわとした怖さが続く。
それにしても母親役の女優の顔がそもそも怖い>>続きを読む
よく知らない女性から、老女同士のレズビアンになにか問題ある?と啖呵を切られたら、多分ちょっと困る。勿論なんの問題もありませんと答える以外にない。犯罪や迷惑行為でなければ、他人のすることにとやかく言わ>>続きを読む
お気楽なアクション映画だ。ギャグやジョークを多めに盛り込んでいるのだが、コロナ禍のせいであまり笑えない。コロナ禍の前と後では世界が違う。何をどう足掻いても、コロナ禍の前の世界には戻れない。人心が決定>>続きを読む
謂わずとしれた名作映画だ。まず場面転換の思い切りのよさに感心する。それに過多な説明が一切ない。台詞回しは演劇的ではあるが、凝縮した台詞がリズムよく語られる。喜びと哀愁の表情も見事で、さすが歴史的な名>>続きを読む
共産主義の理念は、能力に応じて働き、必要に応じて消費するというものである。なんとも合理的であり、そういう社会が実現可能であれば、今流行りの持続可能開発目標に近づくだろう。しかしそれは夢物語だ。
ド>>続きを読む
原題は「Endangered Species」だから「絶滅危惧種」である。邦題の「クルーガー」の意味がわからない。南アフリカの国立公園だとしたら、キリマンジャロ山が見えるのはおかしい。地平線は約30>>続きを読む
ロシアはゴルバチョフによる改革で全体主義から民主主義へと移行したかに見えたが、実際はそうでもなかったことは、エリツィン大統領とその後継者であるプーチンの政治で明らかになった。エリツィンのチェチェン侵>>続きを読む
阿部寛の演じる市川安男は、暴れん坊の大男だが普段は真面目でよく働く。キレやすいから要注意だが、そこが面白くてからかう仲間もいる。何度も騒動になるが、安男が人を怪我させたりしないことは、みんなわかって>>続きを読む
味わいのある群像劇だ。玉山鉄二演じる主人公立花浩樹を取り巻く登場人物それぞれにエピソードがある。どれも煮詰められて短く纏まっていて、なかなかいい。
音尾琢真の宮川良和は、バブル期の売り手市場でテ>>続きを読む
マッドサイエンティストが登場する映画で記憶にあるのは、ジョニー・デップが主演した2014年の「トランセンデンス」やエリザベス・モスが主演した2020年の「透明人間」などが記憶に新しい。
本作品を観>>続きを読む
映画のエンドロールに、洋画なら「Casting」邦画なら「配役」という役割が出ることがある。これまでは何も考えずに、ただ茫然と眺めているだけであった。配役をさして重要な役割だとは考えていなかったので>>続きを読む
ヒロインのアンを演じたマリオン・コティヤールの歌が素晴らしい。この人がエディット・ピアフを演じた映画は残念ながら劇場での鑑賞を逃してしまった。ヘッドフォンを介しての配信の歌は聞く気になれなかったので>>続きを読む
想像力もここまで飛翔すると、もはやリアリティだの云々は関係なくなる。なにせインパクトが凄い。よくぞこんな作品を作ったものだ。主演女優の振り切った演技があってこそだろう。怪演という言葉を通り越して、本>>続きを読む
主役は2児の母のサオリである。子供を作るかどうか悩んでいるアヤがトリックスターの役割を果たすのだが、アヤのキャラクターが不安定な上に、演じた尾花貴絵の演技がいまひとつだったので、作品としての完成度が>>続きを読む
主人公は浅墓で優柔不断で弱気な割に、妙なところで依怙地になったりする。そのくせ人並みに欲望はある。要するにラヒムはつまらない男なのである。しかも頭もよくない。このあたりがなんともリアルだ。身につまさ>>続きを読む
比嘉愛未はスレンダーな長身美人で、腕も脚も長くてスタイルはとてもいい。喜怒哀楽の表情もそれなりに上手だ。しかし何故か、存在感がない。本作品の演技もとてもよかったのだが、周囲を圧倒するような存在感に欠>>続きを読む
文字通り、疾走感がある。退屈せずに観られた。とにかく救急車で疾走する映像を主体にしたかったのだろうが、人物の背景の説明が少なすぎて、ほとんど誰にも感情移入できない。銀行強盗の計画の説明もないから、誰>>続きを読む
愛国心は即ち誤解である。たまたまそこで生まれたに過ぎない国を「祖国」や「母国」などと呼んで、あたかも「自分の国」であるかのように誤解する。
「故郷」や「親友」の誤解と同じだ。幼い頃を過ごした場所のこ>>続きを読む