コミヤさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

4.3

「達者でな、ショシャナ」

タランティーノ作品特有の駄話が英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語など多言語で繰り広げられ、会話そのものがストーリーの進行に密接に関係している。宇多丸さんの言葉を借りれば
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サテリコン(1969年製作の映画)

4.0

「詩人は死ぬ、でも構うものか、詩は残る」

ホドロフスキー作品の源泉のようなエログロナンセンスで美しい混沌世界がひたすらに続く。特に序盤の劇と晩餐会が最高。映像の衝撃度で言ったら生涯ベスト級。好きな人
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

4.4

「人生は解き明かせぬ謎である」

だいぶ前に鑑賞。

意味が分からないことばかりだけどそれ自体に「人生には意味なんて無い」という意味があるような映画。でもリンチ映画同様語り口が特殊なだけでシンプルな話
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ロケットマン(2019年製作の映画)

4.3

「ハグして」

思い返せば思い返す程好きだと思える映画。フレッチャー監督がブライアンシンガーに代わってまとめ上げた『ボヘミアンラプソディ』より好き。

『シング』でエルトンジョンの"I'm still
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トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

「内なる声を聞け」

おもちゃであるウッディはおもちゃであることに縛られている。ゴミから産まれたフォーキーは自分はゴミだと思い、何度もゴミ箱に入ろうとする。本作はそのような決め付けを取り払おうとする。
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アラジン(2019年製作の映画)

4.0

「3つの願いを」

久しぶりのミュージカルでとても楽しかった。特に洞窟でのジーニーの初舞台のドラッギーな表現は最高。

ラストは原作と変えて、自由=人間、つまり人間どこからでもやり直せるんだよみたいな
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ライオン・キング(2019年製作の映画)

3.2

「思い出せ、お前が何であるか」

オリジナルはちゃんと観たことない状態での観賞。

王国へ帰還した彼だが、結局自分は王族の血統だから王であるという理由のみで王への自覚をするようにみえる。(スカーの陰謀
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彼女がその名を知らない鳥たち(2017年製作の映画)

4.1

「とわ子との全てのことが夢のようやった」

白石和彌はかなりベタに泣かせてくる人なんだなと思った。ラストの回想は過剰な気がする。中盤までの抑制の効いたミスリードが良かっただけにそこでの説明過多が気にな
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凪待ち(2019年製作の映画)

4.1

「ダメなんだよ俺は、死んだほうがいいんだよ」

今石巻にいるので感想を。
石巻を舞台に、人間の再生を震災復興と重ねて描いた物語。巨体故の生きづらさを体現するような香取慎吾の絶妙な佇まいと、決して悪い人
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台北ストーリー(1985年製作の映画)

4.0

「結婚は万能薬じゃない」

初エドワード・ヤン映画。

"過去"に生きる男と"未来"に生きたい女のすれ違い。つまり両者ともに"今"を生きることができなくなってしまっている。バイクで駆け抜けるネオンに照
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シークレット・サンシャイン(2007年製作の映画)

4.3

「神を信じれば、見えないものが見えてくる」

イ・チャンドン2本立ての2本目。

小休憩後、オアシスを引きずったまま鑑賞したのでこの作品に集中するまで時間がかかった。映画は2本続けて観るもんじゃないわ
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オアシス(2002年製作の映画)

4.5

「父なる神よ、哀れな子羊を救いたまえ」

早稲田松竹でイ・チャンドン2本立て。

本作の登場人物は皆多面的。完全な悪や善で描かれる人は1人もいなく、様々な面を持ち合わせた人間がそこに生活している。本作
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フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)

3.5

「綿毛が舞えば冬の終わりだ」

大学図書館にてレーザーディスクなるもので初鑑賞。デカ過ぎて笑った。画質悪過ぎたのと寝不足であまり集中できなかった。

フェリーニが忘れることのできなかった少年時代の記憶
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(1954年製作の映画)

4.6

「この世にあるものは何かの役に立つんだ」

昨日観た「サテリコン」に続きフェリーニ作品鑑賞。完全に観る順番間違えた。

海から始まり、海を経て、海で終わる極上の人間ドラマ。人間とはどうしようもなくて同
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エクソシスト/ディレクターズ・カット版(2000年製作の映画)

3.6

「悪魔払いには最高の日だ」

ドキンちゃん作品初鑑賞。

本作の登場人物は皆心に闇や傷を抱えているが、唯一カラス神父だけ信仰心を取り戻すという大きな変化があるものの、他は特に描きこまれていない。終盤ま
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新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年製作の映画)

4.5

「気持ち悪い」

他者と自分の間には絶対に越境できない壁がある。シンジはそんな完全に理解することのできない人間との関係から自分を遠ざけようとしている。ハリネズミのジレンマという言葉がアニメシリーズで出
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ホットギミック ガールミーツボーイ(2019年製作の映画)

4.3

「私の身体は私のものだ」

テレビ番組のインタビューでの山戸結希監督の「生きるのが地獄な女の子たちのために撮った」という言葉通り、人のためではなく、もっと自分のために生きるということを全力で肯定する映
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言の葉の庭(2013年製作の映画)

3.8

「あの場所であなたに救われてたの」

2人の"セカイ"が世界と地続きであったとしてもそれを受け入れた上で"セカイ"と世界が中和した別の「せかい」(書き方が分からない、、)を生きて行こうと決意する話。
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天気の子(2019年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

「僕たちは大丈夫だ」

グランドシネマサンシャインの特大レーザーIMAXで鑑賞。

「君の名は」は面白かったけど好きじゃない映画で本作はつまらなかったけど嫌いじゃない映画。

インタビューでの監督の「
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ストレイト・ストーリー(1999年製作の映画)

4.4

「口争いの原因が何であれどうでもいい。星を眺めたい。かつてのわしらのように」

2019年暫定ベスト「運び屋」のように大半がおじいちゃんが車を運転する場面で構成された映画。でも本作のおじいちゃんは目が
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麦秋(1951年製作の映画)

4.1

「みんな段々遠くなっちゃうのよね」

東京物語のように家族が分離する前の話。

単純化すると、笠智衆、東山千栄子の演じる夫妻にかなり寄り添った話だった東京物語に対して、その対象が独身の紀子になっている
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東京物語(1953年製作の映画)

4.7

「やっぱりあんたはええ人じゃよ、正直で」

オールタイムベスト級に好きかもしれない。

前に観た「晩春」同様に、家の中などほとんどローアングルの固定カメラで撮られており、同じ構図が何度も反復される。つ
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北京の日曜日(1956年製作の映画)

4.2

「中国の日曜日は世界の日曜日だ」

久々の早稲田松竹。
交差点の真ん中で交通整理をする人。自転車で子供達を乗せた荷台を引く人。道端で剣舞をする人。色彩の反乱。
かつて絵本の中で見た魅惑の国、中国を実際
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X-MEN:ダーク・フェニックス(2019年製作の映画)

4.1

「でも気分はいい」

xmen対イムホテップ軍団。
それまでの21作品という長大な物語の一応の一区切りである"エンドゲーム"はまさに大団円という言葉の相応しい作品だった。一方で本作はmcu以前の200
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蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

4.3

ほとんど声が聞き取れなかったのでストーリーをwikiで確認しながら鑑賞。
黒い砂で覆われた富士山2号目に作られた蜘蛛巣城の巨大なセットが霧の中から薄っすらと浮かび上がるショットだけでもう満足。本作の象
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スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

「人々は信じるものを必要としている、今の時代」

ポスト・トュルース時代のヒーロー映画。良い意味で当初の期待を悉く裏切られ、サプライズとユーモアの連続に最後まで楽しんだ。

インタビューで「僕はスーパ
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イメージの本(2018年製作の映画)

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「何も望みは叶わなかったが希望は生き続けた」

下手にスコア付けられない、、、

多分海辺のシーン以外は世界の歴史に存在する様々な映像のコラージュで構成された映画。文脈は一切なく、無作為に選ばれたよう
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ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)

4.3

「俺は天国と地獄は一体なんだと信じている」

ラースフォントリアーの自虐と自己肯定?の映画。
2時間半近くあるけど体感は1時間半くらい。笑っちゃダメだけど笑っちゃう感じは「凶悪」のジジぶぅのシーンみた
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ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カット(1969年製作の映画)

4.1

"let's go"
"why not"

初サムペキンパー。

西部劇の終焉の時代に善悪の二項対立を壊し、悪とその上の悪の対立を描いた作品(って本に書いてあった)。

冒頭の蟻に食われる蠍をまるごと
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椿三十郎(1962年製作の映画)

4.4

「本当に良い刀は鞘に納まっているものです」

用心棒より好き。敵はまたしても仲代達矢だがおでこが広く別人のよう。たまに阿部寛に見えた。

用心棒同様、三十郎がとんちで困難を乗り切るのだが、昔の人は皆素
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日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)

4.4

「かくして日本の一番長い日が始まった」

久しぶりの午前10時の映画祭にて岡本喜八作品初鑑賞。

仲代達矢がナレーションで上記した台詞を言った後にタイトルコール。そこから玉音放送に至る8月14日12時
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旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)

4.3

「話し合わなければ、知り合うことはない」

テレビ番組のリポーターとしてウズベキスタンに訪れた葉子の世界が、旅の終わりと共に、始まるというタイトル通りの話。劇的な事件が起こるような話ではないけど良い映
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ウィーアーリトルゾンビーズ(2019年製作の映画)

4.4

「エモいとか古っ、ダッサ」

舞台挨拶付きで鑑賞。

「IT」のルーザーズクラブや「ちはやふる」の瑞沢高校かるた部の皆さんみたいに「コイツらにまた会いたい!」と思わせてくれるLITTLE ZOMBIE
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さよならくちびる(2019年製作の映画)

4.3

「あんたに同情されると、惨めになる」

潮田明彦監督の過去作「どろろ」がなぜか小学校時代の自分のオールタイムベスト級に好きな作品。「どろろ」では百鬼丸の刀がほしいどろろと彼女(彼?)を肉体集めに利用す
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ソナチネ(1993年製作の映画)

4.4

「あんまり死ぬのが怖いと死にたくなっちゃうんだよ」

北野武の暴力三部作の最後。「その男、凶暴につき」と「3-4×10月」のどちらとも地続きな雰囲気のする作品だった。

本作は前半の東京パートと中盤か
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3-4x10月(1990年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

「井口だろ?」

河原の公衆トイレの中のように真っ暗で生きがいのない人生を歩んでいた男が好きな女性と暴力との出会いを通じて自分の人生を生きる=死ぬことを決意するまでの話。

ラストに映されるトイレの中
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