青春真っ只中のディロンと、青春を過ぎたロークの対比を、独特なテンポとモノクロの撮影で懐古的に描いている。いわばシニカルに人生を達観するホッパーの視線だろう。とにかく全員クールで、その姿が堕落であろうと>>続きを読む
知的なイメージのデンゼルだが、序盤から悪辣さの溢れた演技を見せつけられ、その徹底した悪役ぶりが素晴らしい。バディ刑事モノとして新しい切り口はあるが、正義と悪を対比させるにしては、わかりきったストーリー>>続きを読む
阿部サダヲの怪演は素晴らしいが、主人公の終始ボソボソと囁くような下手糞な演技にイラつかされた。ディテールが雑過ぎてコントのように見える瞬間がいくつもあって、せっかくの猟奇的な事件に説得力を持ち得ない。
よくもまあ、こんなにも気色の悪い物語を思い付くものだと関心してしまう。いわゆる「躾」というものを先鋭的に描く上で、ルール設定の奇抜さと断片的なショットのセンスは随一。ブラックコメディとして捉えるにはあ>>続きを読む
割とダラダラと物語が進んでいき、ブランシェット登場のあたりで少し盛り上がりはあるものの、全体的に面白味に欠ける展開。ラストでようやくクーパーの演技力もあって急激に温度が上がっていくが、テーマとなるもの>>続きを読む
くだらないアイデアではあるのだが、これが諷刺として成り立つ現状の日本の政治体制こそコメディなのかもしれない。三谷らしいギャグが散りばめられてはいるが、脚本の精緻さはあまり感じられず、無意味なキャラ設定>>続きを読む
極端に寓話的な物語だが、単にブルジョワジー批判と捉えるよりは、どちらかというと欲望を解放した末に訪れる虚無感を描いているように思える。そういう意味では、訪問者である男は神や悪魔という宗教的な存在なので>>続きを読む
青春時代における恋と死の鮮烈さを、ボーイズ・ラブな関係性によって瑞々しくも痛々しい物語として描いたオゾンの感性は認めるが、どこかチャンネルが合わなかったのか、グッとくるものがあまりなかった。墓の上で踊>>続きを読む
登場人物が多く、それぞれの思惑が複雑に絡まって物語が進むが、俳優陣の印象深い演技によって難解さを感じないまま面白く観られる。実際の開腹手術を使用したシーンはモノクロの映像でマイルドにされているが、そん>>続きを読む
なんでも一人でこなすマクレーンが、唯一息子だけは対等に背中を預けているのが、なかなか熱い。なぜかロシアを舞台にした変テコな物語だが、派手なアクションは充分楽しめるものになっている。
アメリカ全土を巻き込むサイバーテロに対して、身体のタフさだけで相手を追い込むアナクロ刑事の代表的存在のマクレーンを配置したのが面白い。パルクール的アクションも今ドキ感があり、それを知恵と暴力で何とかし>>続きを読む
テロリストに振り回される刑事役にマクレーンというキャラクターは最適で、今作で相棒となるサミュエルの名演技も合わせて、コミカルかつバイオレンスな物語を楽しめる。犯人側のなぞなぞのしょうもなさや、大胆な作>>続きを読む
前作よりスケールが大きくなり、迫力のある爆破シーンなどには爽快感があるが、荒唐無稽な設定も多く現実味がない。また、マクレーン刑事の孤軍奮闘では解決し得ない規模の事件ゆえに、本来の醍醐味が失われているの>>続きを読む
ハリウッド的アクションのド派手さもありながら、各キャラクターの造形や、細かく伏線を張った脚本の巧さがあって、物語そのものの面白さが単なるエンタメの枠組を超えて人々に愛される所以だろう。
ブロマンス的な男同士の友情物語に、これぞガン・アクションの最適解とも言えるジョン・ウーの演出が映える。シンメトリーな構図で銃を向き合わせる姿のタフさ、それに対比するかのように鳩が象徴する悲哀も滲み出て>>続きを読む
孤独は嫌だけど、周りと歩調を合わせないせいで、より孤独に打ちひしがれる女がとにかく面倒臭く、何一つ共感性を持ち得なかった。しかし「緑の光線」という自然現象が彼女にわずかな希望を与えるまでの展開は洒落て>>続きを読む
奇を衒うわけでもないのに個性溢れるクリスチャン・ベールの演技と、脇を固める豪華な俳優陣によって画面の質は保てているが、物語の内容に反した盛り上がりに欠ける演出のせいで、妙に単調で芯のない作品になってい>>続きを読む
横スクロールゲームの雰囲気を過不足なくアニメーション映画の世界に落とし込んでいるのが単純にすごい。アイテムやBGMの細部に至るまでオリジナルへのリスペクトを感じるが、色々と詰め込んだ結果としてストーリ>>続きを読む
クールでスマートゆえに、感情が見えない探偵役にボガートのキャラクターがハマる。物語は次々と展開するが、ミステリの組立としては雑な部分が多く、ストーリーの面白味はあまり感じられない。
ギレンホールのギョロリとした目は序盤から狂気を孕んでいて、段々とソシオパス的行動があらわになっていく演技が素晴らしい。ネタのために事件を演出していくパパラッチが異常なのは当然として、ラストで彼が痛い目>>続きを読む
行定のジジ臭い演出や音楽が岡崎京子的世界観にそぐわず、なぜ若い監督の感性で現代的な脚色をさせなかったのか疑問に思う。結果的に凡庸なサスペンス調になって、テーマそのものに焦点が合わなくなった。吉沢亮・S>>続きを読む
やけにポップス調な楽曲とマドンナの相性が良く、全編通してその歌唱が生かされているが、だからこそ一人の女性が成り上がる生涯に重厚感がなく、妙に薄っぺらい物語のように感じてしまう。狂言回し役のバンデラスが>>続きを読む
有名ミステリを愛というテーマで脚色し、ブラナー版ポアロに奥行きを持たせようとしたのは理解できる。探偵の仕事が結果的にお粗末なものになってしまったのは仕方がないが、細かく目を光らせる観察眼は充分に発揮さ>>続きを読む
山本直樹的世界観をしっかり映像化できている。カルト宗教がその解釈によって不条理になるというテーマ性は、宇野祥平の狂ったキャラクターによって現実味を帯びていく。原作通りエロ要素を多めに描いた故に、観客が>>続きを読む
リビングデッドそのものの怖さより、閉じ込められた人々のシチュエーション・ドラマの形を取っており、身勝手で愚かな行動ゆえのバッドエンドにこそテーマが潜んでいる。ただ呆けているだけのヒロインには終始イラつ>>続きを読む
とにかくディカプリオの底が見えない演技の幅を知らしめるキャラクター造形が素晴らしい。やり手のビジネスマンかつ詐欺師で、ジャンキーで、セックス依存症という破天荒さを、実物大に表現できる役者は彼以外にいな>>続きを読む
勿体ぶった演技の福山と、善悪どちらにも見える役所のキャラクターが、それぞれの役柄に合致して、物語に深い意味を添える。人が人を裁くことの危うさや、嘘をつくことが当たり前の人の業が描かれるのは、確立した宗>>続きを読む
黒澤版と比べるとテーマ性も希薄で、ラストも泥臭く迫力のある戦いが繰り広げられるわけではないが、西部劇ならではのダンディズムとスマートさがあって、これはこれでエンタメとして成立している。子供に愛されるブ>>続きを読む
人形が意志を持って人間を襲うホラーに、自律進化するAIが暴走するSFを乗っけることで、究極的に厄介なモンスターが生まれるわけだが、その割には案外あっさりと物語が展開して、想定していた怖さを超えなかった>>続きを読む
無駄に多い登場人物がそれぞれ魅力的で、二転三転するストーリーも一周回って面白い。最後までひた隠しにしていた伝説の武器が、蓋を開けてみると魔法のステッキみたいな効果を発揮するトンデモ感には笑ってしまう。>>続きを読む
チンピラの成り上がりを軽快な音楽と共にコミカルに描く前半・ギャングとして覇権を握るまでをシニカルに描く後半で、一貫して飄々とした佇まいのベルモンドと、徐々に風格をまとうドロンの対比が面白い。ありがちな>>続きを読む
政治・マスコミとショービジネスが複雑に絡み合った時代に、どのように『市民ケーン』が作られていくのかを物語にした作品のようでありながら、あまりその部分に重要性はなく、ゲイリーが淡々と演技するのを眺めてい>>続きを読む
夢という脈絡のないものを描く難しさを実相寺は簡単に飛び越えていき、小泉今日子の妖しげな魅力もあって、訳の分からないものに意味を与えている。得意のホラーの文脈で存在感を示した清水崇、ひたすら馬鹿馬鹿しい>>続きを読む
ニセ医者という設定に無理があり過ぎるせいで、テーマに現実味を感じない。人の命に関わる医療において、その嘘が結果的にハートフルなものになってしまうのだとしたら、なんとも下品な物語だと思う。余貴美子や八千>>続きを読む
放蕩息子役の宮迫博之の胡散臭さが絶妙で、脇を固める俳優陣も丁度良い。パターン化された家族に次々と舞い込む諸問題によって、息苦しくも均衡を保っていた関係性がいとも簡単に崩れていく。それらは必ずしも解決し>>続きを読む
おばけや怪物による恐怖、あるいは人間の狂気が引き起こす恐怖、というホラーのありきたりな素材をあえて持ち出さず、根源的な恐怖とは何かをはじめて映像として提示しようとする試みがある。それは、おそらくホラー>>続きを読む