トノモトショウさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

ドライビング Miss デイジー(1989年製作の映画)

3.0

気難しいユダヤ人の老婆と黒人ドライバーの友情物語、という非常にアメリカ的な作品だが、無自覚の偏見や差別というのはどんな社会にも有り得るもので、普遍的なテーマを持つ。説明し過ぎず、しかし丁寧に描くことで>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

4.0

似たような設定の映画はいくつかあるが、それらとは根本的にアプローチの仕方が違っていて、単純なコミュニケーションが実は感動的であることを示した唯一無二の作品。劇的な展開があるわけではないものの、人生のち>>続きを読む

殺しの烙印(1967年製作の映画)

3.0

日本映画らしからぬガン・アクションと、フィルム・ノワール調の展開があり、そこに鈴木清順の奇抜な演出が加わることで、あまり類を見ない作品になっている。米を炊くにおいに恍惚となる宍戸錠が可愛い。

夢二(1991年製作の映画)

3.0

三部作の中でも前二作より直接的なアプローチがあり、色彩の美しさもありながらグロテスクなものも同時に映し出していく。物語の筋といい、軽やかなジュリーといい、鈴木清順らしさはあまり感じられない分、わかりや>>続きを読む

陽炎座(1981年製作の映画)

3.0

構図とコマ割りは天才的だが、夢現と生死が混在する男女のドロドロ恋愛劇はどんどん退屈になっていって焦点が絞れない。どこかコメディ調に転ずる部分は松田優作の朴訥な演技を伴ってオフビートな可笑しさがある。

ルクス・エテルナ 永遠の光(2019年製作の映画)

2.0

それぞれの勝手な思惑で混沌が形成されていく、その絶妙なテクスチャーがリアルだし、シャルロットとベアトリスの会話も興味深い。ラスト10分の光の点滅はノエらしい暴力で、混沌の行き着く先のトリップ感を強制的>>続きを読む

スミス都へ行く(1939年製作の映画)

3.0

いわゆる政治とカネ問題やメディアの印象操作をいち早く映画の題材とし、正直な田舎青年が不正を暴くために孤軍奮闘するという脚本が素晴らしい。議場でのジェームズ・スチュワートの神懸かった演技が心に響く。欲を>>続きを読む

バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

2.0

奇抜なアイデアと撮影の面白さはあるが、ネチネチと内省的な物語には感情移入しきれない。それはイニャリトゥ自身が映画作りに錯乱しているからであって、そのパーソナルな懊悩に付き合わされたところで、こちら側に>>続きを読む

映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ(2022年製作の映画)

2.0

TVシリーズを観ていないと内容の半分もわからないくせに、TVシリーズを観ていた層には何も新しい発見のない総集編でしかない。どうせなら謎めいた部分を解き明かしてほしかったし、もっと深掘りできる部分があっ>>続きを読む

エスター ファースト・キル(2022年製作の映画)

2.0

成長したイザベル・ファーマンの続投がエスターの子供らしからぬ不気味さを一層演出しているが、サイコパスが潜入した家庭がたまたまサイコパスで互いに牽制し合うという展開はブッ飛び過ぎていて許容しきれない。

エスター(2009年製作の映画)

3.0

サイコスリラーとしての面白さをホラーっぽい煽りが邪魔する部分が多く、何もないのに何かあるように思わせる恐怖感よりも、エスターという強烈なキャラクターの残忍さや狡猾さの描写に時間を割くべきだった。脚本も>>続きを読む

象は静かに座っている(2018年製作の映画)

3.0

徹底的にフォーカスをメインのキャラクターに絞り、それ以外の人物や風景や事象すら曖昧なものにしていく。そして執拗なまでにとぼとぼと歩く被写体の姿を捉え、この閉塞感からどう抜け出していくのかを模索する。し>>続きを読む

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)

3.0

奇怪なアイデアで作り込まれた世界観と、絶妙なコメディ感のある物語が楽しい。異星の文化のおかしさは、そのまま現実世界のおかしさを反転しているかのようで、意外と深いテーマが隠されている。

コード・アンノウン(2000年製作の映画)

3.0

コミュニケーションの不在というテーマを日常性の中で何気なく描く手腕には感服する。まるで数学の証明のように構成していく脚本は精緻だが、それでもハネケが伝えたいことの全ては観客には多分伝わらないという、メ>>続きを読む

レイクサイド マーダーケース(2004年製作の映画)

2.0

ベテラン勢の確実な演技は楽しめるが、トヨエツが一人だけ浮いているのが気になった。原作の余計な設定を上手く活かしきれず、ミステリーとしての展開に粗が見えるし、結果的によくわからないカットが多くなってしま>>続きを読む

ツイスター(1996年製作の映画)

3.0

大自然の脅威から逃げるのではなく立ち向かうという構造はクレイジーだが同時にロマンもあって、竜巻描写のリアリティも含めて見応えがある。トラウマや恋愛要素もクド過ぎず、物語の焦点をブレさせずに最後まで良い>>続きを読む

ソフィーの選択(1982年製作の映画)

3.0

終盤で語られるソフィーの選択を際立たせるために、奔放なカップルと田舎青年の交流が描かれる。その温度差に違和感を覚えるだけに、余計にホロコーストの描写が残酷だ。メリル・ストリープの圧倒的な演技力が真に迫>>続きを読む

Diner ダイナー(2019年製作の映画)

3.0

豪華なキャストによる奇抜な設定の物語だが、なぜか盛り上がりに欠け、色彩のオシャレさだけが目に付いてしまう。アクションの派手さや血生臭さが映像と合致していないせいか。玉城ティナのメイド姿が眼福。

アラバマ物語(1962年製作の映画)

4.0

ハードな議題の法廷劇の様子と、日常における子供達の視点によって、グレゴリー・ペックの演技の頼もしさが際立つ。精緻な脚本の中に意外な展開もあり、マネシツグミの比喩も寓意が効いている。

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.0

キャラクターの背景描写の少なさや、肝心なものは何も見せない演出にどこか腑に落ちない不確かさを感じたが、結果的にそういう構成にこそ意味があるように思えた。ミソジニーを正面から糾弾しつつ、しかし現実のどう>>続きを読む

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)

2.0

土屋太鳳を不幸な境遇に落とし込みたい、という製作側のモチベーションは伝わってくる。人の親になる覚悟を持つことは難しいが、それが歪んだ愛情へと突き進む理由とするには、あまりに飛躍した終盤の展開に呆れてし>>続きを読む

理由なき反抗(1955年製作の映画)

3.0

精緻な脚本だとは思うが、だからこそ物語としての面白味に欠ける。若者の反抗には理由があって、それが親世代には理解し難い、というギャップは永遠に埋まらない。その若者代表としてのジェームズ・ディーンがあまり>>続きを読む

エルヴィス(2022年製作の映画)

3.0

バズ・ラーマンらしい画面の煩さはあるが、音楽シーンは流石の演出力。オースティン・バトラーによる完璧なエルヴィス像を堪能できるが、駆け足的に彼の半生を追うだけの構成に重厚感はなく、キャラクターとしてのエ>>続きを読む

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3「恩讐の彼方に__」(2019年製作の映画)

2.0

再び世界観の外側で狡噛が傭兵として紛争に巻き込まれる物語だが、別にこういうジャンルが観たくてこの作品を追っているわけではない。ただ狡噛というキャラクターに大きな魅力があるのも事実で、彼をもう一度世界観>>続きを読む

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2「First Guardian」(2019年製作の映画)

3.0

特に思い入れのない須郷が主人公、既に本編からは退場した征陸をフィーチャーした過去話という時点で、どこか蛇足的で華のないエピソードかと思っていたが、意外にも刑事モノとして骨太な物語になっていて、シリーズ>>続きを読む

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」(2019年製作の映画)

2.0

TVシリーズではとことん実利主義でシステムに従順だった霜月が、いわばキャラ変していることに違和感を覚えてしまう。そしてどんどんと綻びが露わになるシステム本体のせいで、世界観設定の不備を提示することとな>>続きを読む

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス(2014年製作の映画)

3.0

TVシリーズの雰囲気は何処へやら、他国の内戦に干渉したゲリラ戦が展開され、もはや別ジャンルのアニメになっている。常守&狡噛のバディが再び見られることの感慨深さはあり、シラットの格闘シーンにも迫力がある>>続きを読む

散り行く花(1919年製作の映画)

2.0

ストーリーや設定の粗雑さはあるが、サイレントならではの音楽との調和があり、鐘・銃声など効果的なSEで物語を印象づける。リリアン・ギッシュの表情の演技も良い。

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)

3.0

実話であることの重要性はあるが、掘り返すだけの意図を汲み取りにくい。白人への憎悪や復讐心が根底にあることを隠すために、キーパーソンとなる役柄にブラピを当てがっているようにも見える。希望を捨てずにいるこ>>続きを読む

プロジェクトV(2020年製作の映画)

3.0

ストーリー自体は盛り上がりに欠けるが、若手俳優がジャッキー的アクションを継承し、それぞれ個性も出しながら活躍するのが単純に面白い。安っぽいCG感の強いカーチェイスなど、身体性を伴わないものは味気なく感>>続きを読む

赤い靴(1948年製作の映画)

3.0

映画ならではのバレエ演出が素晴らしく、テクニカラーの色彩で赤い靴が際立つのも印象的。前後の物語はぼんやりとしていて退屈だが、終盤で提示される「愛か芸術か」という板挟みは表現者が必ずぶつかる議題で、モチ>>続きを読む

ミスト(2007年製作の映画)

3.0

クリーチャー系パニック映画において、主人公サイドの行動こそが常に正しい選択となり、犠牲を伴いながらも最後には勝利する、という先入観を逆手に取られたような物語の残酷さがある。霧という自然現象の恐怖から始>>続きを読む

ヴァイブレータ(2003年製作の映画)

2.0

ゼロ年代初頭の邦画のよくある内的描写から始まる冒頭に嫌な予感はしたが、何気ない会話とセックスしかないロードムービーの世界観に徐々に馴染むことはできたし、余計な感情を入れずにすっきりと別れるラストも腑に>>続きを読む

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

2.0

実際の事件に関わった本人がそのまま演じて再現する、という本気なのか冗談なのかよくわからないアプローチ。確かに彼らは英雄であり、それぞれに物語があって然るべきなのだが、中盤ただただ観光するシーンで時間を>>続きを読む

ピクニックatハンギング・ロック(1975年製作の映画)

3.0

人は未知なるものに恐怖するわけだが、ここまで何も描かれないホラー・ミステリというのも珍しい。ただ聳え立つ岩山の奥に少女達が消えるだけで、その謎に翻弄される周りの人々さえも破滅していく。前半の描写がとに>>続きを読む

追悼のざわめき(1988年製作の映画)

3.0

陰鬱でグロテスクだが、どこか現実と幻想の狭間のような雰囲気がずっと漂っていて、それは心地良さと不快さが同時に進行する世界であり、毒々しさの中に美しさが秘められてもいる。少女の血を啜るシーンは圧倒的だし>>続きを読む