いち麦さんの映画レビュー・感想・評価 - 42ページ目

いち麦

いち麦

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裏面(2009年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》恋愛に縁のなかった中年女性編集者に訪れた幸運の行方。軽い笑いのジャブで快く引き込まれているうちにとんでもないブラックで可笑しな展開を辿る怪作。モノクロ映像と独特の対話で古風な過去>>続きを読む

真夜中のふたり(2013年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》母と青年と娘のカップルが同居する三角形が息子の新たな恋人男性の出現で重心を移していく危うさと容赦なさ。面白い関係を幾つも内包していくGームービー。マイルドだが肝となる性描写も抜か>>続きを読む

愛される方法(1963年製作の映画)

3.0

《ポーランド映画祭》捜査から逃れる気弱な訳アリ俳優との経緯を彼に恋した女優がパリに向かう機中で回想。ハスらしい入れ子構造で膨らむEpが寓話の味わい。Z.ティブルスキ&B.クラフトフナの美形コンビで目>>続きを読む

愛する(2012年製作の映画)

5.0

《ポーランド映画祭》妻を襲った不幸から次第に夫の心の内面掘り下げへとシフトしていく物語。人を赦すことの難しさ、特に男性特有の弱さと女性の優しさ懸命さ強かさが対照的で心に訴える。クライマックスでは思わ>>続きを読む

結晶の構造(1969年製作の映画)

3.0

《ポーランド映画祭》ひと気のない山奥の測候所で気象観測をしながら暮らす夫婦の慎ましく穏やかな幸福感が、対照的な人生を辿った旧友にも浸透していくのが良く分かる。妻アンナの茶目っ気たっぷりな陽気さと聡明>>続きを読む

軌跡(2012年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》映画大学でハスに教わったかつての学生たちが語る監督の指導方法や授業中のエピソード。厳しくも温かい良き指導者、相当な変わり者といった印象。ハスの映画製作のアプローチが非常によくわか>>続きを読む

縛り首の縄(1958年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》続) 街の飲んだくれ爺ヴワデク役のTadeusz Fijewskiが主役のグスタフ・ホルベクを食うほどの素晴らしい演技…彼の登場するシーンには強く引き込まれた。

悪寒(1981年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》共産主義少年少女団の寮に入った少年が次第に変容していく様。キーパーソンとなる寮の美人教育係のぐらつき等、社会からの外力に揺らぎ始めたコミュニスト・グループの情勢が皮肉を込めて描か>>続きを読む

太陽の年(1984年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》許されざるも惹かれ合うエミリアとノーマン…若くはない二人の愛の出発を阻む幾多の障壁。娘以上に心揺さぶる母の胸中。深く抉られた様な大戦の傷跡を度々見せつけられ波国の歴史の悲痛な叫び>>続きを読む

木洩れ日の家で(2007年製作の映画)

4.0

《ポーランド映画祭》家族に発した言葉すら虚しく消えゆく老いの孤独感。愛犬のショットはまるで見ている者の気持ちをアニェラに投げているかのよう。台詞以上に心情を伝える繊細な映像描写、抑えの効いた劇伴が素>>続きを読む

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)

2.0

芸術的カメラワークで切り取られた日常風景。『ウォールデン』に比べれば大分見やすいがそれでも極短の速いショットが多い。整然と道路を渡る人々やラストのウィーンの夜空を赤く染める市場火災の炎が美しく印象的>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

5.0

丁寧な人物像描写で見ていれば真実は自ずと見通しが立つ…が終盤それを上回る驚愕の展開。夫婦関係や親子関係について考えさせられる。笑顔が演技になるB.アフレックに演技がテーマの役とは…もう彼以外ない程の>>続きを読む

サベージ・キラー(2013年製作の映画)

3.0

米先住民と聴覚障害者ゾーイとの繋がりが弱く何者の復讐劇なのか一体感なく威力削がれる。ゴア描写もあるがお遊び程で凄惨さ弱い。ただB級感の真っ只中で恋人への愛を訴えるアマンダ・エイドリアンが綺麗に映えて>>続きを読む

滝を見にいく(2014年製作の映画)

3.0

次第に少女に返った様な姿を見せる7人のおばちゃん達が如何にもという感じで自然だった。ただオリジナル脚本ならもっと意外性のある展開が見たかった。ロケ地:妙高高原の山道と秋の景色は長閑でまず遭難しそうに>>続きを読む

メビウス(2013年製作の映画)

3.0

捻り返して繋ぐ負の連鎖の環。台詞なしが一層五感に訴える。男根切断の痛々しさと喪失感はまだまだ想像できるとして、それを克服していく手段は想像を絶する。終盤やっとギドクらしい興味を引く心理描写が垣間見え>>続きを読む

超能力研究部の3人(2014年製作の映画)

5.0

ワザと嘘っぽく見せる現場スタッフ勢の自虐的演出と、素かと見紛う彼女達の初々しいまでのガチな表情がブレンドし曖昧になる虚構と現実の境界線。アイドル起用のリスクを揚々と跳ね退ける監督の脱構築的離れ業に脱>>続きを読む

ニューヨークの巴里夫(2013年製作の映画)

4.0

複数女性入り乱れ相変わらずの狂騒曲ぶりだが子作り子連れ事情が迷走感を強め可笑しい。背景に描かれる非アメリカ系住人から見たニューヨークの素顔も興味深い。チャームポイントはR.デュリスの胸。

パーソナルソング(2014年製作の映画)

3.0

オリジナル音源を使う音楽療法の効用に目を見張る。音楽好きなら簡単だがそうでない人のマイ・ソングを探り当てる過程等、掘り下げ不十分な部分も。活動の難しさや自主自律を重んじる米国ならではの状況は興味深か>>続きを読む

ラブ・パンチ(2013年製作の映画)

4.0

一度別れた熟年カップルが再びタッグを組み友人夫婦と一緒に転落からのリベンジを企てる。お決まりの展開をするドタバタコメディだが007ネタもしっかり仕込み老体に鞭打つ如きP.ブロスナン&E.トンプソンの>>続きを読む

ハネムーン(2014年製作の映画)

2.0

のっけからの新婚夫婦イチャイチャ図の微笑ましさとは対照的に露わになる森の某の蝕み方が穢らわしい。最後は想像通りだが何故やどうやってが読めない新妻の言動の不可解さ不気味さはある。煙に巻かれた分のモヤモ>>続きを読む

チェイス!(2013年製作の映画)

5.0

アーミル・カーンの鍛え上げた肉体美と見事な演技に大拍手。彼の魅せる人間ドラマに胸熱…と同時に目一杯演じている姿にちょっぴりクスッとなったり。解放感いっぱいの遊園地のシーン、終盤の展開とラストが特に素>>続きを読む

TATSUMI マンガに革命を起こした男(2010年製作の映画)

4.0

大人向け漫画=劇画を興した辰巳ヨシヒロ氏の半自伝的ドキュメンタリー。戦後昭和の時代背景もあちこちに窺えて懐かしい。挿入された5編の劇画作品アニメーションも酸っぱさ苦さ強く味わい深い。

劇場版 進撃の巨人 前編 紅蓮の弓矢(2014年製作の映画)

3.0

テレビアニメ版総集編なので初見者には乱暴な繋ぎに映った箇所もあったが絶望的な戦況下で果敢に挑む少年たちの高揚感を楽しめた。後半が似たような戦闘シーンの連続で少々退屈なのは仕方がないか。

想いのこし(2014年製作の映画)

3.0

見えた瞬間と見えなくなる時が合わさる効果が沁みる。大切な人を失った者が生きる力を取り戻す…岡田将生演じるチャラいガジロウが最後に一番困難な解れを解く展開が良かった。屈折した少年の表情を見せる子役巨勢>>続きを読む

オオカミは嘘をつく(2013年製作の映画)

5.0

キャスティング、省略、副話などあらゆる手段を使って容疑者と被害者家族・刑事との常識的な関係を転覆させることに見事に成功している。見る側のアドレナリン放出まで自在に弄ばれている様な演出。このイスラエル>>続きを読む

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)

5.0

胸に迫るE.グリーンの憂う表情。宇宙ステーション滞在に向けた長期にわたる、準備・調整や家族との別離がいかに過酷か。描写がきめ細やかで、一寸あり得ないような大胆な行動にもある程度は納得。実際この様な苦>>続きを読む

ドリームランド(2019年製作の映画)

4.0

砂嵐押し寄せる荒原の景観と挿入される心象風景の対比。年齢の割には晩生でウブな青年と、彼を利用しようとする女性ならず者との交流…その行方に引き込まれた。2人のシャワー・シーンは記憶に残りそう。父親違い>>続きを読む

クロッシング・ウォー 決断の瞬間(2014年製作の映画)

4.0

アフガニスタンに軍事介入したドイツ軍の駐留兵士と現地の通訳青年の奮闘と苦悩。終盤の衝撃には居たたまれぬ気持ちが何度も襲い和平の難しさを実感。人物夫々の背景も盛り込んだ臨場感溢れる社会ドラマ。

神さまの言うとおり(2014年製作の映画)

4.0

先の読めぬ命がけな序盤がナンセンス&ホラーの雰囲気十分で笑える…良かった。よくあるサバイバルゲームの様相を呈した辺りから青春ドラマの味付けもあって緩慢。だが神木隆之介も山崎紘菜も堪能でき予想以上に満>>続きを読む

情愛中毒(2014年製作の映画)

4.0

部下の妻とのW不倫へと転がり堕ちていくキム…まるで少年の様に初な恋に身を任せていく無防備な姿が何とも哀れだった。ガフンの無表情さがミステリアスで説得力十分。義母の妙な理解や勘の鋭さも印象的。劇伴はも>>続きを読む

白夜のタンゴ(2013年製作の映画)

3.0

フィンランドこそタンゴのルーツと譲らぬアキ・カウリスマキの真顔ショットとは対照的にアルゼンチンから乗り込んだミュージシャン3人が繰り広げるセッションの陽気で和やかなこと。タンゴを奏で歌い踊る動機はど>>続きを読む

寄生獣(2014年製作の映画)

2.0

ゴア描写が物足りぬ。寄生と捕食という相反する適応戦略を見せたり独自に持つべき繁殖法が曖昧で生活環が回ってなかったり…と既に原作で縛られる寄生体の不可解さが散漫に映り入っていけぬ。染谷将太の演技は自然>>続きを読む

西遊(2014年製作の映画)

2.0

《東京FILMEX》『郊遊 ピクニック』のツァイ・ミンリャンとリー・カンションのコンビ。かなりの際物映画だった。托鉢僧の様なスタイルで超スローモーションで歩くリーの悶絶パフォーマンスを美しく収めた映像>>続きを読む

ストックホルムでワルツを(2013年製作の映画)

4.0

プライドの高さは天賦の歌唱の才には見合っても恋愛はそうはいかぬ。有名な楽曲たちに酔い、モニカの心の奥を覗き、勝ち得た成功の秘訣を考える。そんな中でジャズを取り巻く環境変化も織り込まれているのがイイ。>>続きを読む

予想外な8月(2013年製作の映画)

3.0

《フィンランド映画祭2014》カティ・オウティネン主演、そして昔の東西社会情勢を下地にした緩いコメディ調…これでは否が応でもカウリスマキ弟の作品群を想起。ヤンの奏でるサックスは深いリバーブが掛かり心>>続きを読む

水面を見つめて(2013年製作の映画)

4.0

《フィンランド映画祭2014》ラップランドを舞台に致命的な火種を抱えた家族の人間ドラマ。暴力的な父親の人間的な弱さや次第に息子ペテに育っていく翳りも十分に描かれるなど多面的な捉え方が説得力を持つ。北>>続きを読む