ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ひでやん

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女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.2

王室で巻き起こる女たちのドロドロ愛憎劇。

奇妙な過去の3作品が強烈だったので、今作はヨルゴス・ランティモスの作品なのか?と疑うほどまともに思えた。脚本が彼によるものではなく、舞台設定も18世紀の史実
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籠の中の乙女(2009年製作の映画)

3.8

井の中の蛙大海を知らず。されど空の飛行機を知る。

外からやってきた女にボカシが入った時、R指定に納得してしまった。納得すると身構えていた警戒心が解けちゃって大変である。油断した所でブチ込まれる猫…。
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グリーンブック(2018年製作の映画)

4.5

黒人差別が根強く残る1960年代、天才黒人ピアニストとイタリア系の用心棒が、特に差別が色濃いアメリカ南部をコンサート・ツアーで回るロードムービー。

黒人が使ったコップをゴミ箱に捨てる序盤で、ここまで
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七つの会議(2018年製作の映画)

3.9

押し潰されそうな圧力の中で貫く正義。

『半沢直樹』の組織体制と、『下町ロケット』のものづくり精神を合わせたような作品だった。池井戸潤の原作は相変わらず面白いよね、期待を裏切らない。期待ってゆうのは、
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翔んで埼玉(2018年製作の映画)

3.5

愛を込めて侮辱する絶妙な匙加減。

本編開始前に原作者が登場し、これは「フィクション」だと断りを入れ、さらに車のラジオから流れる「都市伝説」の話にする二重の防御。その中で「笑って許して」という力加減の
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シャザム!(2019年製作の映画)

4.0

ソロモンの知恵を受け取らず、HAZAMになったおバカなヒーロー。

コメディセンスが抜群だね。魔術師が少年に神の力を与えて、早くもヒーロー誕生?と思わせる冒頭が憎い。後継者に相応しくない者ばかりで待ち
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あの頃、君を追いかけた(2011年製作の映画)

4.2

問題児と優等生の甘酸っぱい青春ラブストーリー。

あいつもこいつもあの席をただ一つねらっているんだよ。このクラスで一番の美人の…前に座った主人公。勉強嫌いな問題児が、好きな女の子のために勉強に励むとい
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こうのとり、たちずさんで(1991年製作の映画)

4.3

切り離されても心を繋ぐ静寂の集い。

テレビ番組の撮影で北ギリシャの国境地帯にある寒村を訪れたアレクサンドロスは、入国許可を待つ難民の中に10数年前に失踪したと思われていた大物政治家らしき男を発見。彼
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シテール島への船出(1983年製作の映画)

4.1

亡霊となったかつての闘士。

主役を探していた映画監督がラベンダー売りの老人と出会い、彼の後を追うのだが、見失ったその老人が帰国する父として現れるのでややこしい。父の物語と映画製作の二重構造というべき
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存在のない子供たち(2018年製作の映画)

4.2

12歳の少年が「自分を生んだ罪」で両親を訴えるオープニングが衝撃的で、そこに至るまでの経緯は重苦しく、衝撃の嵐が心を揺さぶった。

貧困、児童虐待、児童労働、不法就労、不法移民、難民、人身売買…日本と
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わたしはロランス(2012年製作の映画)

4.0

大胆かつ繊細な心情描写が心を揺さぶる。

女性になりたい男性とその恋人の10年に及ぶラブストーリー。カメラワークや色彩感覚、音楽のセンスが抜群で、印象に残るシーンばかりだった。はじめにスタンダード・サ
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十二人の死にたい子どもたち(2019年製作の映画)

2.9

キャストが豪華なのに重厚感がなく、良く出来た脚本なのに説得力がない。

命の選択について密室で論争した結果、強力な死への願望が生へと向かう展開を期待したが、殺人犯を探すというサスペンスが予想外で、思っ
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アス(2019年製作の映画)

3.6

アメリカ社会の闇を暴き出す社会派ホラー。

オープニングのウサギが不気味で、そこから不穏な空気が漂い続ける。遊園地内のミラーハウスで得体の知れない恐怖を植え付けられ、じわじわと恐怖が忍び寄る、というよ
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メランコリア(2011年製作の映画)

3.3

人類にとって絶望的な宇宙の救済。

『アンチクライスト』に続く「鬱三部作」の二作目は、対照的な姉妹の視点で描く最悪のハッピーエンド。前作同様プロローグをスローモーションで映し出しているが、悪趣味な前作
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アンチクライスト(2009年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

全編に渡って貫く救いようのない精神世界。

重度の鬱に苦しみ、映画監督としての活動休止を余儀なくされたトリアーによる「鬱三部作」のひとつ。転落の悲劇をスロー再生する美しくも残酷なプロローグに初っ端から
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ドッグヴィル(2003年製作の映画)

4.0

限られた空間の中であぶり出す人間の醜悪。

白線とわずかな家具だけで町を作るトリアーに冒頭から思わず笑ってしまったが、同時に不安に襲われた。こんなふざけた設定とナレーションによる進行で3時間走り抜くの
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イディオッツ(1998年製作の映画)

3.4

障がい者を演じて健常者の偽善を暴く。

レストランで障がい者の集団と遭遇する事になる女性カレンの視点で物語が始まるのだが、彼女と一緒にまんまと騙された。冒頭から問題作である。

障がい者を演じる集団「
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幸福なラザロ(2018年製作の映画)

4.4

リアリズムとファンタジーが入り交じる二部構成のシナリオが面白い。

外部から隔絶された小さな村で、小作制度の廃止も知らされず昔のままタダ働きをさせられている純朴な村人たち。領主の侯爵夫人は事実を隠蔽し
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万引き家族(2018年製作の映画)

4.3

様々な社会問題が盛り込まれていたが、倫理観では割り切れない気持ちが胸に広がり、結局その答えは出ないままだった。

序盤は柴田家の家族構成が今ひとつ分からなかったが、徐々に相関図が見えてきて、奇妙な繋が
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運び屋(2018年製作の映画)

4.1

実話を基に、麻薬カルテルの運び屋となった90歳の老人を描いたクライム・ムービー。

『グラン・トリノ』が最後の映画出演になるだろう、これからは監督業に専念すると言ったイーストウッド。もうスクリーンで彼
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アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)

3.7

華々しいスターの誕生と、痛々しいスターからの転落。

世界的に有名なロックスターが、たまたま立ち寄ったバーで聴いた女性の歌に惹かれ、いきなり自分のステージに彼女を上げてしまうって、夢みたいな話やな。夢
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わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.0

緊縮財政によって切り捨てられる弱者の悲痛。

心臓の病を患い、医者から仕事を止められた59歳のダニエル。国の援助を受けようとするが、イギリスの複雑な制度に振り回され途方に暮れる…。

マニュアル通りの
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レベッカ(1940年製作の映画)

3.9

妻を亡くした富豪男性と旅先で出会い、貴族の後妻として迎えられた若妻が、死んだ前妻の影に追い詰められる恐怖を描いたヒッチコックの渡米第一作。

ヒロインの名前ではなく、一度も登場しない姿なき亡霊をタイト
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バルカン超特急(1938年製作の映画)

3.9

列車内で忽然と消えた老婦人の謎を追うヒッチコックの英国時代の傑作。疑うべきは全ての乗客か、それとも自分自身か?

列車という密室を舞台に繰り広げるミステリーだが、その列車は雪崩のため運休。いや、宿屋で
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三十九夜(1935年製作の映画)

3.8

ヒッチコック作品の基本的要素が詰め込まれたイギリス時代の代表作。

見知らぬ女性を助けたことで無実の罪を着せられた男が、警察とスパイ組織から狙われる事になる巻き込まれ型サスペンス。

初対面の女性に「
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鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

閉ざされた扉越しに抱く猜疑心と好奇心。

孤独な美術鑑定士の元に、 両親が遺した美術品を査定してほしいという依頼が入り、クレアと名乗る依頼人の屋敷を訪ねるが、依頼人は一向に姿を現さず…。主人公の鑑定士
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.0

ハバネロが隠れたフルーツケーキのような世界。

格式高い高級ホテルのコンシェルジュとベルボーイが、殺人事件と遺産争いに巻き込まれる冒険を描いた作品。

語り手であるホテルのオーナーから聞き手の作家へ、
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クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)

4.0

妻に突然出て行かれた夫が、育児と仕事の両立に奮闘するホームドラマで、当時のアメリカの離婚問題、親権争いを正面から描いた作品。
 
「ママはどうしていなくなったの?僕が悪い子だったから?」

子供に罪は
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ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)

4.1

波間にたゆたう小舟のような自分探しの旅。

続編の監督は荷が重いだろう。ましてやSF映画の金字塔といわれた前作の続編は重過ぎる。今作で製作総指揮にまわったリドリー・スコットがその荷を後ろから支えつつ、
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ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

4.2

舞台となる2019年を追い越してしまった今、改めて観たその世界は、人類の行く末のようだった。

40年近く経った今でも、オープニングで映し出される未来都市のクオリティに驚かされる。壁面に広告が映し出さ
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月世界旅行(1902年製作の映画)

3.8

映画の魔術師が120年前に描いた人類の夢。

映画製作に携わる前は奇術師だったというジョルジュ・メリエスが、監督・脚本・撮影・演出・出演の全てを自身でこなした世界初のSF作品。

天文学者6人が大砲で
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検察側の罪人(2018年製作の映画)

3.4

100 %の正義なんてどこにもない。

老夫婦殺人事件を担当し、真実を突き止めようとする若手検事と、自分の正義に固執し、時効を迎えた事件の重要参考人を執拗に追い詰めるエリート検事の対立はなかなか見応え
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家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。(2018年製作の映画)

3.0

直球ばかりじゃなく、時には変化球もある心のキャッチボール。

結婚3年目の夫婦。ある日、夫が仕事から帰るとリビングで血を流して死んでいる妻を発見。ほんの一瞬だけサスペンスに思えたが、タイトルを思い出し
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ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)

4.0

緊張から解放させない恐怖の123分。

2008年に発生したムンバイ同時多発テロ事件にて、タージマハル・ホテルに乱入したテロリストから客を救出するため奮闘するホテルマン達の姿を描く。

情け容赦ない殺
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ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)

4.2

憎しみを未来へ繋ぐか断ち切るか。

無抵抗の黒人の青年が白人警官に撃たれて死亡というニュースを見る度に「ひでえ話だな、肌の色が違っても同じ人間じゃないか」と思っていたが、人種差別も銃社会も馴染みが薄い
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

3.7

夢の国の外側にある貧困。

フロリダ・ディズニーワールド近くにある安モーテルを舞台に、貧困のシングルマザーと娘の日常をドキュメンタリー風に描く。自由気ままに遊び回り、悪戯してケラケラ笑う子供たち。カメ
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