てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

キートンのセブン・チャンス/キートンの栃麺棒(1925年製作の映画)

3.6

キートンの身体を張った体当たりの笑い。テンポの早いアクション、スマートな動きがキートンが必死で一生懸命であればある程、おもしろ可笑しい。花嫁候補の群衆から逃げ惑う全力疾走の姿の面白さ。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

3.0

歴代のスパイダーマン揃い踏み、ヴィランズ大集合と熱狂的ファンには堪らない豪華なキャスティングなのだが、ひねくれ者の私には、3人のスパイダーマンそれぞれが遠慮し合っているように見え、1人の人格を1/3ず>>続きを読む

エクソシスト(1973年製作の映画)

4.3

フリードキン監督特有のフィルムのザラつき感と、寒色を基調とする色彩。悪霊との死闘の凍てつく空間を、吐く息の白さで表現する。作られた虚構にドキュメンタリータッチのカメラが被さり、リーガンの部屋は現実味を>>続きを読む

雨鱒の川(2003年製作の映画)

3.3

雨鱒のいる川、北海道の自然豊かな風景。短い夏の川遊び、モリで雨鱒を突き焚火で焼く少年たち。幻の魚イトウを追う釣り師、川が育む人間の暮らしの豊かな表情。地平線広がるジャガイモ畑、優しかった母を描く少年の>>続きを読む

ア・ホーマンス(1986年製作の映画)

4.0

青臭い映画少年のような松田優作監督作品なのだが、その青臭い自主製作っぽさがたまらなく魅力的だった。優作のオーラを上回る存在感を示した石橋凌驚嘆のデビュー作、ポール牧の不気味な悪役怪演、手塚理美の儚さも>>続きを読む

メリー(1931年製作の映画)

3.2

英語圏用『殺人!』の欧州向けドイツ語版として製作された為か、ヒッチコック監督の長編53本のフィルモグラフィーには入っていない。陪審員制裁判の是非を問う硬派なヒッチコックの正義が見られ、同性愛の香りが漂>>続きを読む

間諜最後の日(1936年製作の映画)

3.7

騙し騙され、味方をも欺く諜報戦。血生臭いスパイ戦の暗躍を覆い隠す、英国紳士のお洒落で小粋なエッセンス。初夜を迎える晩、カーテンを閉めて翌朝の二人の距離で昨晩の情熱をサラリと上品に描くヒッチコックの魔術>>続きを読む

サボタージュ(1936年製作の映画)

3.5

ヒッチコックの洒落たサスペンスを期待した序盤とは裏腹に、暗鬱とした救いのない展開と結末には驚かされた。危機回避や正義もなく、サボタージュの事実だけを冷徹に映像化するヒッチコック監督の異色作。変化球で幻>>続きを読む

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 4K リマスター版(1968年製作の映画)

3.7

ウイルスがじんわりと人類を覆い尽くすような恐怖。死者が生者の肉を喰らい無数にゾンビの数が増殖する。筋肉の落ちた死者のスローな動きだが、壁のように押し寄せる数の論理、囲まれやがて逃げ場所が無くなり飲み込>>続きを読む

萌の朱雀(1997年製作の映画)

4.0

過疎の山村で暮らす家族に寄り添い、一家離散までに至る家族の心の揺らめきを繊細に描く。河瀨直美監督の視点は極めて低く、老齢化が進む村人の暮らしに密着し、生活の一部始終を掬い出すドキュメンタリーのようだっ>>続きを読む

ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)

4.0

華やかな原色に彩られたロシュフォールの街並みと、艶やかな色彩の衣装で躍動するダンス、ジャック・ドゥミ監督のロマンチックな演出、ミシェル・ルグランの流麗な歌曲に夢見心地に酔いしれる。これぞミュージカル!>>続きを読む

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)

3.0

デジャブな悪夢の謎、殺人鬼ガブリエルの正体に辿り着くまでを興味深くみた。正体のオチは過去に何度も映像化されていて、目新しさは無い。殺人鬼が影のように登場して消えるホラー感覚はスリリングだが、ガブリエル>>続きを読む

山羊座のもとに(1949年製作の映画)

3.2

イングリッド・バーグマンが事件の真相を告白するワンシーンワンカットの長回し。一瞬も気を抜けない畳み掛けるセリフの長さ、10分弱の一人芝居に込めた揺れ動く感情の起伏を見事に演じ切ったプロ根性。それなのに>>続きを読む

暗殺者の家(1934年製作の映画)

3.5

終盤の銃撃戦のキレの良い撮影、流れるようなカット割が、暗殺団と警官隊の距離感を絶妙に示していて、人質が逃げ出す動きを的確に捉えている。ヒッチコック監督の展開が早く、暗殺計画の内容も事件の輪郭もよく理解>>続きを読む

グレイマン(2022年製作の映画)

3.4

町を全て破壊するような銃撃戦に爆走カーチェイス。どこが"暗殺者"なんだとツッコミたくなる戦争レベルの市街戦。冷徹な殺人マシンが命を守る側に回った時の頼もしさ。ライアン・ゴズリングが"ジョン・ウィック">>続きを読む

グレートウォール(2016年製作の映画)

2.6

怪物軍と中国軍の戦闘シーンのド派手な空中戦、美術と色彩を立体的に描くチャン・イーモー監督らしさは出ているが、アメリカナイズされたファンタジーに目新しさはなく、過去に使い古されたような平凡な作品だった。>>続きを読む

五人の斥候兵(1938年製作の映画)

3.8

北支事変初期、国策による戦意高揚映画なれど、部隊の衣食住にフォーカスし、仲間たちとの絆を描き、軍隊のヒューマニズム、日本人の精神の崇高さを謳いあげた佳作。敗戦国の戦意高揚映画でなければ見えない正義、皆>>続きを読む

女中ッ子(1955年製作の映画)

3.9

雪夜の駅舎の蒸気機関車、汽笛。温かいうどんとストーブの灯火。懐かしき昭和、東北の雪景色の叙情性。高度成長前夜の世田谷の野原の風景。主従関係の格差を問いながら、その中にある日本人の人情の深さを描きあげる>>続きを読む

MEG ザ・モンスター(2018年製作の映画)

3.5

やっぱりサメはデカくないとね!海洋研究所の外廊ガラスの巨大歯型の不気味さ、クジラを真っ二つにする凶悪さ。古代絶滅種、恐竜MEGのスケールの大きさに尽きる。ジェイソン・ステイサムのキャスティングが絶妙、>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018年製作の映画)

3.4

毎回過酷なアクションに挑戦するトム・クルーズの役者魂には敬服する。飛躍するアクションがどんどん超人的になり過ぎて、ハラハラ感は薄いが、トムの実年齢を考えると奇跡的な凄いアクションに脱帽するしかない。ホ>>続きを読む

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.0

もう戻れない昔の大切な思い出を、時間を逆走しながら遡る。2020東京オリンピック開催、コロナ禍の夢追い人の生きづらさが滲み出るマスク姿、緩やかに過去に戻り顔からマスクが外れ、かけがいのない恋人との時間>>続きを読む

あの胸にもういちど(1968年製作の映画)

3.4

全裸に黒革のライダースーツ、バイクに跨がるマリアンヌ・フェスフルのエロティシズム。マリアンヌとオートバイを官能的に映し撮るカメラの視線。アラン・ドロンは添え物のようで、引き立て役に徹する。バイクの給油>>続きを読む

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

5.0

米ソ冷戦、国家トップリーダー達のエゴと欲にまみれた人間の深き業を、シニカルに笑い飛ばす抜群のセンス。苦笑いを浮かべながら愚かなる滑稽な人間の姿を見下ろしながら観察する。人類滅亡、核の脅威を自虐的に風刺>>続きを読む

怪竜大決戦(1966年製作の映画)

3.6

東映唯一の怪獣映画を、得意の講談調忍者活劇に仕上げた快作。自雷也の大ガマと大蛇丸の怪竜、綱手の大蜘蛛の"三すくみ"の決闘。城は破壊され、ガマが火を噴き、竜は水、蜘蛛は糸を撒き散らす大暴れ。子供の頃ワク>>続きを読む

女囚さそり 第41雑居房(1972年製作の映画)

3.4

「私をハメたね…」「死んでた…」サソリのセリフはコレだけだった?梶芽衣子の眼力で感情の起伏を多弁に語り、原色の照明と前衛的な様式美で劇画の世界を創造する。怪優白石加代子の過剰な迄の怪演、紅葉の赤黄の葉>>続きを読む

⼤⼈は判ってくれない 4Kデジタルリマスター版(1959年製作の映画)

4.1

トリュフォー監督自身も幼少期に感化院に入れられた過去があり、その体験がこの作品に繊細に活かされていて、屈折した少年の心の表情を鮮やかに捉えている傑作でした。護送車の中の少年の涙、大人からの質問にうそぶ>>続きを読む

十一人の侍(1967年製作の映画)

4.0

必殺の森に張り巡らせた罠、待ち構える十一人の暗殺部隊、暗い森に射す陽だまりに響く疾馬の蹄。土砂降りの豪雨、恐怖を凌駕する狂気、殺し合い殺伐のリアリズム、凄惨な集団抗争時代劇のダイナミズム。狙うは将軍の>>続きを読む

ディープ・ブルー2(2018年製作の映画)

1.6

善も悪もサメも中途半端、悪人の悪だくみを水中で聴いて理解しているサメの冷たい目に期待したが、頭の良さそうな狩りはしていない。ピラニアのような子ザメって…(汗)、迫力ないよなー。サメは大きくないと!

キリング・フィールド(1984年製作の映画)

3.8

凄まじいまでの臨場感、実際の戦場に放り込まれたような張り詰めた空気。押し寄せる緊張感と、虐殺現場の絶望。ローランド・ジョフィー監督が再現した戦場の奥行き。カメラはカンボジア内戦に翻弄される一人の男を凝>>続きを読む

アウトロー(1976年製作の映画)

4.6

レオーネとシーゲル、2人の師匠から受け継いだ信念と正義を、イーストウッドが監督として完全開花させた傑作。数あるアメリカ建国200年記念作品の中で、唯一気炎を吐いた快作だった。孤独と復讐に生きる男が見い>>続きを読む

ハロウィン KILLS(2021年製作の映画)

3.0

ハドンフィールドの町民vs.マイケル・マイヤーズの図式。町民の狂気が暴走し、暴動になる地獄絵図。負傷ローリーは病院で見せ場なし、40年前の惨劇の生き残りエピソードも古過ぎて繋がらない。マイケルの不死身>>続きを読む

パワーズ・オブ・テン(1968年製作の映画)

1.0

無限のズームイン・アウト。突き詰めればこの9分の短い時間で宇宙の骨格と人間の構造をクォークの粒子単位まで細かく見る事が出来る。この映像は以前どこかで見た記憶がある。映画ではないので便宜上1.0にするが>>続きを読む

赤ひげ(1965年製作の映画)

5.0

患者の苦しみに寄り添い、自らの無力さを傷みにする若き医師の成長。憔悴し、ヘトヘトになるまで黒澤監督に鍛え上げられた加山雄三のギリギリの演技。若き医師の苦悩を見守る赤ひげの俯瞰の高さ、それを更なる俯瞰で>>続きを読む

パラサイト(1998年製作の映画)

3.5

B級キワモノ好きのロバート・ロドリゲス監督本領発揮のグラインドハウス系SF学園ホラー。クセ者俳優集めて、好きな音楽かけて、大好きなゾンビ映画を楽しみながら作っているワクワク感が伝わってくる。ロドリゲス>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.1

主人公ユリヤの人生を、序章、1〜12章、終章の全14章に大別し、重要な2人の男性との出会い、決断と選択を迫られた12のエピソードを濃密に描く。心の揺れ動く機微のリアルさを細やかに捉えた秀作だった。ユリ>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.7

盗んだ車の中の拳銃、指名手配犯の刹那に生きた最低の人生。商業映画の設定をとりながら、斬新な映画話法を模索するゴダールの実験映画。セバーグとベルモンドの演技と、ゴダールの演出意図の噛み合わなさも計算の上>>続きを読む