緑雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

緑雨

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ダイナマイトどんどん(1978年製作の映画)

4.0

ピッチャーの投球フォームというのは、野球劇画に魅力を生み出す上でもっとも重要なファクターであるのは間違いない。その点で、この映画の邦衛、北大路は素晴らしかった。カッコイイ、そしておもしろい。

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)

4.0

戦場を舞台にしているが戦争など何も描いていない。静謐に美しく描かれるのはただ、哀しみ溢れる人の心。

死と隣り合わせ、そして、人の命運を容易に左右することができるという狂った状況の中、あぶり出されるの
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斬る(1968年製作の映画)

4.8

見事な作劇構成。これだけの数の登場人物にそれぞれ見せ場を与えて、めまぐるしく動いていく情勢をまとめ切っている。

武士の世界に愛想を尽かしてやくざ者に身を転じた男と、百姓生活の貧窮から成り上がろうと侍
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クジラの島の少女(2002年製作の映画)

3.8

物語としてはもうひとひねり、ひと盛り上げ欲しいところだが、映像には圧倒的な力がある。

じいちゃんのキャラクター造形が類型的だし、父ちゃんのエピソードも、もうちょっと有機的に本筋に絡めて欲しかった。
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泥の河(1981年製作の映画)

4.0

見てはいけない、見せてはいけない。まだ見ぬ世界に足を踏み入れたときの、子供たちの新鮮な驚き、大人たちの気まずい思い。交錯する戸惑いを見事に表現した緊張感あふれる空気感が素晴らしい。

イノセンス(2004年製作の映画)

2.5

能書きの洪水。まともに受け止めてると睡魔に襲われる。かと言って耳をふさいで絵だけ見てれば楽しめるかというと・・・緻密さには感嘆させられるものの、前作に比べても斬新さを感じられず、決定的にワクワクしない>>続きを読む

宇宙戦争(2005年製作の映画)

3.8

「パニック」をここまで生々しく描いたパニック映画を他に知らない。

状況が理解できないまま恐怖に巻き込まれる。だからこそ人はパニックに陥る。考える暇も与えられず一気に恐怖の渦中に放り込まれる怒涛の展開
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スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(2005年製作の映画)

3.8

予定調和どころではなく、どんな帰結が待っているのか鑑賞者全員が分かっている。その予想と期待を何一つ裏切らず丁寧になぞっていくだけであるのにも関わらず、時を経てメヴィウスの環が一つに繋がることで生まれる>>続きを読む

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)

3.0

恐怖演出がやや低俗に感じられる。これより15年前の『ジョーズ』に比べても色褪せている。

自然の摂理に反して、このような世界を造ってしまった人間の愚かさを描く視座も伺われはするのだが、どうも中途半端。
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ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

4.5

ポップな色調で描くナチスドイツの最期。他では観たことがない類稀なる語り口。

アメリカ映画だが、監督タイカ・ワイティティはマオリとユダヤにルーツを持つニュージーランド人。劇中のドイツ人は終始英語を喋る
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アバウト・ア・ボーイ(2002年製作の映画)

3.5

約20年ぶりの再鑑賞。

冒頭からヒュー・グラントの人物設定の非現実性や、シングルマザーに近づこうとする動機の説得力の希薄さに興醒め気味になってしまった。この20年くらいの間に、こういう如何にも作り物
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花とアリス(2004年製作の映画)

3.5

鈴木杏、当時16歳かそこらであんな引き立て役を引き受けて全うしちゃうんだから、役者根性あるな、と。

正直どーでもいいお話なので、睡魔に襲われながら観てたのだが、即席のトゥシューズで舞う蒼井優。その姿
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皇帝ペンギン(2005年製作の映画)

3.0

生きる目的はただ子孫を残すこと。そのシンプルな必死さが感動的。飄々としたコミカルな動きも笑ってよいのやら。ペンギンたちの行動にいちいち人間味?が感じられるのも良かった。

拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)

3.8

ヤマショウの、天皇陛下に対する無邪気で愚直な忠誠心を笑うことは容易いけれど、笑っても何の意味も無い。ただそういう時代だった、というだけのことだ。

ヤマショウと棟さんの強い絆で結ばれた厚い友情には心動
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南の島に雪が降る(1961年製作の映画)

3.8

「芸がある」ことの幸せをこれほどまでに強く感じられる状況は無い。

戦場とは地獄のような場所であり、軍隊とは一切の妥協と息抜きの許されないところだという先入観からしてみると、演芸分隊などというものが成
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ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)

3.0

戦争責任というものを考えるにあたっては日本人にもためになるところが多い。死に際に叫ぶ「ハイル、総統!」は「天皇陛下万歳!」と重なるし、「降伏の辱めを受けるくらいなら自決する」といった言葉もどこかで聞い>>続きを読む

女はみんな生きている(2001年製作の映画)

3.8

同性の立場からすると、こんなダメな男ばかりではないぞと言いたくもなるが、女性監督コリーヌ・セローの鋭い視線を浴びると否定し切れない自分もいる。

その人間観察が的を射ているからこそ、声高にフェミニズム
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ロッカーズ ROCKERS(2003年製作の映画)

3.8

この話がどこまで実話なのかはわからないけど、素直にうらやましい青春だと思わされてしまった時点でこの映画の勝ち。自らの青春を描いて、美化するのでもなく卑下するのでもなく、全然嫌味に感じられないというのは>>続きを読む

少女の髪どめ(2001年製作の映画)

3.5

青年が突如心変わりする理由が自分にはイマイチ伝わってこなかったが、とにかく映像が美しい。静かで暗めの色調をベースに、ところどころでの鮮やかな色遣い。そこに映し出されるイランの自然、街並み、人々の営みが>>続きを読む

めし(1951年製作の映画)

3.8

成瀬らしからぬ何てことないお話。小津映画のような味わい。

島崎雪子演じるトンデモな姪っ子にはイラつかされるが、そんな姪っ子の奔放さをウザったく思っていた三千代が、小林桂樹演じる義弟の一喝を浴びて、自
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黄色いリボン(1949年製作の映画)

3.8

あの耳馴染みのあるメロディは、この映画の主題曲だったんだ〜と今更ながら知識をアップデイトしたのも束の間、暴走する無人馬車をベン・ジョンソンが追いかけて捕まえるシーンの疾走感と迫力に圧倒される。他にも、>>続きを読む

ベニスで恋して(2000年製作の映画)

3.0

平凡な主婦が閉塞した日常を突き破り、新しい人生に歩を踏み出す。ありがちな話だが、無条件に爽快感を感じてしまうのも確か。ヴェネツィアの美しさは出し惜しみ気味だが、単なる観光映画にしてしまわないところは、>>続きを読む

霧の中の風景(1988年製作の映画)

4.0

ギリシャといえば、強い陽射しとコバルトブルーの海に映える白い建物・・・といったイメージしかなかったが。終始どんよりと空を覆った厚い雲、寒空が、幼い姉弟の旅路と相俟って物悲しい。

絵画を観ているかのよ
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シンデレラマン(2005年製作の映画)

3.8

ボクシングシーンは映画史上最高レベルのクオリティ!そしてこれはある意味ポール・ジアマッティの映画だと言ってしまってもいいのではないだろうか。彼の豊かな表現力、絶妙の間で入れる「合いの手」があったからこ>>続きを読む

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)

4.5

お話だけなら何てことないメロドラマなんだけど。無言劇の天才、伊達役者、出会う男を皆虜にしていく美女、悲しき富豪、大悪党…それぞれ非凡で魅力的な登場人物たちの運命が絡み合っていく有様がとても面白い。>>続きを読む

ベッカムに恋して(2002年製作の映画)

3.0

練習や試合のシーンを工夫して巧く撮っている。素人俳優たちのプレーに、カット割りの妙技でスピード感やダイナミックさを生み出して表現しているのには感心。

主役の子も、キーラ・ナイトレイも爽やかで可愛らし
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櫻の園(1990年製作の映画)

3.8

モラトリアムなウダウダ感とウラハラに、この瞬間が二度と来ないことへの自覚も表現されている。丹念できめ細かい演出に感心した。

大事な大事な本番当日だというに、しかも上演中止にならんかとしているというに
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下妻物語(2004年製作の映画)

3.8

孤高の天使たちが見せた、最高の笑顔。

群れることを拒み自分の足でしっかり立っている人間。彼らは群れないことを選択したがゆえに、孤独に耐えなくてはならない。だから彼らは強いのであり、また強くなくてはな
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アパッチ砦(1948年製作の映画)

3.5

砦の牧歌的で家族的な雰囲気が微笑ましい。シャーリー・テンプルが快活で可愛らしく、彼女の魅力で映画が引っ張られていく。後半、消えてしまうのが残念。

で、その牧歌性をぶち壊すのがヘンリー・フォンダの頑迷
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ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)

4.0

バルカンにはたくさんの国境が存在する。そして人々が殺し合ってきた。そのことだけ伝われば十分なんじゃないだろうか。

難解。理解する映画ではなく、感じる映画。

主人公とともに訪れる土地土地はどこも荒れ
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.5

もしイーストウッドが監督・主演でなければ、映画史の波間にあっという間に埋もれてしまいそうな慎ましい小品だが、それでもやはり感動してしまう。押し付けがましさは一切ないのだが、残そう、伝えようという意思を>>続きを読む

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966年製作の映画)

3.8

南北戦争というバックグラウンドを設定したことで前作よりもスケールが大きくなった。イーストウッドのかっこよさも格段に魅力を増している。でも、3時間はやっぱりちょっと長いなぁ。

退屈はしないのだが、中盤
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アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)

4.0

犬たちが、その獣性を顕わにしていくのに喚起されたかのように、日常のモラルをかなぐり捨て欲望のままに振る舞っていく人間たち。他人の本性を覗いたようで、そして自分自身の本性を暴かれたようで、観終わった後な>>続きを読む

ワイルドバンチ(1969年製作の映画)

3.5

俯瞰的なスタンスを貫き通しているとの印象。ロングショットが多用される構図に限った話ではなく、個々の登場人物に観ている側の感情が入り込むことを拒絶したかのような脚本・演出。ワイルドバンチの面々も、追うロ>>続きを読む

死ぬまでにしたい10のこと(2003年製作の映画)

3.0

彼女に共感できるかできないかとか、倫理的にどうだとか、そういったこととは別の次元で、人間たるものの本質というか「業」というか、そういうことを考えさせられる。

しかしやはり一方で、「したいこと」の中に
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夫婦善哉(1955年製作の映画)

3.8

ボンボン上がりのどうしようもないダメ男と、そんなダメ男に惚れて頼ってどこまでもついてってしまうお人好し女。ライスカレー屋のテーブル下で足をツッツキあってイチャつく姿は、元祖バカップルとでも言うべき微笑>>続きを読む