kaoruiさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

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2046 4Kレストア版(2004年製作の映画)

2.0

欲望の翼、花様年華のパラレルワールドの迷宮を彷徨う。
トニーレオンは今作でも追いかけても永遠に届かない女性を追い続け、一人迷宮に放り込まれたチャンツィイーが彷徨い傷つき孤独に堕ちていく。
秘密を穴に告
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.5

大傑作。
監督が映画本来の恐ろしい本質に向き合う。撮るべき時が今来たのかもしれない。
カメラを回すだけでありのままがフィルムに定着してしまう。被写体の撮られることを意識した作られた顔。撮影者の意識の底
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ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

3.5

映画人に愛される監督が映画界を舞台に描いた群像劇として知られるが、一級品の倒叙推理劇だ。ライル・ラヴェットがレベッカの家政婦の如くそこにいて生理的にゾッとするが、最初の台詞のカントリーシンガーとして鍛>>続きを読む

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)

1.5

ダークな欲望の翼から一転、軽やかで楽しい。軽やかさを金城武が牽引し、トニーレオンが一切眉間に皺を寄せることなく引き継ぐ。デニスブラウンの蕩けるルーツロックからのカリフォルニアドリーミングへ。
全編手持
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欲望の翼(1990年製作の映画)

3.5

後のカーウェイ作品に繰り返し用いられるモチーフの一つである時計(トキ)の描写は今作からか。共に刻んだ1分。
同じく監督作品を彩ることになる夜の雨、そして鏡の描写も既にスタイリッシュで、若者たちは皆孤独
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.5

オリマキはモノクロだったからわからなかったが、この監督の色彩感覚は凄い。
ロシアの寂寞とした汚れた白い絵の中に深い青を溶け込ませる。
二人の孤独が深ければ深いほど寄り添っていくが、彼の孤独はあまりに深
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エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

2.5

海辺の映画館という最高のロケーションをロジャー・ディーキンスが撮る。館内の抑えた色彩と屋外の海の香り溢れる陽光いっぱいの絵は満足度が高い。孤独な女性を演じるオリヴィアコールマンは今作も素晴らしい。
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

1.5

息子レコメンドで嫁さんも泣きそうになってたけど、うーんハマらなかった。
刃牙のように挿入される後日談インタビュー、そして遠景で挿入されるモーションキャプチャCGの違和感に集中力を削がれてしまった。モン
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三つ数えろ(1946年製作の映画)

2.5

スモーキーで一途なバコールとボギーを中心に据え、僕達はただ迷宮のように入り組んだプロットに酩酊しながら彷徨い彷徨い、物語は着地しないまま(したのかもしれないけれど)名セリフと共にナタでぶった斬られるよ>>続きを読む

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)

4.5

少しくたびれたスーツ、猫や踊り子など弱いものに優しい。モジャモジャ頭でもぐもぐ自虐的に呟く。 これ、松田優作の探偵物語、永瀬正敏の濱マイクのモデルではないか。
チャンドラー・ファンから大不興を買ったエ
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.0

タナダ監督は相性が悪かったんだけど、今作は良かった。永野さんのハードボイルドな一面を見事に引き出した。
窪田くんを一顧だにせず、ほんじゃと、ばかりの別れ、何よりクライマックスのシーンでは絶対来ると思っ
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フィッシャー・キング(1991年製作の映画)

1.0

久々の午前十時シリーズ。
ギリアムの毒が善良なるロビンウィリアムスに中和されてしまった印象で、僕には合わなかったかな。聖杯を盗りに侵入するクライマックスも緊張感無く弛緩したままで、予定調和に向け全てが
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別れる決心(2022年製作の映画)

4.0

刑事が容疑者に惹かれていく典型的なファムファタール展開ながらこの監督が撮るとどこか変だ。匂わせながら決してその瞬間を見せない演出は絶妙だが、取調室のガラスの向こうとこちらのディスプレイを交錯させた絵や>>続きを読む

ザ・クロッシング(2021年製作の映画)

3.5

ビビットな色使いと大らかなタッチで表現される絵そのものの力にまずは圧倒される。似た印象の作品にマロナの幻想的な物語があるが、運動の捉え方は対照的だ。アロマは奇想天外でダイナミックだけど、今作は森の中を>>続きを読む

銀平町シネマブルース(2022年製作の映画)

3.5

城定監督作の中では一番好きだ。
柔らかいコントラストの絵から人の温もりが染み出してくる。小さな映画館に集い生きるための力を得て小さな生を営む愛する人たちへの讃歌で、昨日観たバビロンと重なる部分があるが
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バビロン(2021年製作の映画)

3.5

群像劇が撮りたかったのだろうけれど、マーゴットロビーの魅力に取り憑かれ、全編彼女でいっぱいの作品になっている。字幕係のエピソードもトランペット奏者のエピソードも、なんならブラピのエピソードでさえも(失>>続きを読む

LAMB/ラム(2021年製作の映画)

2.0

北欧の不穏な空気を纏う前半が怖い。赤ちゃん用ベッドを運び込んだり、窓から覗くノナミラパスの表情が母親のそれだったり、タオルケット越しの体型など少しだけ見せる演出が効いている。一転後半のあけっぴろげな感>>続きを読む

明日への地図を探して(2020年製作の映画)

3.5

瑞々しい二人を主役に据え、緻密な脚本を誠実に編み上げる。
ひとりぼっち絶望の淵に立ち、逃げ出したくても逃げられず眠れない夜が続く。そんな夜が続いても、どこかで見守っていてくれる人がきっといる。
そう確
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画家と泥棒(2020年製作の映画)

3.0

メトロポリタン美術館という怖い怖いトラウマ曲があって、乱暴にいうとその曲のドキュメンタリー。中盤までシチュエーションのありえない感に翻弄される。自分の描いた命より大切なはずの絵を盗んだ泥棒に隣人として>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

4.0

ドラムセットをバスドラム、スネア、シンバル等に分解し、踊りながら隊列を組みながらビートを刻むとアフロの本来持つポリリズムのブットいビートが現れる。なんとこれはライブだ。更にはカメラは正面だけではなく俯>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

2.5

隣で走っていた仲間が瞬時にムクロになったり、ゆっくり死んでいったりする描写が繰り返し出てくる。夢いっぱいで共に臨んだ仲間たちが一人消え二人消え、生と死が日常的につながり生の感覚を失い表情を失いマシンの>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

冒頭の絶交宣言は荒涼とした孤島の絵と相まって寓話風に始まる。兄はずーっと退屈な人間という妹のセリフや、寂しいとロバを部屋に入れたり、バリーコーガンがヤカンの注ぎ口で殴られて丸く出血していたり、コリンフ>>続きを読む

花様年華(2000年製作の映画)

4.5

脚本と流麗な演出が高純度で溶けあう。
狭くわい雑な廊下を舞台に、互いの息がかからんばかりにすれ違う2人はエロい。
その時に備えて練習するシーンが繰り返されるが、感情を制御しきれなくなるマギー・チャンが
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火口のふたり(2019年製作の映画)

1.5

日本の誇る脚本家、荒井晴彦の火口のふたり。
情念を軸にした本と演ずる2人のギャップが大きいかな。ドロップアウトした柄本君は野良犬を体現してほしいところが犬っころに止まり、瀧内さんはエロスを吹き飛ばす気
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ユージュアル・サスペクツ(1995年製作の映画)

3.0

年明けから足立紳脚本作品が楽しくて、良い本の素晴らしさに目覚めたのか評判の本作を観てみた。プロット立ては反則スレスレながら、ディテールに神が宿ると言わんばかりに冒頭から緻密に書き込まれており、最後のド>>続きを読む

千年女優(2001年製作の映画)

1.5

幾重にも重なった構造で、劇中劇の監督が狂言回しから半主役になり、千代子さんが現実からスクリーンの中、更には時空を超え月に至り、観ている僕は迷子になるけれど、カメラマンがひたすらツッコミに徹しなんとか繋>>続きを読む

嘘八百 京町ロワイヤル(2019年製作の映画)

2.0

なにわ夢の陣をお正月に観て楽しい作品だったのでさかのぼってみた。
なかなか良いじゃないですか。足立さんの本が太い背骨になっており、心地よく身を任せ心地よく騙される。最後の最後までオセロのようにひっくり
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

5.0

素晴らしい作品だ。
三浦友和と岸井さんが鏡に向かって基本を確かめるように噛み締めるようにゆっくりとシャドウをするシーン、
タブレット越しに試合を観終えた三浦がよしっと呟きゆっくりと車椅子に力を込めるシ
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ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.5

優雅で真っ白な作業場と披露会場と住居が一体になった建物の狭い階段を、針子たちが、貴族たちが昇り降りすれ違い、そしてダニエルデイが優雅に迎える。完璧に構図設計された濃密な空間でこの運動は繰り返される。>>続きを読む

マグノリア(1999年製作の映画)

4.5

PTA作品で一番好き。追い求めたモチーフをアルトマン風に人間模様を曼荼羅にして、オールスターズ総動員で織り上げる。3時間、幸せでいっぱい。
完全当て書きなのであろう、ウィリアムメイシーはどこまでも痛々
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

4.0

暴走するイビツな情熱はPTAのモチーフの一つなのだが、今作もカタストロフィに向け突っ走る。
欲望とエネルギーは目的を達しても留まることを知らず濁った血が煮えたぎり溢れ漏れ出たものを僕達はこわごわと覗き
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夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)

3.5

窓の向こう、松本さんが新しいカーテンを開けると居なくなっていて、元カノとの暮らしにジャンプし、カーテンがなくなったエピソードが語られる。
窓越しに中を伺うと苦悩する山田君がおり、窓から外を伺うと孤独を
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シスター 夏のわかれ道(2021年製作の映画)

3.0

冒頭のお葬式から姉弟の今後をどうするかを協するシーンが実に良い。親戚一同集まり私利私欲を交えながら二人の行末をちゃんと心配する暖かさ。
特に自身の夢を諦め家族に人生を捧げた人としてちゃんとしている叔母
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ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.0

薔薇の名前を思い出した。
ゴシックムード満点の靄立ち煙る絵の中、ベテランと若者が事件を追う。そして異相俳優達が出てくる出てくる。ティモシースポール、トビージョーンズ、なかでもドングリお目々のハリーメリ
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アンビュランス(2022年製作の映画)

4.0

こりゃ凄い。複数台同時に、空に飛ばしたカメラを中心にひと時たりとも止めない。ギレンホールの逝った表情ですら走りながら多角的に撮る。ハラハラドキドキの運転手目線は排除し徹底して俯瞰で捉える。TENETで>>続きを読む

恋のいばら(2023年製作の映画)

2.0

アルプススタンドと今作を観ただけだけど、城定監督の本質を掴みかねている。
確かにどちらも面白い。特に今作の視点のコペルニクス的転換には口がアングリ開いてしまうほどだった。凄腕の技巧派なのか。
いやいや
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