tjrさんの映画レビュー・感想・評価

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落下の解剖学(2023年製作の映画)

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2023年のパルム・ドール、そしてアカデミー賞脚本賞。
それに足るだけの圧巻の法廷劇は一見の価値あり。

普通の法廷劇は、証拠を提示し論理的に判決を下す中で、その事件に関わる人々のパーソナルな部分を観
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トマホーク ガンマンvs食人族(2015年製作の映画)

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メタルバンドとしてプロデビュー、小説も出版、そして作品化されていないが売れた脚本は20本以上、という才人S・クレイグ・ザラーの初監督作。
当時から凄いだのヤバいだのカルト的人気だのと評判は聞いていたが
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キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)

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冒頭、趙が攻め込んでくるも、政の過去話のおかげで1時間何も起きず。
とにかくテンポが悪すぎた。
政が始皇帝として中華を統一するための礎となるシーンなのは理解できるが、紫夏が政を助ける理由付けも弱く、政
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現金に体を張れ(1956年製作の映画)

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キューブリック28歳でのハリウッドデビュー作。

後世に影響を与えまくったことがありありと分かる、まさしくフィルム・ノワールの傑作。
ある場所に金があつまるところを狙ってチームで強盗を行うのは「オーシ
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

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コメディ俳優ジョナ・ヒルの初監督作。
自分で脚本も書いてるという秀才っぷり。

4:3のスタンダードサイズ、16mmフィルムで雰囲気抜群。
じゃあ中身はどうなのかというと、クールなワルに憧れる少年の冒
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

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初めて見たときめちゃくちゃぶっ刺さってたなあ、と思って鑑賞記録見返したら、たった5年前だった…

改めて観ると客観的に鑑賞してる自分がいて、でも妄想の産物であることが露わになるシーンでは当時と変わらず
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モンタナ・ストーリー(2021年製作の映画)

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コゴナダ作品でファンになったヘイリー・ルー・リチャードソンと、「トゥ・レスリー」でファンになったオーウェン・ティーグ共演作。
監督・脚本は「メイジーの瞳」のスコット・マグギーとデヴィッド・シーゲル。
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いつも難しそうな本ばかり読んでる日高君(2022年製作の映画)

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「かがみの孤城」の當間あみ主演。
物語の2/3がナレーションで進むだけに、語りの巧さが光る。

まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

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最高に爽やかな、自分的“好きな邦画”の多くが詰め込まれた傑作。

自らを“普通じゃない”と自認し、そこから抜け出したい大野と、声を大にして普通とは何たるかを語る秋本のやり取りが軽妙で小気味良い。

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To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)

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人間離れした役ばかりのカメレオン俳優の印象が強かったアンドレア・ライズボロー。予想だにしなかったエネルギッシュな演技に圧倒された。

指紋の付いた写真の連続でそれまでの人生をハイライトする潔いオープニ
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生まれゆく日々(2021年製作の映画)

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短編「DEATHDAYS」の製作を追ったドキュメンタリー。
本編が48分なのにドキュメンタリーは50分ある。観て納得したが、このドキュメンタリーを含めて一つの作品だった。

森田剛から長久允監督への1
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DEATH DAYS(2021年製作の映画)

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カウントダウン、そして“おめでとう”から始まる48分の短編。
“おめでとう”に感情乗ってるなあ、と思ったがそれは、何年かは分からないが死ぬ日だけは決まっているというifの世界だから。

「ヒメアノ〜ル
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北北西に進路を取れ(1959年製作の映画)

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アルフレッド・ヒッチコックの傑作なだけあってお手並み拝見と見始めたはいいものの、あまりに面白すぎてぐうの音も出なかった。

不可解な陰謀に巻き込まれた一般人が、飲酒運転の犯罪者、殺人事件の指名手配者、
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ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

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津田健次郎によるナレーションで始まり、圧倒的物量の日露戦争で期待度が爆上がり。
そしてそこからは、キャラクターが登場するたびに再現度の高さに満足度が限界突破しまくる素晴らしい実写化作品だった。

特に
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戦場にかける橋(1957年製作の映画)

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「アラビアのロレンス」のデヴィッド・リーン監督作。
終始作品世界に引き込まれ、155分とは思えなかった。

メンツのために口にしたことを違えることができない日本軍、優れた上官に率いられ統率のとれたイギ
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DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

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リュック・ベッソンと言えば、「レオン」は映画好きの枠を超えた影響を与えた傑作であり、他にも脚本として「96時間」「アルティメット」など名作も様々。
今作はそれらの作品群に並ぶ、もしかすると「レオン」と
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見知らぬ乗客(1951年製作の映画)

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冒頭、2人と足元だけを写したショットからキレッキレ。
明るい色の胡散臭そうな靴を履く足は画面の右から左というマイナスの向きに、装飾の少ない誠実そうな靴を履いた足は画面の左から右というプラスの向きに進む
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君は放課後インソムニア(2023年製作の映画)

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原作未読。
アニメがめちゃくちゃに好きだったので期待と不安が半々だったが、観た後は良いところ7:悪いところ3な印象。

まずキャスティングは抜群に良い。
主演2人は彼らしかいないであろうフィット感。奥
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

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夢のようなキャスティングで、神話のようなストーリー、伝説になるであろう映像と音楽。
もはや映画というより、現代の叙事詩を見ているかのようだった。

既にオールスターキャストだった前作で数々の登場人物が
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ジャッキー ファーストレディ 最後の使命(2016年製作の映画)

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フィルミックな質感と、真横から/真正面からのショットを多用した几帳面な画面。
それと対を為すように歪む音楽が、自分の夫であり大統領であるJFK暗殺からの4日間という混乱をひきたてていた。

この世を去
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JFK(1991年製作の映画)

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これは凄い作品だった。
188分の超大作でありながら、歴史に疎い者でも混乱しない整理された脚本。実際の映像を交えたドキュメントタッチの画作りでミステリとしても成立しているサスペンス感。明確なスタンスの
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幸福なラザロ(2018年製作の映画)

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四隅が丸く質感たっぷりのスーパー16ミリフィルムで撮られた映像は、農村を寓話的に、都会をシニカルに映し出す。
優しく欲が無く働き者のラザロを通して、人の醜さを炙り出す。

領主が小作人を搾取し、小作人
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(2023年製作の映画)

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男しか出てこない超豪華キャストの中、北野武らしい乾いたユーモアとダイレクトなゴア描写が光る。

どの登場人物も振り切ったキャラ付けがなされているが、“人間生まれた時から全て遊び”と言い切る織田信長(加
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

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東映アニメーションの長所でも短所でもある、いい意味で特徴の無い作画。
今作はそのおかげで普遍的なメッセージが際立っているように思えた。
中盤の超絶アクションシーンはエースアニメーターが1人で描いたそう
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異人たち(2023年製作の映画)

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美しい映像と少ない登場人物、自己の存在や居場所を探し求める主人公という、紛れもないアンドリュー・ヘイ作品だった。

傑作「荒野にて」でも感じたが、ブルーとオレンジのライティングがとにかく美しく、独りの
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バレリーナ(2023年製作の映画)

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バレリーナの親友を死に追いやった性犯罪組織に復讐する警護会社勤務の主人公。
「バーニング 劇場版」でデビューを飾ったチョン・ジョンソのミステリアスさがとてつもなく素晴らしい。

退廃的なライティングに
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マジカル・ガール(2014年製作の映画)

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スペインの鬼才、カルロス・ベルムトのデビュー作。
公開当時はとんでもない評判だったのを覚えている。

序盤から几帳面なフレーミングによりピリつく空気感、それをエンディングまで保ち続けた離れ業は天晴れ。
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バッドボーイズ フォー・ライフ(2020年製作の映画)

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「バッドボーイズ」シリーズ、17年ぶりの続編。

今では絶滅危惧種になった、ふんだんな火薬と銃撃戦、強い美女とのロマンス、チームワークと親子の絆、続編匂わせ演出。
ジェリー・ブラッカイマー印に恥じない
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パターソン(2016年製作の映画)

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詩が好きなバスの運転手の、何でもないけど最高に幸せな1週間。
好きで好きで何度も観ては、詩の美しさと日常の愛おしさに多幸感に包まれる。

アラーム無しで目覚めて腕時計で時間を確かめるのも、ベッドを出る
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市子(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「アンメット」で連ドラとは思えない演技合戦を繰り広げる杉咲花と若葉竜也の共演作。
とんでもない作品だと評判が巡り覚悟して観たつもりだったが、画面からのエネルギーに食らってしまった。

市子の壮絶な人生
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フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

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クリストファー・ノーランのデビュー作、まさかとは思ったがめちゃくちゃ面白かった。
デビュー作で、たった70分でここまでサスペンスフルに完成されているとは。
しかも今作は、サラリーマンとして働く傍ら、毎
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ノベンバー(2017年製作の映画)

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ハイコントラストなモノクロ映像がとにかく美しいエストニア映画。
現在小説は本国ではカルト的人気らしい。

ドイツ占領下のエストニアで暮らす貧民たちと、生活に根付いたマジックリアリズムとアニミズム。
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コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)

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ディストピアの必然と言えば“何よりも恐ろしいのは人間である”という事実。
今作は何よりもそこにフォーカスし、人間の愚かさを克明に描いている。

ドラマシリーズだと、大災害の原因や敵対組織の掘り下げ、登
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マイスモールランド(2022年製作の映画)

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フランスや韓国で映画制作を行うなど、名実共に国際的映画監督の是枝裕和が率いる分福が制作に関わる。

洗っても取れない掌の朱、父が家を出た後にするヘアアイロン、なりゆきに任せて自らのルーツをドイツ人とす
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

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出尽くしていたと思っていたワンシチュエーションスリラーの新たな佳作。

お約束通り、出てくるもの全てが伏線であるという収まりの良さは心地いい。

これでもかと不安を煽るカメラワークと老朽化した鉄塔のカ
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

aftersun=日焼け、または日焼けに塗るクリーム。

これが長編デビュー作とは信じられない、シャーロット・ウェルズ監督作。
構成からカメラワーク、編集まで、アーティスティックながら情報が洪水のよう
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