久遠さんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

楽園(2019年製作の映画)

3.7

瀬々敬久×吉田修一、予測より寂寞たる作品。集団の悪意は直近の事件を想起させ、その人々によって産み落とされた悲劇は村社会の排他性を感じさせる。
役者陣の演技は、今年に鑑賞した中でもベスト級。主演、助演賞
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

4.5

色彩設計と脚本が秀逸。説明台詞や家族映画に有りがちなエモーショナルすぎる表現が無く好感。
「誰も知らない」の影響下にある作品だが、隠れホームレス問題や個人主義の功罪がテーマに組み込まれていて新鮮だった
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愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)

-

エログロは抑えめに、虚実交えたスマートな仕上がり。劇画調の芝居もフィットしていた。
若手女優陣の魅力を、それぞれ違う形で引き出す演出は流石の一言。
引用の仕方が監督らしいなと思った。
生きててくれて有
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ジョーカー(2019年製作の映画)

3.8

思ったよりも普遍的で直線な物語。
小難しいことは現時点で語り尽くされているので、個人的な感想を言えば説明的な描写や台詞を除けば纏まった映画だなと。
過去の名作を引用しつつも、同時代性に富んだ社会派作品
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地獄少女(2019年製作の映画)

-

完全披露試写会にて。
原作未読だけど、アニメ版を観たくなった。どのエピソードを抽出したのか気になるので。

PG12とは思えないほど、しっかりとしたゴア描写に驚く。(あと、お色気シーン)
白石晃士監督
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時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

5.0

先程、劇場にて観賞。家じゃ味わえない快感があったのは置いといても、オールタイムベスト級に好き。管理社会の下で暴虐の限りを尽くす若者が変容し、そして取り戻していく様に興奮する。暴力に対する批評性もバッチ>>続きを読む

寝ても覚めても(2018年製作の映画)

5.0

2回目。
大幅に上方修正、というかオールタイムベスト10入りする程に好きになった。

OP、EDシークエンスが対照的な様で不思議と重なる。何方も、超絶技巧なショットで映画的快楽に酔いしれた。
そして、
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21世紀の女の子(2018年製作の映画)

-

現代映画に必要な要素が詰まった宝箱のような作品集。
少し長く感じたが、最後の「離ればなれの花々へ」→
「LOW hAPPYENDROLL -少女のままで死ぬ-」で陶然となった。
枝優花監督の「恋愛乾
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ひとよ(2019年製作の映画)

3.1

試写会にて。
各世代の演技巧者で構成された家族再生物語。不思議と惹きつけられるのは脚本の妙。
随所に気の利いた演出が施されているが、劇的な展開を期待すると肩透かしを食らうかも。
ヤンキーな松岡茉優さん
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惡の華(2019年製作の映画)

4.0

性的嗜好に激しく刺さる純度100%の青春映画。
脚本と演出に粗はあるものの、玉城ティナ様の圧倒的嗜虐性が堪らんかった。羨ましすぎる。最高。
構成が彼らの抱える閉塞感を物語的に削いでいた気もするけど、終
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女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.6

芸術的観点では、2019年断トツNO.1。
閉じた空間で蠢く純な愛憎。空っぽな権力を奪い合う美しき二人が、滑稽で愛らしい。
ラストシークエンスを含め、台詞の無い描写が自分好み過ぎて至福の時間だった。
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アイネクライネナハトムジーク(2019年製作の映画)

3.7

劇的じゃないけれど、積み重ねてきた道を肯定してくれる優しい映画。
伊坂ギミックと今泉監督作品らしい心地良い筋運びの調和。ライティングと会話も流石の自然さ。
役者さんの起用も随所に渡り素晴らしい。個人的
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鋼鉄の雨(2017年製作の映画)

4.2

140分の長さを感じさせないノンストップ・ポリティカルサスペンス。
安っぽい場面も少々あるが、良質なアクションと国家間の策謀に血が滾った。
大義が違えど、熱き心で通じ合う二人に涙を禁じ得ない。
虚構と
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人間失格 太宰治と3人の女たち(2019年製作の映画)

-

著しく語彙力を低下させる破茶滅茶映画。没入度で言えば今年ベスト10に入る。完全なる偏愛なので、参考には成りませぬ。

とは言え、撮影と脚本は素晴らしく、豪華キャストも自然な形で物語に嵌っていた。兎に角
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チワワちゃん(2018年製作の映画)

3.6

飽くまで等身大の若者を描いた青春群像劇。酒、煙草、セックスの三拍子。ドラックが含まれないのは、同時代性を感じる。吉田志織と玉城ティナのキスシーンが最も官能的。
象徴としてのチワワちゃんを中心に、各登場
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左様なら(2018年製作の映画)

3.7

誰しも居た事がある教室。紋切り型に見えそうな人物造形も、昨今の青春群像劇と対を成す美点に思える。

筋運びも欠点は特になく、自然と自分の内側に入ってきた。台詞を発さない時も、表情や目線で物語る姿がリア
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バクマン。(2015年製作の映画)

4.4

原作における美点の抽出と大根仁監督の映像技術がフィットした傑作。

初見では感じなかったスポ根要素に心熱くなった。原作漫画の恋愛描写、大根仁節を排除したことが個人的には、大きく作品的価値を高めたと思う
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モテキ(2011年製作の映画)

2.5

2回目。
長澤まさみ演じる“みゆき”が殺人的に可愛い。仕草や表情、そして実はピュアな性格。スンバラシイ。

ただ、サブカルの扱い方と大根仁特有のマッチョ/ミソジニーが個人的に嫌い過ぎる。そして、何と言
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あん(2015年製作の映画)

4.2

川のせせらぎ、鳥のさえずり。希林さんの遺した言葉が心に沁みる。自然と調和するナチュラルな会話劇を、役者陣が見事に実現させた。説明台詞を極力、廃したことも好み。
餡と塩のように、混ざり合わない様に見える
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ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)

-

冨手麻妙さんの体当たり演技は良い。
内容はタイトル通りで、企画に乗じて監督は個人的感情を爆発させた(いつものことか?)
鑑賞中は、ずっと狐に化かされたような気分。メタ構造と不自然な台詞の連続に頭痛。
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ストレイヤーズ・クロニクル(2015年製作の映画)

1.4

一流の製作陣と役者が織り成すヘッポコ映画。

悪い所:演出と台詞回しがダサい。やっつけ仕事感。単純に話がおもんない。
良い所:女性陣が魅力的。特に、当時18歳とは思えない色気を纏った高月彩良さん。
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アンフェア the answer(2011年製作の映画)

2.9

小学生の時に、ドラマを観てたなあと思い出し鑑賞。連ドラの後半と同じく、展開と設定が散漫且つ御都合主義。
撮影と美術は、某スリラー映画風で良かった。大森南朋のキャラは、イキリサイコ野郎ではなく、割と知性
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ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)

4.7

一夏の冒険譚、救済と信仰の物語。
暗喩に満ちた世界の穴ぼこを「ペンギン」が埋める。探究心旺盛なアオヤマくんが辿り着く答えに、ある種の信仰を僕は受け取った。
多幸感が溢れる色彩豊かな映像と、予測不可能な
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葛城事件(2016年製作の映画)

4.4

2回目。ブラックな笑いが有るのは前半まで。後半からは、憂いに満ちた展開が続く。
演技派の方ばかりで、余計に辛い。けど面白いんだよね。
過去と現在を行き来する構成も巧みで、ここで何とかなったやろ...と
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LUCY/ルーシー(2014年製作の映画)

1.8

粗筋の通り、ひょんな事から脳が覚醒→最強になっちゃう女性の話。覚醒するまでが面白かった。竜頭蛇尾の極み。
設定がガバガバなのは良いとして、演出とCGがダサ過ぎて目が点になる。
一流のメンバーを揃えても
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怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)

4.1

青春ホラーとブラックコメディを掛け合わせた良作。人間ってクズだね〜とニヤける自分も同じ狢。動物である以上、全人類に残虐性は備わっている。
白眉は、中盤の西瓜ジュースとスクールバスのシーン。中島哲也っぽ
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火口のふたり(2019年製作の映画)

3.8

過激派シネフィルこと、荒井晴彦御大の監督作品を初めて観た。
人間の三大欲求を、二人芝居でユニークに描く。
物語は、食事・睡眠・セックスの繰り返しだけれど、飽きる瞬間が一度も無かった。台詞は独特なようで
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青の帰り道(2018年製作の映画)

2.6

撮影と役者さんの演技は申し分ない。世の不条理を群像劇で描く姿勢は良い。

「お利口」側の若者たちへ降り掛かる“不幸”が、携帯小説風の記号的表現で食傷。もっと言えば、稚拙。
それが、青春譚としての魅力と
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blank13(2017年製作の映画)

3.8

自分と重なる所があって、心揺さぶられた。野球が好きな自分、タバコを吸う自分。見た目だけでは無い。人格も受け継がれるのだ。

いつか訪れる父の葬式で、僕は泣けるだろうか。今は分からない。
それでも、少し
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がっこうぐらし!(2018年製作の映画)

3.3

観終わって、最初に「学園生活って素晴らしいよね」と思った。
物語と自分の思い出が重なって、中々良かったな。
慣れていない役者さん達が、“終わり”に向けて、段々と成長していく姿にホロリとさせられる。
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ミスミソウ(2017年製作の映画)

3.5

胸糞度は限りなく低い。類型的なイジメ描写と緩い雰囲気。
雪原が血に染められるのは、美しい。山田杏奈さんが良いね。カッコ可愛い。
全体的にルックは良いけど、物語の強度がイマイチ。
主要キャラの行動原理と
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溺れるナイフ(2016年製作の映画)

4.7

神を捨てよ、街へ出よう。

監督のテーマに最も沿うのが今作だ。青春、信仰、両思い全てがラストシークエンスに化ける。

度重なるUSとLSが、思春期の情動を映画的に魅せる。後半の祭りシーンは、深刻な出来
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パンとバスと2度目のハツコイ(2017年製作の映画)

4.3

「愛がなんだ」と比べ、平坦で静謐な物語だが、リアルな20代恋愛を精巧な脚本で実現させた。特筆すべきは、人物の造形と対話シーンの自然さ。
映画的飛躍を見せがちな昨今の恋愛映画と違い、地に足を着けた筋運び
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(2017年製作の映画)

3.1

不勉強ながら、河瀨監督作品初鑑賞。音声ガイド作成を生業とする女性が弱視の男性と出逢う話。
絵作りと視覚障碍者の描き方が見事。

対話シーン(特に主演二人)になると、途端に作家的主張が紛れ込む。それ自体
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