上Kさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

上K

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トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.9

本人たちにとって、とくにトリにとっては、今より劇的に良い生活なんてイメージさえできないであろうことが何より苦しかった。売り子になるのは生きるために当然、と言ったような姿。

ただ現実に寄り添うだけでス
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.8

まさに時代の映画だと思った。人生には無数の選択肢があるけど、そのことが却って虚無感につながる、というのはまさしく最近よく感じる。確かに混沌として生きづらい時代なのかもしれないな。いっそ岩になってしまい>>続きを読む

対峙(2021年製作の映画)

3.8

対峙している場面での一言一言に語りきれない重みがあったのは勿論だけど、被害者のご両親が対峙する前段階で赦すと決めていたこと、加害者側のご両親が時折、簡単には赦してもらわないためかのような言動をとってい>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

大好きだなと思った。上映後、スピルバーグ監督のキャリアに想いを馳せるというより、劇中に立ち現れていた人生観にしみじみと思うところがあった。少し焦げた朝食を慈しむような。

映像としての切り取り方一つで
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別れる決心(2022年製作の映画)

3.9

これは「愛」の映画だ、と珍しく言い切ってしまいたくなる一方で、何故かと問われると戸惑ってしまう。多分自分の精神構造の深い部分にヒットした。

今まで観た中でこれほど官能的な作品があったかな。徹底したコ
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父、帰る(2003年製作の映画)

3.8

親のありがたみは親の不在を通してしか知れないという状況は当たり前ではあるけど、人生最大の悲劇だなと思った。
たとえ父(必ずしも血縁関係ではなく、象徴的な意味での父)が理不尽で愛が不足しているなと感じて
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武士道残酷物語(1963年製作の映画)

3.7

自分を律する、抑える、滅する、殺す、色んな言い方があるけど、度合いを見極めるのは死ぬまでの重大テーマだな、とつくづく思った。

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)

3.5

愛に溺れた結末として、絶句。
でも溺れるべきだったし、避けようもないのが悲劇

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.6

自分は何者で何を残せるかという不安を抱いた時に、「でもあなたには目の前の生活があるじゃない!」と言われても…というのは痛いほどわかった。もちろんその通りなのがなお痛い。
それはそれとして、描かれていた
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浮き雲(1996年製作の映画)

3.5

ただただ流れていくように過ごして、だからこそ何事も受け入れられる。

ラストエンペラー(1987年製作の映画)

3.9

エンペラーも自分も根本的には同じ人間だし、ここで描かれていた苦悩も馴染みはある。でも、自分との立場の違いからか、圧倒的な距離を感じて、感情移入させてくれなかった。もどかしかったけど、同時にそれはそうだ>>続きを読む

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)

4.0

人生が一筋縄に行かない部分をそっと陰から見守るような眼差しを感じて、噛み締めるように観た。
その人が善く行うか悪く行うかはちょっとした選択の違いで、そしてその選択もちょっとした感情の波で全く異なる、み
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あのこと(2021年製作の映画)

3.8

主人公の不安が自分に憑依してくる、貴重な映画体験だった。主人公が今の状況に至った経緯なんかは横に置かれていて、とにかくリアルタイムの張り詰めた緊張感を味わわされた。構成については色々緻密な計算があると>>続きを読む

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.7

ショーの団員のようにしか生きられない部分と、そこに囚われる過ぎると堕ちていく部分と、その辺りのバランスが…。
極端なフィクションに見せながら、現在の世の中を着実に風刺していく、かなり教訓に満ちた作品だ
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マダム・イン・ニューヨーク(2012年製作の映画)

4.0

シャシの言動の1つ1つが情緒に満ち溢れていて、味わいきれないほどだった。

大枠は家族への復讐劇になると思うけど、相手を糾弾するよりもむしろ自分側と向き合うことがいかに豊かなのかを思い知った。なにより
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過去のない男(2002年製作の映画)

3.8

目の前のものと向き合う時は記憶喪失のスタンスでいられたら。
記憶喪失の姿を見ながら、人間が生きていれば時間が積み重なることと、一方で時間に逆らってしまえるのも人間らしいということを同時に思う、面白い経
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RRR(2022年製作の映画)

3.9

ずっと何かしらの感情が動いてたし、かっこよすぎて、「あれ、俺涙出てる?」って時もあった。何より筋トレしたくなった。

終わった後の拍手なんかも、今まで映画館で体験した中でもダントツ大きかった。

評決(1982年製作の映画)

3.7

最終的に正義を貫いたことより、うっかり闘いに足を踏み入れて、後には引けなくなったような状況が面白かった。
そんなに崇高なものじゃないんですよ、ちょっとしたきっかけがあっただけなんですよ、というスタンス
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落穂拾い(2000年製作の映画)

3.8

軽快な語り口で難問を突きつけてきた。慎ましさと芸術性の関係はかなり興味深い。結局時代なのか、とか。誰かと話したいね。

街のあかり(2006年製作の映画)

3.9

なんでだろう、カッコ良かった。可能であればそのように生きたいとさえ思ってしまった。

「人生を豊かにしなくては」という意識の裏には、「こんな人生なら生きたくない」みたいなイメージがあると思うけど、一方
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ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)

3.8

調査を進めるサスペンスの本筋の部分と、その周りの人間関係と、適宜目線を移し替えながら観た。
サスペンスを軸に男女の関係を見ると、なかなか思わされるところが。男目線としては、逃れられない部分が描かれてて
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ディア・ハンター(1978年製作の映画)

3.5

戦争が人を変えてしまう、というテーマは良く目にするけど、どんな性格がどんな出来事でどう変わるか、これに必然性はないんだろうなというイメージを持った。
その上で、一発の重さ。事後的な状況の変化よりも一発
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欲望(1966年製作の映画)

3.7

個人の視点を通してしか世界を認識できないのはそうだよね、と思うけど、他人(自分)と自分(他人)は全く違うものを見ているのだ、という前提をわざわざ意識しながら生きるとなれば、それはそれで混沌としそう。>>続きを読む

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

3.9

相手に尽くすとなれば、大人も子供も関係なくなるな。たしかな愛情が静かな森の風景に淡々と立ち上がっていたのも印象的。それでも決して控えめな愛情ではなくてむしろ激しかったな。ものすごい緻密なバランスの上で>>続きを読む

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.0

紛れもなく不倫のような、不倫から程遠いような、どっちでもいいような。わざとらしく一線を引いた事で何の得になったかは分からない(おそらくチャウ本人にとっても)し、崇高な目的によってではなく、自意識に振り>>続きを読む

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)

3.8

金城武も、トニーレオンも、ひたすら愛らしいと思った。と同時に、観ながら自分で自分を嘲笑しているような感じもした。
例えば、環境の変化に気づけないのは自分しか見ない感覚だからだと思う。そのくせ環境に甘ん
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大いなる遺産(1998年製作の映画)

4.1

自分自身、特に1年くらい前の自分自身が説明されているような感覚で観入ってしまった。
自分の人生を自分でコントロールしたいと思いながら、実はコントロールされている可能性に気づいてしまった時にどうするか。
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トムボーイ(2011年製作の映画)

3.7

内面の機微がこんな官能美に溢れた映像になるのかって素直に感動した。
主人公が直面したような非情な現実があるというのもたしかだけど、そんな厳しい現実を前にして揺れ動く姿がいかに貴いものか、思いを巡らすこ
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鏡の中にある如く(1961年製作の映画)

3.8

なるほど神の沈黙なのだろうと思う一方、どちらかというと本当の意味で信仰から離れて生きられるかを考えてしまう。ここでの「愛」みたく、何かを(おそらくほとんどは無意識に)神格化する事でようやく正気を保つ、>>続きを読む

君を想い、バスに乗る(2021年製作の映画)

3.2

妻との約束を果たす本人の内面の部分と、それを外から見て発信する人と。「老人の旅」をコンテンツとして発信する視点も結構なもんだろうけどね。投稿を見た人が旅を助ける可能性が広がるところには意味があるとも思>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.6

何でもネタにしようって行いが何を産むのか、これはたしかに疑問が残るけど、その行いに殉じる人もいるってのは本質的な人間の性なのか、現代社会の悲劇なのか…

やっぱり、自然の論理性みたいなのを度外視した倫
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さがす(2022年製作の映画)

3.6

「生きる意味」みたいなことは可能であれば持ちたいと思うけど、突き詰めた先にどうなるかというと、この映画のような姿も…。
意味を考えることと実現する手段との関係はなお難しい。ましてや、山内みたく手段(の
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