ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 17ページ目

恋のエチュード(1971年製作の映画)

3.7

35mm オリジナル版
これだけ純粋に恋愛感情ばかりに焦点を当てている映画って意外と少ないのではないだろうか。個人的には恋愛のみがテーマになるとイマイチ内容に興味がもてなくなってしまう。特に姉妹間の葛
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暗殺の森(1970年製作の映画)

4.4

とにかくキレッキレのショットの連続で構成されているベルトルッチ&ストラーロの代表作。リアリズムとは程遠い完璧に調和の取れたショットが耽美的。党の建物のだだっ広く寒々しい空間など記憶に残る。初見時の記憶>>続きを読む

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

4.5

@早稲田松竹。時期的にブルーノ・ガンツ追悼上映ということであろうか。久々に再見。
冒頭のシークエンス、時に空中に舞い上がりながら、縦横無尽かつ滑らかにベルリンの街や人々を捉えていくカメラワークが、肉体
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臨死(1989年製作の映画)

3.6

長回しで延々会話を映し出すという、個人的にはワイズマンのあまり得意では無い方のスタイルでの六時間であり、題材も相まって正直キツくはあった。ワイズマンは映像スタイルとしては、人物や動物、機械等の動きをテ>>続きを読む

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

3.7

なるほど薬師丸ひろ子のためのアイドル映画ではあるのだが奇妙な出来だなこれは...
かなり極端な長回しの中で、彼女の素がポロポロ出ているかのような若々しいエネルギーが表現されており、決して上手い演技では
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細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)

3.7

冒頭、若干不気味なクローズアップのカットバックが、発話のタイミングからズラした編集で繰り出され、いきなり奇妙なインパクトを観客に与えるひねくれ具合が素敵。
注射を刺されて「あ痛!」と叫ぶ次女と不気味な
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山椒大夫(1954年製作の映画)

4.0

久々に再見したが、やはり別れのシーンは素晴らしいな。動的なショットの連鎖が作り出すサスペンス。「家族の別れ」という状況を最も視覚的に強調する装置としての小舟と水辺の使用は「雨月物語」と同型。
厨子王の
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驟雨(1956年製作の映画)

3.7

本作はジメジメした暗さも無く、台詞がギチギチに詰められている印象も薄いので、成瀬作品の中でも大分好意的に見られた。犬も可哀想なことにならずに済んで良かった。
でもやっぱり小津、溝口、黒澤と並んで邦画第
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流れる(1956年製作の映画)

3.5

合間合間に様式的に挟まれる路地のショットを除くと、人物のサイズに合わせたカットの中でひっきりなしに人物が喋っていてちょっと窮屈な印象を受けてしまった。
(特に前半は)大したことも起こらず平板な気もして
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.7

「気狂いピエロ」との併映で鑑賞。初見時もこの二本を連続で見たのだが、その際は派手な「気狂いピエロ」に対して地味で退屈に思われたが、見返してみるとそこそこ楽しめる。むしろ「気狂いピエロ」が若干退屈に感じ>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.8

久々に再見。アルファベットが順番に一文字ずつ現れるクレジットのアイデアがお洒落。
初見の際は、破綻したストーリー、美術、カメラワーク、編集、メタ演出等々の構成要素について、こんな映画もありなのかという
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めし(1951年製作の映画)

3.6

35mm
どうも成瀬の映画はあまり得意ではないかもしれないな。出来事とそれに伴う登場人物の心理の変化がひっきりなしに詰め込まれていて窮屈な印象を感じてしまう。映像もそれらの情報を効率的に伝達することに
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銀座化粧(1951年製作の映画)

3.6

成瀬の作品は、個人的には印象に残るショットや明確な個性的なスタイルはあまり無い印象でちょっと薄味に思えてしまう。
過去の出来事や心情の変化をはっきり台詞で説明する描写や、映画に余白が無く、常にぎっちり
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ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.6

予告編を見た段階で好きな作品であることは確定していたが、期待にきっちり応えてくれる傑作で安心した。ネトフリで見ないで劇場公開まで待って正解だったな。おそらく東京近郊では(日本でも?)一番良い環境で本作>>続きを読む

浮草(1959年製作の映画)

4.4

4k復元版
もしかしたら小津はカラーの方が好きなのかもしれない。モノクロの作品以上に端整な画作りが光っているように思われてファーストカットからハッとしてしまったし、評判通り赤の映え具合は素晴らしい。
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(1959年製作の映画)

3.9

初めに語り手が観客に向かって演説するという演出は時折見られるが、そのままカットを割らずに物語に入っていくのはインパクトがあるな。冒頭、語り手は全てが終わった後の視点で話しているにも関わらず、物語が終わ>>続きを読む

偉大なるアンバーソン家の人々(1942年製作の映画)

3.7

「まるで『市民ケーン』を毛嫌いした別の映画作家が謙虚さの規範を示してみせたような作品」というトリュフォーの批評通り、前作の喧騒はなく、陰影豊かな長回し主体で静かなトーンで語られる。三つの階層をワンカッ>>続きを読む

ロボコップ ディレクターズ・カット版(1987年製作の映画)

4.5

ディレクターズカット・4K版
娯楽映画はテンポが命だと思っているのだが、本作は緩急を付けつつ一切弛緩させない素晴らしい仕上がりになっている。
鬱陶しい説名台詞ではなく、銃をくるくると回す所作とそれを見
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フェラーリの鷹(1976年製作の映画)

3.5

正直車に乗っていないシーンはダルいな。100分しかないのに結構長く感じる。潜入の過程とかこんなに丁寧にやる必要のある題材じゃないだろと思ってしまう。もっとバッサリ省略してほしかった。車載カメラでの座席>>続きを読む

ザ・ドライバー(1978年製作の映画)

4.2

冒頭のカーチェイスから、人通りが少なく青みがかった冷たい印象の夜景と眉一つ動かさない主人公の逃がし屋の描写に良いハードボイルドを感じる。暗闇でライトを落として息を潜める戦略も含め、レフン「ドライヴ」に>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

5.0

本作と「ミツバチのささやき」に衝撃を受けたせいで、大学生活は映画館の暗闇で座っていたら終わってしまったのだが、久々に見てもやはり尋常ではない傑作。
オープニングの早坂文雄の音楽から既に作品の圧倒的な風
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ロシアン・エレジー(1993年製作の映画)

2.5

35mm
帝政ロシア時代の静止画の連続のパートは流石に退屈過ぎてかなりウトウトしてしまい、ソクーロフ先生勘弁してくださいという気分になってしまった。観客の方とか見ちゃったよ。流石にみんなソワソワしてい
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ファザー、サン(2003年製作の映画)

3.6

35mm
ソクーロフにしてはカット数が多く、結構切り返し(テンポが速い)も用いられている。
劇中の「ここは過去みたいだ」という台詞が表しているように、セピア調に整えられた町並みがノスタルジックな印象を
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マザー、サン(1997年製作の映画)

3.7

35mm
編集のタイミング、役者の動きと会話のリズム、カメラワーク等々の構成要素全てが一体となってゆったりとした重厚なテンポを醸し出す。外界との接触が感じられない描写や、薄暗くセピア調に脱色され、奇妙
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天使の入江(1963年製作の映画)

3.6

デジタル・リマスター版
評判通りオープニングのトラックバックと音楽は爽快感があって良いな。このオープニングのイメージ通り全編軽快なテンポで突き進んでいく。サクサクした編集と軽やかなやり取り。
逆に言う
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エヴァの匂い(1962年製作の映画)

3.5

恵比寿ガーデンシネマで「エヴァの匂い」「天使の入江」を見たが、時期的にミシェル・ルグラン追悼上映になってしまったな。
作品としてはヌーヴェルヴァーグ以降のよくある雰囲気オシャレ映画という感じでそれ以上
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恐怖への旅(1943年製作の映画)

3.5

69分と短い上映時間に種類の少ないセットとB級感満載の作品。画変わりさせるために一生懸命乏しいセットを歩き回るのが涙ぐましい。ヒロインもあまりヒロインっぽい顔ではない。
いちいちダラダラとしたどうでも
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市民ケーン(1941年製作の映画)

4.4

再見 シネマヴェーラ渋谷 2019/2/28 4.6→4.4
ウェルズは20代でよくこの貫禄を出せるな...死に際の老人役も全く違和感がない。
様々な時系列に移動しながらケーンの人生を少しずつ浮かび上
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第三の男(1949年製作の映画)

4.5

再見 シネマヴェーラ渋谷 2019/2/27 4.9→4.5
初見時は完璧な傑作だと感心したものだが、久しぶりに見るとそこまでには思わなくなっていた。勿論傑作であることに変わりはないが。他にもノワール
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マクベス(1948年製作の映画)

3.4

なるほどマクベスのヒロインってファム・ファタールなんだな。豪勢な印象の「オセロ」と比べるとかなりB級感がある。セットの数の乏しさを誤魔化す闇と煙。どうしても同じ場所でちょこちょこ動き回って延々と喋って>>続きを読む

オーソン・ウェルズの オセロ(1952年製作の映画)

4.8

冒頭、セリフもなくサイレント映画のように重々しく強烈なショットを積み重ねていくシーンから「やはりウェルズは信頼できる」と思わせてくれる。
全編に渡り光と闇のコントラストがハッキリとした強いショットが、
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デスペラード(1995年製作の映画)

3.9

極上音響上映
これは愛すべきアホ映画。「タクシードライバー」を想起させるスリーブガン、「子連れ狼」オマージュを感じるカラクリギターケースが素敵。ロケットランチャーを発射する姿勢が妙に印象に残る。
アク
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霊長類(1974年製作の映画)

3.8

やはり霊長類研究所という題材自体が強い。オランウータンの射精する瞬間なんて中々見る機会もないし、それだけで楽しい。普通に筒状の物体でこすって精液を採取したりもするんだな。
サルの入った台車付きケースが
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すべてが狂ってる(1960年製作の映画)

3.7

スイスイ動き回るカメラワーク、妙な編集、ジャズ調でモダンな劇伴に無軌道な若者のエネルギーが生々しく捉えられた画面と日本版ヌーヴェルヴァーグの名に相応しい作品。
開幕と同時に観客に銃撃、爆撃を食らわせる
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激怒(1936年製作の映画)

3.8

理髪師の語る人間の心の中の抗い難い衝動というテーマや、群衆心理の描写は「M」と共通したものがある。黒人の使用人の歌にサラッと人種問題も混ぜられていたりする。
主演の二人は流石の好演。「死人に痛みはない
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ルシファー・ライジング(1972年製作の映画)

3.6

固定カメラ長回しによって、中々おどろおどろしい美しさがある情景描写から始まったので「おっ?」と思ったが、すぐいつものケネス・アンガーに戻ってしまった。結局マジック・ランタン・サイクルの中に好きな作品は>>続きを読む