てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

さらば夏の光よ(1976年製作の映画)

4.0

名画座で何度もみている懐かしさ。トップアイドル郷ひろみが鮮やかな躍動を見せた青春映画の佳作だった。すでに頭角を現していた秋吉久美子に引けを取らない存在感、青春のホロ苦さを瑞々しく体現した本物のアイドル>>続きを読む

彼女と彼女の猫 -Everything Flows-(2016年製作の映画)

3.6

新海誠のショートフィルムを原作に、坂本一也監督がロングバージョン(?)へとリライトした短編(?)。猫の視点で見た飼い主の"彼女"の成長。幸福な重なり合う時間の短さと別れが胸に沁みる。私はイヌ派だが愛す>>続きを読む

ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間(1992年製作の映画)

3.7

夢幻世界の迷宮に彷徨い、闇深く引き摺り込まれたローラ・パーマーの最期の七日間を描く。デヴィッド・リンチ監督の脳内を具現化したような抽象的な映像に溢れ、破綻を恐れない難解な作品であるが、そのシュールな甘>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

4.0

この作品は、イーストウッドの最後の西部劇として観た。そして、それまでのアウトロー人生に決着をつける集大成に感じた。齢91、人生最後の境地、日常の平穏を追い求める純粋な感情がひしひしと伝わってくる。アウ>>続きを読む

リバティ・バランスを射った男(1962年製作の映画)

3.8

法の裁きか、銃による秩序か、真っ向から対立する2つの正義。タカ派ジョン・フォード監督が導き出した答えの確固たる信念、これも一つの正義だ。忘れられないシーンがある。酒場の夕食メニュー、巨大なフライパンで>>続きを読む

喜劇 愛妻物語(2020年製作の映画)

3.6

疲れ果てた生活臭をブンブン匂わせる水川あさみのブチギレ演技の何とも言えぬ斬れ味。心ズタボロになるまでの攻撃的な言葉の刃がグサグサ刺さる。売れない脚本家の苦悩、足立紳監督は苦労すれば報われるなどと綺麗事>>続きを読む

真昼の用心棒(1966年製作の映画)

3.6

テレビで西部劇を浴びる程観て最初に覚えた映画。一匹狼の主人公が早撃ちで敵を薙ぎ倒すお約束を覆すシーン。アル中で醜態を曝すダメ兄貴が、弟フランコ・ネロの窮地に、飲んでいた酒瓶を背面越しに放り投げ、撃ち抜>>続きを読む

道化師の夜(1953年製作の映画)

3.3

フェリーニがサーカスを愛と郷愁で捉えれば、ベルイマンはサーカスを貧困と差別の象徴として描く。屈辱と恥辱にまみれながらも、サーカスから離れられない人々の人生が、ベルイマン監督自身の苦悩と重ねた比喩として>>続きを読む

第3逃亡者(1937年製作の映画)

3.6

有名なクライマックスシーン。グランドホテルのワンフロアをゆっくりと移動していくカメラ、俯瞰したまま壁を突き抜け、真っ直ぐに真犯人の元へと進む。ドローン無き時代、大掛かりなクレーンを自在に操り巨大セット>>続きを読む

三文役者(2000年製作の映画)

3.9

破天荒に生きた怪優・殿山泰司の半生を、盟友新藤兼人監督が愛情込めて描いた佳作。殿山泰司がそのまま蘇ったかのような竹中直人の演技は、殿山を家族のように見続けてきた新藤監督ならではの繊細な名演出であった。>>続きを読む

不良少女 魔子(1971年製作の映画)

3.0

日活終焉を飾ったアンカー女優、夏純子。魔子の奔放な危うさを小悪魔な魅力で演じきり、ラスト迄走り抜けた。この作品の後、夏純子はロマンポルノへと方向転換した日活を離れ松竹に移籍する。清純さとセクシーさを併>>続きを読む

雨を告げる漂流団地(2022年製作の映画)

2.3

解体間近のオバケ団地が、ある日突然大海原に漂流する。取り残された子供たち、これは現実か、異空間なのか?団地で暮らしてきた幼馴染との家族のような連帯感と思い出を漂流と結びつける破天荒な設定を、どう物語と>>続きを読む

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

4.2

希望に生きる為の食事が実に美味しそう。炊き立てご飯とイカの塩辛、自家栽培の野菜だけの食事が、何とも言えぬ豊穣さで輝いている。風呂に入れる幸せ、扇風機の涼しさ。過去の闇を語らず、些細な日常の喜びを丁寧に>>続きを読む

007/カジノ・ロワイヤル(1967年製作の映画)

3.5

5人の監督と7人の007、空前のオールスター総出演でメチャクチャにボンドを茶化したギャグパロディ!やりたい放題何でも有りのカオスな笑い。サイケでキッチュ何度観ても意味不明なのだが、次々登場する大御所ゲ>>続きを読む

揺れる大地(1948年製作の映画)

3.7

シチリアの貧しい漁村、貧困から抜け出せない漁業に蔓延る搾取の構図に疑問を投げかける。仲買の仕事を搾取と位置付けるが、仕入れた魚を売り切らねばならぬ仲買の仕事を、ヴィスコンティは安易に否定している訳では>>続きを読む

必殺4 恨みはらします(1987年製作の映画)

4.0

冷酷な悪役を演じた真田広之の禍々しさ。歌舞伎者の異様さが全身から毒々しくほとばしる、その強烈なインパクト。冴え渡る深作欣二監督のバイオレンス美学、枯葉舞う木枯らしの長屋に闘いの時を知らせる2つのコマの>>続きを読む

必殺!III 裏か表か(1986年製作の映画)

4.2

巨悪な闇と仕事人の壮絶な殺し合い、生き残りを賭けた無残な命の奪い合いへと変わっていく不穏で陰惨な空気。竹竿に高々と掲げられた仕事人の首、死神寄り添う死の香り漂う傑作!工藤栄一監督最後の集団抗争時代劇。>>続きを読む

必殺!ブラウン館の怪物たち(1985年製作の映画)

1.7

ハチャメチャに"必殺!"の世界観を破壊した怪作。暗殺者にドタバタコメディを演じさせる無謀な演出なれど、鮎川いずみのコメディリリーフ的な要素が何とか作品を繋ぐ。要らぬパロディと無駄なアトラクション、何で>>続きを読む

必殺仕掛人(1973年製作の映画)

3.3

田宮二郎の梅安が違和感なく良い。女好きの優男風情の表の顔と、孤高の暗殺者の裏の顔。田宮二郎の飄々とした風情が思っていた以上に二面性の性格を持つ藤枝梅安のキャラクター像に合っていた。高橋幸治の浪人左内の>>続きを読む

必殺! THE HISSATSU(1984年製作の映画)

3.0

闇に紛れ、人知れず恨みを晴らす裏稼業。暗殺者にスポットライトを当て、悪人が下す正義の鉄槌に溜飲を下げる独特の世界観。裏アカの住人を救済する仕事人元締めに大御所・山田五十鈴を据える頼もしさ。賑やかしゲス>>続きを読む

三十九夜(1935年製作の映画)

3.8

訳のわからない内に事件に巻き込まれ、警察とスパイ組織から追われる主人公。その逃走劇のスピード感と小気味よいテンポの良さが、狭い列車内の通路を駆け抜けるスリリングなサスペンスシーンを生む。走る自動車内と>>続きを読む

襟裳岬(1975年製作の映画)

3.5

煙草チェリー、森進一ショーの半券、殻付きピーナッツの殻。昭和の時代に数多く製作された歌謡映画の一本。襟裳岬の雪景色、昆布漁の焚き火、カーフェリーの旅。古くさい作品と捨て去るには惜しい、輝いていた時代の>>続きを読む

レオン 完全版(1994年製作の映画)

4.6

オリジナルが擬似父娘愛ならば、完全版はレオンとマチルダの純愛を描いた至上の愛だ。描かれた完全版の2人の関係性の密度の濃さは、孤独を際立たせた距離の近さであり、ロリコンのタブーに果敢に挑戦したリュック・>>続きを読む

オールド・ガード(2020年製作の映画)

3.6

続編有きの設定、謎多く謎がほとんど回収されないまま映画は終わる。不老不死の特殊部隊の暗躍を描く。シャーリーズ・セロン快調、パワフルなアクションの斬れ味鋭く男っぷり(?)の良いカッコ良さ。哀れにも鉄の柩>>続きを読む

満月 MR. MOONLIGHT(1991年製作の映画)

3.6

300年前の武士がタイムスリップして現在の北海道に現れる。そのギャップが引き起こす騒動と武士を受け容れる現代人の寛容さがユニークで、なんともいえぬ温か味を醸し出す。多幸感に包まれた不思議な御伽話、粗探>>続きを読む

異聞猿飛佐助(1965年製作の映画)

2.4

一触即発の冷戦状態の豊臣・徳川陣営に暗躍する間者たちの諜報戦。ドス黒い権力の闇に葬りさられる命の軽さ。講談のヒーロー佐助を一流スパイに仕立てて、戦国時代の大人向け異色時代劇に仕上げるが、理屈っぽく解り>>続きを読む

サイコ(1960年製作の映画)

4.2

ジャネット・リーの開いた瞳孔、回転するカメラ、シャワーの水飛沫、排水口に吸い込まれる鮮血。正面から捉えた鋭利な刃先のクローズアップ、逆回転撮影とショートカットで畳み掛ける恐怖のリズム。推理サスペンスの>>続きを読む

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー(2010年製作の映画)

3.7

ゴダールとトリュフォー"新しい波"の中心にいた2人の出会い、共闘と訣別をヌーヴェル・ヴァーグの誕生と解体に重ね合わせ、膨大な資料とフィルムで映画史の革命的な時代を鮮やかに切り取っている。9月13日ゴダ>>続きを読む

ダンディー少佐(1965年製作の映画)

3.7

ダンディー少佐率いるクセ者揃いの先住民討伐隊。無骨さとしたたかさを併せ持つ北軍少佐ダンディーと南軍捕虜大尉タイリーンの反目を中心に、寄せ集めの討伐隊の亀裂を描く。ペキンパー一家がズラリと顔を揃えた討伐>>続きを読む

ウィンナー・ワルツ/ウィーンからのワルツ(1934年製作の映画)

3.5

ヨハン・シュトラウス"美しき青きドナウ"誕生秘話。野外フェスでの初めての演奏で、観客がヨハンの指揮に感動し自然にダンスを踊りだす会場の一体感が秀逸。この名曲が初めて世に出るきっかけになった事を印象づけ>>続きを読む

浪人街 RONINGAI(1990年製作の映画)

4.0

原田芳雄の男くさい魅力を最大限に引き出す黒木和雄監督との最強タッグ。座頭市シリーズに度々原田をゲストに呼び黒木監督に演出させた勝新太郎との相性の良さ。更に盟友『竜馬暗殺』の石橋蓮司も加わり、耐えに耐え>>続きを読む

CHICAS DAY/2人の秘密(2013年製作の映画)

3.5

素敵な2人の距離感。絶妙な信頼関係をサラリと10分の短編に表現する。さりげない悪戯のような2人の遊びの時間、描かれない日常をあれこれ想像する楽しさ。

LUCY/ルーシー(2014年製作の映画)

3.4

100%覚醒する脳という未知の領域を、リュック・ベッソン監督が果敢に挑戦した異色作。ベッソンの脳内に大友克洋の『アキラ』があったのかは解らないが、起承転結を度外視したルーシーの暴走は鉄雄の精神崩壊を彷>>続きを読む

白ゆき姫殺人事件(2014年製作の映画)

3.0

冴えないOL井上真央、目立ちまくりの菜々緒、軽薄なテレビディレクター綾野剛、白ゆき石鹸殺人事件の犯人捜しで盛り上がる無責任なSNSの雀たち。根も葉もない噂話の拡がりが一人の人間を追い詰めていく姿なき暴>>続きを読む

春婦傳/春婦伝(1965年製作の映画)

3.7

戦争を異なる視点の温度差で対極的に炙り出す鈴木清順監督。野川由美子の生の視点と、川地民夫の死の視点を衝突させ、双方を戦場の渦に呑み込ませていく。戦場の対極を描き、戦争とは何か?の大局を抉り出す。戦争と>>続きを読む

ハンナ(2011年製作の映画)

3.6

外界と遮断された深い森で、殺人兵器として育てられた少女ハンナ。町に出て知識でしか知らなかった人の暮らしに触れ、見るもの全てに衝撃を受ける。感動と戸惑いの心のゆらめきをシアーシャ・ローナンが好演、演技派>>続きを読む