KentFさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

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新ドイツ零年(1991年製作の映画)

3.3

西へ、西へ。
記録映像と、サイレント映画のような文字画面を織り合わせて、静かに少しずつ進んでいく。歩き、車に乗り、ボートを漕いで。
歴史の孤独、孤独の歴史。

『アルファヴィル』(1965)で、J.L
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地獄の黙示録 ファイナル・カット(2019年製作の映画)

4.2

圧倒的な戦場の迫力。一見似つかわしくない子犬やサーフィン、Playmate、仏人の楽園的コミュニティ。

極限状態にあるはずの戦場に、絶妙に緩みとあそびを織り交ぜ、緊張を分断し、ときに緊張と並列させて
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ガタカ(1997年製作の映画)

4.3

この重苦しい重力から解き放たれようと、漆黒の天空の遥か向こうに夢をのせる。海洋の上でも、その感覚を味方にして、不乱に泳いでいく。Swim backすることも気に留めずに。真っ直ぐに、ひたすらに。
科学
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半世界(2018年製作の映画)

3.3

あの頃から四半世紀。バカをしていた若かりし日への哀愁と、古里の暮らしと人間関係、世知辛い世間が詰まった、とある世界の物語。メルヘンチックな映像とサウンドが浮世離れを醸し出す。
それでいて、長谷川博己と
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鬼火(1963年製作の映画)

3.5

流れるようにパリの街を漂う。時に荒々しく岩にぶつかり飛沫を上げながら。Erik SatieのGymnopédiesの旋律にのせて。

右岸の名所に目を奪われる。Hôtel quai voltaire、
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キリング・フィールド(1984年製作の映画)

3.6

1984年、傷跡残り殺戮続く東南アジアで、カンボジア内戦をどう撮影したのかと感嘆。悲惨な現地と華やかな社交の授賞式の対比から、戦地でのジャーナリズムについて思いを馳せる。
思えば、この国は常に戦争をし
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さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

4.0

貧困と家族の問題を、軽やかにコミカルにエスプリを効かせて。家族の愛とは何たるか。ムクムクと泡のように浸り込んでくるやるせない想いが世界を包む。そこに差し込む一縷の光。生まれ変わるように、ある日この宇宙>>続きを読む

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)

3.9

センシティブで複雑な中東レバノンの問題を「侮辱」という普遍的なテーマに落とし込みつつ、エスプリ効いたメッセージを詰め込んだ優しく勇敢な作品。パレスチナの大義に留まらず、皆怒りっぽい今の時代、癒えること>>続きを読む

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン(2016年製作の映画)

3.3

詩を編むような作品。
華やかな成功を、遂に手にすることがなかった偉大な詩人の、生の煌めき。悲劇、凡庸と称されうる人生だが、そこに潜む豊かな情感を慎ましく描こうとした意欲作。

ハンガー・ゲーム2(2013年製作の映画)

3.5

生き残った歴代勝者による戦いと聞けば前作よりグレードアップしたバイオレンスと錯覚するが、あくまで壮大な闘いに向けた“つなぎ”であり布石。前作同様淡々と死者告げられていく。
知恵と執念のサバイバル。憂い
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ハンガー・ゲーム(2012年製作の映画)

3.7

理不尽なゲームは“囮り”。
その舞台を祭り上げる異様な、堂々と華やかな社会を描き出す。対照的に、か細き生は風前の灯のようにセピアで揺れながら。
殺戮はシリーズの主眼でない。三池的バイオレンスとは一線を
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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016年製作の映画)

3.7

Ethan Hawkeに感服。彼でなければ、この夫の蛮行を観るのを途中でやめ、ラストまでたどり着けなかったかもしれない。彼だからこそ、どこか安心して観ようと努めることができた。
否、彼だからこそ、ここ
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隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)

3.8

勝者が正義の戦国の世。
“三悪人”と標されているが、屈強な侍大将・真壁六郎太と強き雪姫、どうしようもない又七と太平の物語。隠し砦という閉塞的な響きとは裏腹に、踊り、歌、活劇溢れる黒澤明流エンターテイメ
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セブン(1995年製作の映画)

3.7

七つ、というカウントが冒頭に始まる。聖書との関連で、より神秘的で、猟奇的なベールを纏って。まるで7人が閉じ込められた密室殺人のような展望を感じる。
が、道半ばで調子が狂う。しかしその乱れさえも取り込ん
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ミッション:インポッシブル3(2006年製作の映画)

3.3

冒頭の10カウントが全てと言ってもいい。重要なシーンを先に観せて、時を戻す手法は数あれど、実に効果的で作品の趣旨に良く合っている。あまりに印象的なあのシーンにどう繋がるのか、そこからどう盛り返すのか。>>続きを読む

LBJ ケネディの意志を継いだ男(2016年製作の映画)

3.4

リンカーンの後始末といわれた大統領の、米国内政史における重要性が実によく分かる作品。
公民権が議論を呼ぶ1960年代の米国、若さ・カトリック・アイリッシュのJFKも去ることながら、その後を継いだのが、
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プーと大人になった僕(2018年製作の映画)

3.9

Winnie-the-Poohは、英国で生まれたことに大きな意義があることに気がつく。人と社会が忙しく動く金融・経済大国。彼はそこに飲み込まれてしまった旧友に、トンチンカンのようで、本質をついた問いを>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

4.0

大安吉日から始まる夏物語。父、姉、弟の三つの恋は、一つの恋の時代を隔てた三場面のよう。恋焦がれ、傷つき、立ち尽くす。そしていつしか同じ日の繰り返しの中で、話すことない虚無の日々が延々と続くように感じる>>続きを読む

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ(2017年製作の映画)

3.4

冒頭からスタンダップコメディアンのセンス全開。大いに楽しませてくれる。異文化も笑いに変えながら、突然のシリアスな展開も交えて。
コメディは数あれど、「コメディアン」による、のための、を描いた娯楽作品。
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さや侍(2011年製作の映画)

3.0

François Truffautに言わせれば、これはまさしく「作家主義」を体現する最良の作品だろう。松本人志という、その時点ですでにある種の地位を確立したAuteurの生き様、哲学、世界観が詰まって>>続きを読む

ゼイリブ(1988年製作の映画)

3.4

SF作品でありながら、風刺の効いた痛快なB級映画。コロラド州デンバーから流れてきた労働者は、奇妙な結社との出会いをきっかけに、社会の不平等を生むからくりを知ってしまうという物語。
世界がこんな陰謀に塗
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サーカス(1928年製作の映画)

3.8

“Be funny”
いかに難しいことか。
サーカスという人を抱腹と感嘆に包んでなんぼの舞台。意図的に立ち振舞っても上手くいくとは限らず、無心の方が思いもしない人気を生む。まさにChaplinの在り方
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ファイト・クラブ(1999年製作の映画)

3.8

90年代、積もり積もった消費社会の弊害を痛快に突く設定は、何よりまず原作の素晴らしさによるもの。ファイトというシンプルかつ原始的なスタイルへの回帰は、装飾塗れたこの物欲世界への最高の対比。
主人公の狂
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バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017年製作の映画)

3.9

「私たちは生まれついての負け犬。人より努力しないとダメ」と言い放ち、騙さなきゃ世間に騙されると勇む二人のジーニアス。家庭環境に同情を抱きつつ、スリルある許されざる努力を最後まで応援してしまう。明日から>>続きを読む

知りすぎていた男(1956年製作の映画)

3.5

本作でAlfred Hitchcockが自らに課したテーマは“音楽”との融合。それも単なるサスペンスのBGMとしてではない。
シンバルは作中で重要な役割を担う。が、それ以上にこの楽器はまさに監督の作風
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パリは燃えているか(1966年製作の映画)

3.7

1966年。アルジェリア独立戦争終結と1968年5月革命の狭間の時代、フレンチ・ナショナリズムが大きく揺らぐ時代に製作された、反乱の美談。
パリ“解放”は受動的な歴史ではなく、レジスタンスが勝ち取った
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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

3.8

神話、特に悲劇的なそれは、人間の言いようのない恐れや妄想が昇華されたもの。その主役たる神々は、喜怒哀楽、人間的な部分を強く示し躍動する。

現代人間社会に落とし込まれた神秘の物語。したがって当然”説明
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少女は自転車にのって(2012年製作の映画)

3.4

厳格な信仰中心の社会に生きる人々を、文字通り“足元”から描き出した意欲作。サウジアラビアに生きる少女のおしゃれやこだわり、女性が重苦しい漆黒のベールの下に隠す美しい素顔など、同国の女性監督ならではの視>>続きを読む

ウインド・リバー(2017年製作の映画)

3.5

凍てつく北方僻地への過酷な逃避行。そうせざるを得なかったネイティブアメリカンの負の歴史。入植者は言うだろう、虐殺はなかった、奴らは自然に死んでいったんだ、と。
作中で敢えて選ばれた「死に方」には、“建
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ロケットマン(2019年製作の映画)

3.4

「一生愛されない人生」と悲観的に振り返りながら、「ロックな生き方」とノスタルジックに振り返りながら、成功も挫折も昇華させて、また前を向いて歩いて行こうとする自伝的エンターテイメント。文字通り、Osca>>続きを読む

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

3.9

「時間」の描き方に息を呑む。
観ている側に想いを巡らす贅沢な間を与えてくれる長尺カット。監督も演者も相当の度胸と覚悟がいる。特にRooney Maraの食事シーンは圧巻。昨今の目まぐるしく視点が変わる
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ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男(2017年製作の映画)

3.8

相反する異質なものというより、コインの表と裏のように共鳴する。よって標題は、vsでなくスラッシュが合う。
それでいて各々が抱える苦悩の描写は秀逸。高みから落ちる恐怖に抗い孤独な闘いを続ける王者の若かり
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バイス(2018年製作の映画)

3.4

映画という世界は、いかに善悪の観念を問い直すか、に醍醐味がある。マフィアやヤクザの世界然り、この類稀な“ナンバー2”についても、前半のアメリカンドリームが憎らしいほど魅せる。
“What I beli
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アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)

3.9

野望と葛藤を抱えた米国地方の若者の冒険譚。「若気の至り」として片付けられたであろう“A True Story”を、本人へのインタビューを交えて蘇らせ編纂した意欲作。
いわば結末がわかっている、冒険の張
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ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(1997年製作の映画)

3.0

名監督のフィロゾフィーが詰め込まれた第二作。この神聖なる太古の生命に手を出す人類への痛烈なしっぺ返し。
皮肉にも、前作の壮大さがすぼんだ印象は否めないが、後悔はないと信じたい。

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)

3.5

天才監督の傑出した世界観の一つ。異形の恐怖は映画のお気に入りの対象だが、エイリアンやゾンビなどと異なるのは、彼らは倒すべき“敵”として描かれていないこと。むしろ、エイリアンは人間の方。壮大な世界を呼び>>続きを読む