映画漬廃人伊波興一さんの映画レビュー・感想・評価 - 18ページ目

映画漬廃人伊波興一

映画漬廃人伊波興一

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ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)

4.8

誰も思いつかない事をやってみせるのが独創的とは限らないさ。誰もが当たり前と思っていることを平然とやってみせるのもまた独創的なんだぜ。タランティーノはそう呟きながらあの不気味な笑みを浮かべているようです>>続きを読む

家路(2001年製作の映画)

4.6

この映画で描かれる「老いの狼狽」は「若気の至り」に対して優位に立つ残酷さに満ちております。   マノエル・デ・オリヴェイラ「家路」

定年や引退と無縁の仕事を続けてきた私自身、この映画のミッシェル・ピ
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CURE キュア(1997年製作の映画)

5.0

隠喩的とも見まがうような黒沢的な廃墟。いったいここは日本のどこなのか黒沢清「CURE キュア」

思えば「ドレミファ娘の血は騒ぐ」から最新作「散歩する侵略者」まで黒沢清の作品にはどれだけの多くの廃墟が
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美女と野獣(2017年製作の映画)

4.6

思い切りのよさとは限りなく美しい。ビル・コンドンは極めて聡明な試みを私たちに示してくれます ビル・コンドン「美女と野獣」

ジャン・コクトーによって映像化された以来、どこまでも肥大化していくような消費
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ダンケルク(2017年製作の映画)

1.7

私の中に一本引かれそうな神経過敏な境界線。クリストファー・ノーラン「ダンケルク」

昨年、この作品を「観た!」と仰る、仕事上お付き合いさせていただいている多くの方々がお話を聞かせてくれました。
ある方
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エイリアン:コヴェナント(2017年製作の映画)

2.1

愛娘を手放したくない父の如し リドリー・スコット「エイリアン:コヴェナント」

1作目はエイリアンから逃げる。2作目はエイリアンと闘う。3作目はエイリアンから愛される。勝手な私の図式です。ちなみに4作
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ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)

5.0

そこには白亜の歴史的建造物を浮き上がらせるような澄みきった海など存在せず、ただ世界とのっぴきならぬ関係だけが存在する。 アンゲロプロス「ユリシーズの瞳」

個性的な作品にはその世界だけが持ちうる毒性と
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がんばっていきまっしょい(1998年製作の映画)

4.7

90年代日本映画「ウェルメイド」の臨界点として今一度、蘇らせたくなります 磯村一路「がんばっていきまっしょい」

思えば90年代の日本映画の何と豊かな事だったか。
阪本順治、北野武が登場しただけでなく
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天国は待ってくれる(1943年製作の映画)

4.5

観たぞ!ここでまたひとつS県在住の年上の友人からの冷やかしの種をつぶすことが出来た! エルンスト・ルビッチ「天国は待ってくれる」

系譜を改めて見渡せばルビッチがその死の数年前の本作がいささかの冷笑さ
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少女香雪(シャンシュエ)(1989年製作の映画)

4.5

このとき映画館にいた私を含めた観客たちは映画の中の「汽車の到着」を僧院に群がる修道僧のような厳粛な気持で息を吞んで待っていたに違いないのです。 ワオ・ㇵオウェイ「少女香雪(シャンシュエ)」

伸びてい
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狂った果実(1956年製作の映画)

3.5

少しニンマリ 中平康『狂った果実』‘

劇中セリフにて


長門「石原だよ」
石原「俺は長門だ」

本筋とは関係ない箇所ですがこんなサービスシーンに少しニンマリ。

いかにも戦後モダン派中平康監督の
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(1997年製作の映画)

4.9

(家族)という得体のしれない被写体にカメラを向けることそのもの危険。その一瞬ごとに怯えながら撮られたような映画   蔡明亮「河」

映画はここまで残酷になれるものか。

イメージで綴られようもない家族
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

5.0

スペインが舞台でありながらフラメンコとジプシーとも無縁。人民戦線の敗戦地の象徴という記号さえも拒否してみせた只ひたすらに詩情あふれる百本以上分と対価以上の映画として「ミツバチのささやき」を語らせていた>>続きを読む

カミュなんて知らない(2005年製作の映画)

4.3

約10年周期で記憶の殻を唐突に突き破り改めてその異様な存在で私たちを狼狽させてくれます。
柳町光男『カミュなんて知らない』

やはり日本映画は面白い!
こんな作品が脈打っているのですから。
しかもそれ
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永遠と一日(1998年製作の映画)

4.5

言葉をひたすら買い続けた者の最後の旅路。それは観ている私たちからひたすら言葉を奪い取っていくようです アンゲロプロス「永遠と一日」

仕事上、高齢者の方々と接する機会が多い私は「孤独死」を結構身近な話
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百年恋歌(2005年製作の映画)

4.3

2018年最初はこの作品に決めておりました。申し分ない白星発進だと言えます 候考賢『百年恋歌』

大晦日から妻の実家で過ごし元旦の初詣を経て鑑賞しました。
(映画は映画館で観るに限る)という映画好
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ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)

3.8

御大は時々こちらが驚くほど「自由化」します。イーストウッド「ジャージーボーイズ」

「ホワイトハンター、ブラックバード」や「真夜中のサバナ」の時のように此方の予期を優しく笑うかのように翻してくれる御大
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県警対組織暴力(1975年製作の映画)

5.0

久しぶりに観たら笠原先生のシナリオで広島弁活字を読みたくなりました  深作欣二「県警対組織暴力」

言わずと知れた深作+笠原+菅原御三家の東映実録路線。
多分3回目あたりの鑑賞でしょうが今回がなぜか一
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226(1989年製作の映画)

2.0

この齢になって観てもやはり映画監督といより大型演出家という印象が拭えません 五社英雄「226」

公開当時、全然食指が動かされず今日まで観ずじまいでした

巨匠と呼ばれる人の作品の中には何故か観るのが
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地獄の英雄(1951年製作の映画)

3.9

異様すぎるアルバカーキと言えば市民から叱られますか? ビリー・ワイルダー「地獄の英雄」

今年は『ブレイキング・バッド』という面白いテレビドラマをnetflixで楽しみました。
舞台はこの作品と同じニ
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さよなら渓谷(2013年製作の映画)

4.2

日本映画の現在形 大森立嗣「さよなら渓谷」

日本に限らず映画には必要とされるのはいかに現在形を模索するか?大森監督にはその模索の跡を感じるから好きです。さすがは麿赤児さんの遺伝子。これからも観続けま
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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

1.8

モルテン・ティルドム「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」

ともすれば冗長になりがちな世界。
よくもここまでサスペンシフルに仕上げたものです。
ウェルメイドな法則をしっかり踏襲しつつ
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シン・シティ 復讐の女神(2014年製作の映画)

2.9

果たして次は? ロバート・ロドリゲス「シン・シティ 復讐の女神」

2017年現在、新作情報は入って来ませんがロドリゲス君、次はどんなカードを出してくるのでしょうか?一度ミュージカルに挑んで欲しい。こ
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ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)

3.0

よくもまあこれだけの個性派が集まったことで・・コーエン兄弟「ビック・リボウスキ」

ジェフブリッジス
ジョングッドマン
スティーブブシェミ
ジュリアンムーア
ジョンタトゥーロ
ベンギャラザ
サムエリ
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先生のつうしんぼ(1977年製作の映画)

4.0

日活は70年代に数々のロマンポルノの傑作を輩出しておりましたが児童映画にも瞠目すべき作品があったのはもう少し取り上げられていいと思います。武田一成「先生のつうしんぼ」

そのジャンルで頂点にたつとも言
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エロ将軍と二十一人の愛妾(1972年製作の映画)

5.0

この作品の投稿を忘れたおりました。東映ポルノが生んだ日本映画のミラクル 鈴木則文「エロ将軍と21人の愛妾」

どちらか忘れましたが20代半ば亀有名画座か大井武蔵館で観ました。

全ての言葉を奪われ帰り
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バナナシュート裁判(1989年製作の映画)

4.2

新人発掘のフィルムフェスティバルのオープニングあたりに上映して21世紀の日本映画世界にもう一度岡本喜八の映画遺伝子を蘇生させる機運を与えるのも悪くないんじゃあないでしょうか? 佐藤闘介「バナナシュート>>続きを読む

トガニ 幼き瞳の告発(2011年製作の映画)

3.1

まあ・・悪役さんご苦労様でした。観ているこちらが逆に私生活を心配になるくらいの皆様の熱演が実際の法律を変えたんじゃないかな?という気さえします ファン・ドンヒョク「トガニ 幼き瞳の告発」

校長先生役
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木靴の樹(1978年製作の映画)

3.5

「祈り」をひたすら感じます。 エルマンノ・オルミ「木靴の樹」

昔、大阪上本町にACTシネマテークという映画館がありましてそこはその月のプログラム作品4本を月末にオールナイトで流すという素晴らしい蛮行
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Seventh Code(2013年製作の映画)

3.4

ロシアに行こうぜ! 黒沢清「セブンスコード」

ディレクターズカンパニーがまだ健在だった頃の実験精神を思い出しました。
どうせならあっちゃん特集として『もらとりあむタマ子』と併映すれば不思議な2時間に
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スウィートホーム(1989年製作の映画)

-

伊丹プロダクションの刑期はまだ終了しておりません          似て非なる黒沢清「スウィートホーム」

伊丹プロがまだあるかどうか知らないけどあるとしたら黒沢清に映画制作費10本分を提供する義務が
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ローリング(2015年製作の映画)

2.9

高いハードルに挑んだもんです! 冨永昌敬「ローリング」

この監督の作品は実は初めて。
ナレーション処理がどうしても最悪の事態を回避する手段に思えてしまう。そこにこの映画の弱さがあるのかも。
実際冒頭
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もらとりあむタマ子(2013年製作の映画)

3.1

タマ子!お前は高校生か? 山下敦弘「もらとりあむタマコ」

あっちゃんは可愛いけど自分がこの父親の立場なら堪えられるかなあ?
そう思わせる山下監督の距離感を振り払う技なのでしょうか?
面白い映画でした
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

2.7

奇妙な夢 アピチャッポン・ウィーラセタクン「ブンミおじさんの森」

タイで初のカンヌパルムドールという快挙。
だけど前世紀末から国際映画祭というのはこのようなアジア映画にはホントに弱いようです。
この
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グッドナイト&グッドラック(2005年製作の映画)

2.3

随分と評価が高いようで ジョージ・クルーニー「グッドナイトグッドラック」

例えばオットープレミンジャーやサミュエルフラーあたりが撮ってたらどうなるか?もっと言えばイーストウッドあたりが撮れば?なんて
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her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

2.3

スパイク・ジョーンズ「her/世界でひとつの彼女」

大の溝口映画好きのワタシは当然メロドラマ好きですし自分好みの女優さんが何人も出てますので少し寛容的になりそうです。
でも説明的展開とご都合的カセに
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