kaoruiさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ラスト・シューティスト(1976年製作の映画)

3.5

ジョンウエインの遺作を、西部劇を心から愛するシーゲルが撮る別れの哀歌だ。
ラストの銃撃戦は華麗なガン捌きとは程遠く泥臭い肉弾戦なのだが、衰えゆく肉体を振り絞りるウエインの命の炎がぼっと燃え上がる様をリ
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

2.0

今作、宮崎さんの溢れるイマジネーションが堰を切ったようだ。僕は今作に黒澤明の「夢」を感じた。ストーリーの整合性は横に置いて、伸び伸び画面いっぱいに運動するインコやペリカンたち、風を帆いっぱいに受け波を>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

息子レコメンドでこれも良い作品。
恐らく計算なのだろう、偶然撮れてしまったような映像が随所に散りばめられており、独特のアクセントになっている。
全く未見性に満ちたタッチなのだが、無邪気な少女と父の束の
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ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

5.0

大大大大大大大大大大傑作。
愛が溢れて止まらない愛すべき人々。笑ってそして泣いて、心いっぱいに映画を呼吸する。
こういう作品に出会えた時、映画好きで良かったと心から思う。
死を覚悟していたのであろうカ
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雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

3.5

あれ?という出来事が少しずつ少しずつ積み重なっていく。窓から外を眺めるとベンチに一人の若者が濡れたまま座っている。老人たちとのつまらない会話、サンディデニスの孤独。途中、再び、そして三たび眺めると窓の>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.5

傑作エッセンシャルキリング以来、待望している監督の1人、スコリモフスキー作品。何年ぶりだろう。
振り切った映像表現に打ちのめされた。
ヨタヨタ歩くEOの向こう、俯瞰して巨大な爪がスクラップを吊るす。遠
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ガントレット(1977年製作の映画)

1.5

厨房の時劇場で熱気に包まれて観た想い出の作品。使われた弾丸ooo 発のキャッチコピー に胸躍らせ当時はスゲーってなった。

おっさん(おじいさん)になって再見、イーストウッド、実はプログラムピクチャー
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白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)

2.5

かなり怖い。一人一人は優しかったりませていたりするのだが集団になると顔色を伺いながら流されながら不気味に大胆になる。
逃げられそうで逃げられない鳥籠の中のイーストウッドの被虐性を見出しスリラーに繋げる
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アルカトラズからの脱出(1979年製作の映画)

3.0

面白いなー。大昔劇場で観たのだが、すっかり忘れておりスリル満点で楽しめた。囚人仲間との心の交流に中盤までたっぷり時間を割く。絵描き、心優しきネズミ飼い、黒人のボス。
脱走に移ってからは、下手なサスペン
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ダーティハリー(1971年製作の映画)

4.0

何度観ても面白い!
70年代のサンフランシスコの夜の熱気をシーゲル一流の乾いたタッチで切り取る。
身代金を抱え夜の裏通を引き回されるシーケンスが素晴らしい。酔っ払いが電話に出たり、追い剥ぎに絡まれたり
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.5

画面に向かって女性が話す。カットバックするともう1人の女性が話し出す。そしてもう1人。長老が語り、そして少女が語る。納屋のニ階の開け放たれた扉から見渡す景色が美しく広がり、閉塞する物語に天からの風が吹>>続きを読む

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

3.5

マンゴールドらしい生真面目で硬派な作りで、僕は好きだな。見上げる高架、空を埋め尽くす米軍機!などアクションの合間に決めの絵がバシッと入る。
ここ浜松でも満席な館内、小気味の良い活劇が楽しかった。馬とバ
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J・エドガー(2011年製作の映画)

1.5

うーん映画って奥が深い。
土方歳三のごとくFBIを最強集団に育て上げることに生涯を捧げるストーリーをフラッシュバックを交えて緻密に構築された脚本、演ずるのは変態俳優としての引き出しを今作で開けることに
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グラン・トリノ(2008年製作の映画)

5.0

大大大大大傑作。 
マイノリティの異邦人達の小さな諍いに巻き込まれていく孤高の主人公、愛犬だけが友達だ。理髪屋(ジョンキャロルリンチ!)と毒づきあい、唾をぺっと吐く。
イーストウッド西部劇のモチーフが
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チェンジリング(2008年製作の映画)

5.0

大大大大傑作。

ミスティックリバー、ミリオンダラー、そして今作とグラントリノに続く四作は映像作家としての迸る才能が最高潮に発露している。とりわけ今作が僕は一番好きだ。
監督一流の美的感覚が全編に行き
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アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(2022年製作の映画)

3.0

開巻でクラッシュの隠れた名曲アルマゲドンタイムの一節がダブの深いビートの中鳴り響く。 そういうことか?と思う間もなく小学生の特権でもある腕白で傲慢な日々の描写が始まる。
自然光を活かした淡い絵はダリウ
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.5

シリアルキラーのおっさんの杜撰な死体処理が怖い。自宅で殺し床に転がした死体の足の裏を見ながら奥さんと交わる。日常の中に殺人がある。しかも殺す前に逡巡しながら、神に殺す勇気を乞い願う異常性。
クールで美
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ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)

4.5

この作品の表出する圧倒的な絵を前に、なんと言い表せば良いのか。
色彩設計、テクスチャ、タッチ、構図いっぱいにダイナミックに展開する運動を盟友トム・スターンがカメラに収め、全てが有機的に融合しこの画を産
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ミスティック・リバー(2003年製作の映画)

4.5

円熟の演出が重厚なクライムサスペンスを産んだ。カメラ越しに睨みつけてくるショーンペンだけで飯が三倍は食える。街の顔役の小悪党ぶりを快演する。ラストシーケンスの緊張感が凄まじく、ペンの遂には演者の枠を越>>続きを読む

ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)

3.5

探偵モノとして、端正に組み上げられていて、唸るしかない。
冒頭のシリアル(ナンバー)キラーと心臓移植の設定で度肝を抜くのだが、そんな設定を忘れるくらい小悪党の小さな事件に終盤近くまで思いっきり振りきる
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波紋(2023年製作の映画)

2.5

ムコリッタで荻上監督が大好きになり楽しみに鑑賞、今作もラストシーケンスが凄かった。
棺桶から砂利の川にこぼれ、カメラが宙に舞うと真っ白な砂利に真紅の傘がパッと開き、筒井真理子が舞う。冒頭からタップの音
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トゥルー・クライム(1999年製作の映画)

4.0

全編緻密な演出だ。死刑囚とその家族のシーンはどれも息詰まる苦しさで、見守る看守達や所長の血の通った表情、立ち居振る舞いを丁寧に描写する。死刑囚の娘のクレヨンを総出で探す看守達のシーンは涙が出る。
対し
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目撃(1997年製作の映画)

1.5

父と娘の物語だけで胸を打たれるがディテールが少し雑ではないか。
肝心要の凶器を袋ごと忘れてきたり、なぜか二人目のスナイパーが登場して誰?となってしまったり、病院にガタイの良い怪しい医者が二人ウロウロし
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マディソン郡の橋(1995年製作の映画)

3.0

なぜか敬遠してきたのですが、観てよかった。

今作以降、淡い色彩設計が顕著にあらわれてくる。淡い黄色、そして薄緑。初老に差し掛かった二人を色で表すと淡い枯れた色になる。
オバハン(失礼)剥き出しだった
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怪物(2023年製作の映画)

2.5

黒澤の羅生門のように複数からの視点で一つの残酷な物語を描くが、ここは是枝さんなので不条理的な要素はない。人間の視野は限られており当然すれ違うことを理性的に描写する。
二人の少年は必然的に追い詰められて
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ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

4.5

傑作だ。アルトマン作の中でも異色といってよいであろうソリッドでヒンヤリしたタッチで驚いた。鏡や電話がやたら置いてある白い部屋から始まる奇妙な世界。
二つの世界が混信しふと繋がってしまうプロットは村上春
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許されざる者(1992年製作の映画)

4.0

老境を迎えるイーストウッドとモーガンフリーマンのヨレヨレぶりが堪らない。強がりの若造を交えた凸凹チームの道行きが微笑ましいが、
芯に傷つけられた娼婦の傷ましさがあり、彼女と出会った後に漲る緊張感が素晴
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ルーキー(1990年製作の映画)

2.0

名匠が作家性をかなぐり捨てエンタメに振り切った。洗濯屋で死体がゆっくり吊られてきたり、火花を散らすカートレイラーとのチェイスなど目を見張る演出は随所に見られるが、とにかくテンポが良く、ユーモアたっぷり>>続きを読む

ホワイトハンター ブラックハート(1990年製作の映画)

3.5

大きな画だ。アフリカを撮るにはこれくらいの大きさが必要だ。核心に迫ることなく、この大きな絵の中でゆったり遊ぶ。漂う希死感は北野作品にも通じる。
人間のちっぽけな勇敢さも芸術的好奇心も、悠久の大地が呑み
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雄獅少年/ライオン少年(2021年製作の映画)

4.5

奇跡が起きる過程を時にユーモラスに、時に美しい景色の中に、そして丹念に描く。
諦めず、諦めず、降りかかる運命を時には呪い、それでも諦めない。
奇跡はそのような者達の上に訪れる。
鬱蒼と茂る森の中に厳か
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.5

身を切るようにヒリヒリと痛く、辛ければ辛いほど互いに寄り添う二人、シビアな現実をダルデンヌタッチで冷徹に撮る。ただ今作、エンタメ的に計算された作りでハラハラ手に汗握る作りになっている。
トリ君の才気煥
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バード(1988年製作の映画)

4.0


圧倒的な構成力と密度感だ。どのシーンも厳粛な空気に満ちているのだが、音楽と生活に正面から対峙するがためにゆっくりと押し潰されていくバードの生きる姿を真摯に撮っているからだと僕は思う。
そんな中だから
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ダーティハリー4(1983年製作の映画)

2.5

ブルースサーティースの映像を堪能するなら本作だ。
波濤煌めく海岸線を俯瞰する空撮、そして海辺の遊園地兼居住地を潮の香りいっぱいに描写するのだが、これらは傑作「恐怖のメロディ」と地続きだ。
暗闇に逆光の
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センチメンタル・アドベンチャー(1982年製作の映画)

4.0

監督作を大きく「許されざる者」の前か後かで分けるとしたら、前期のベストは今作だ。
ロードムービーとして、また音楽映画として滋味たっぷりで心のひだに沁みてくる。
ジョンマッキンタイア演じる祖父が西部開拓
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ブロンコ・ビリー(1980年製作の映画)

3.5

心の奥の奥まで温かくなる大好きな作品。
プライドばかり高く氷のようなソンドラロックがイーストウッド率いる旅芸人と出会い、波瀾万丈の道行きの中、一人一人の来し方を知るにつれ心の棘が少しずつ溶け人間らしく
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最後まで行く(2023年製作の映画)

3.5

これは楽しいなー。前半はいくらなんでも無理があるやろな展開もなんのその、グイグイ進む。一転伏線を回収しながら複合していく後半、緻密な脚本と構成に驚く。
そして全てが明らかになって本作はいよいよ本領を発
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