よどるふさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

僕たちの城(2021年製作の映画)

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観客に対して状況の多くが明示されない中で、兄弟の絆が語られていく。自分の言葉によって自分自身の“未来”を確かなものにする決意を固めていくようなラストシーンが良い。回る風車を背に自転車を漕いでいる画は、>>続きを読む

ティタン(2021年製作の映画)

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鍛え上げられた身体を持つ少年が兄から刃物をもらった時点で、刃傷沙汰になるのは必至かと思ったけれど、最悪の一線は越えずに終わってくれるので良かった。しかし、虐める側もどんな確信があって鍛えた少年に対して>>続きを読む

獣を解き放て(2021年製作の映画)

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メインの登場人物は、乗っていたバスが事故を起こしたことにより予約していた病院へ歩いていかなければならなくなった女性と、同じバスに乗り合わせていた男性のふたりのみ。話の展開の思いも寄らなさで魅せていく。

海辺の女(2022年製作の映画)

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「海で恋人の身に死が迫る夢」を見た女性が、その恋人と過ごすバカンス先の海で、近くにいたはずの少女が行方不明になる事態に遭遇する。しかし恋人は、少女を見ていないという。ラストの着地のためにこういうレール>>続きを読む

港町マルムスク(2021年製作の映画)

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夫の手によって自分の携帯電話にスパイウェアを仕込まれたと思い込んでいる女性と、飼い猫が行方不明になっている女性が描かれる。とにかくロケーションを見て楽しむ観光映画としての作りに特化していた。画面の奥の>>続きを読む

美しき大河/ベルリバー(2022年製作の映画)

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俯瞰ショットのジャンプカットによって“水没した町”へとたどり着く序盤がまず印象的。スピーチの音声と、廃園になった遊園地のジェットコースターのレールを映した映像を組み合わせる編集も凄まじかった。

触らないで!(2020年製作の映画)

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美術館を舞台にデフォルメされたデザインの人物たちが行き交う。ひと皮めくれば、そこには表からは見えない裏の顔が潜んでいる描写は大好物だ。美術館を訪れている客がいる中で、館内をメンテナンスしていく職員の不>>続きを読む

夜警(2021年製作の映画)

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何かしらのトラブルがあったと思しき男女の乗った車が事故を起こし、事故直後に目覚めた男性が車中から消えた女性を探し出すかたちで話は進行していく。抜け出してきたパーティーにふたたび身を投じた男が目撃する光>>続きを読む

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)

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冒頭から“殺意”と“死が訪れるまでの時間”を提示することによって、この先に待ち受けているのが破滅であることを予感させるオープニング。ラストにおいて主人公に死が訪れるのだが、それが“答え合わせ”染みてい>>続きを読む

お嬢さん(2016年製作の映画)

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サラ・ウォーターズによる原作の『荊の城』は未読。いちど登場した場面を視点を変えてもう一度“語り直す”構成はミステリ的と言える。そういう意味では監督の過去作の『JSA』に近いが、あちらと違って状況を客観>>続きを読む

渇き(2009年製作の映画)

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『オールド・ボーイ』は、CGのワンポイント使いが上手い印象だったのだが、吸血鬼となり超人的な身体能力を身につけた男女が家の屋根を飛び回るシーンにはシュールさを感じた。悲劇の中にも喜劇的な要素が含まれて>>続きを読む

タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター(2023年製作の映画)

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IMAX版を鑑賞。限定された空間においてドラマを描く手法は、同じジェームズ・キャメロン作品だと『アビス』に続く作品だが、主要人物による懐古の語りを採用する本作は、“空間”および“時間”の二重の檻に囲ま>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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日本語字幕付き上映版を鑑賞。縄跳びの音。スパーリングの音。機械の音。それらの音が同時に聴こえてくるのではなく、次第に重なってくる。観客にボクシングジムを知覚させる冒頭の演出は、日本語字幕付き上映でも字>>続きを読む

トゥルーライズ(1994年製作の映画)

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妻の不貞を疑う主人公の職権濫用ぶりがとんでもなく、登場人物にとってはあまりにも異常な状況が続くのだが、観ている間は何度も笑ってしまった。吹替版で観たのだが、声優さんたちの演技は、作品のおかしさにさらに>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

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本作と『ファースト・マン』の間に発表されたデイミアン・チャゼル監督の短篇『The Stunt Double』は、さまざまな年代やジャンルの映画撮影の現場を渡って行くスタントマンを描いた作品だった。そこ>>続きを読む

ターミネーター2(1991年製作の映画)

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シリーズ第1作から“守る側”が男性からアンドロイドへ、“守られる側”が女性から少年へと変わったことでジュブナイル味がグッと増した。「未来を変えさせない」使命が動機となるのは前作と同じなのに、『ドラえも>>続きを読む

アビス/完全版(1993年製作の映画)

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『エイリアン2』に続いて、こちらも箱庭的な空間が舞台。深海に潜む未知の生命体とのファーストコンタクトものとしての要素を備えつつ、その要素が起因とはならない海中パニックものとしての側面も持ち合わせている>>続きを読む

エイリアン2 完全版(1986年製作の映画)

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宇宙船の箱庭的な空間のデザインが良い。こんなに広いわけあるかと疑問に思うところもあるが、それでも良いのだ。エイリアンによる被害者を大量に出して話を盛り上げるためか、登場人物の知性のレベルがかなり下げら>>続きを読む

エイリアン/ディレクターズ・カット(1979年製作の映画)

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いちばん好きなシーンは、実際にエイリアンが人を襲い始めるシーンではなく、エイリアンの体液が宇宙船の床を溶かし続けるところだったりする。あの“人為的には止められない”現象が、その後の惨劇の予感として効い>>続きを読む

ターミネーター(1984年製作の映画)

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戦車のキャタピラが頭蓋骨を踏み潰し、車はオモチャのトラックを踏み潰し、ターミネーターはヘッドホンを踏み潰す。そういった「敵に蹂躙される」描写が積み重なった末にターミネーターを倒す方法が「プレス機による>>続きを読む

殺人魚フライングキラー(1981年製作の映画)

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前作の『ピラニア』は未見。海に血が広がるようなオープニングクレジットは洒落ているなと思ったが、展開はよくある動物パニック映画の域に留まっている印象。死体の体内から殺人魚が飛び出してくるシーンは少し『エ>>続きを読む

Xenogenesis(原題)(1978年製作の映画)

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12分の短篇。世界設定の簡単な説明をしたあとは、ワンシチュエーションを特撮を交えて描く。いま観ると『ターミネーター』の冒頭にそっくり。人間が巨大な空間でビッグサイズの戦車に出くわすシーンは、いまなら主>>続きを読む

マリアンヌ(2021年製作の映画)

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カメラを構えている者が被写体に対して“都合の良い人物像”を要求する序盤から、これは“編集される英雄”の話であることが了解できる。カメラを向けられる側の背景は常に雄大な自然で、「逃げ場なし」感が際立って>>続きを読む

東京の闇(1982年製作の映画)

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三味線の音がBGMとして聞こえ、縁側では風鈴の音がしており、日の丸のハチマキをしている日本人が登場するなど、隅から隅まで“異国から見た日本”が味わえる一作。むかしの映画における歩きながら会話しているシ>>続きを読む

不安な体(2021年製作の映画)

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他人の目による“世界の見え方”をこの上なく味わえる作品。“丸み”がもつ弾力の表現と、“直線”がもつ鋭利な表現。そしてそれらの交わりが生む現象のひとつひとつから目が離せない。観る側の日々のコンディション>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)

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“仕掛け”は標的に死をもたらすものであるが、それ以上に「“仕掛け“は絶対であり、いちど発動したら止まらない」という悲哀が描かれていた。いま“悲哀”と書いたが、これはあくまで事態を外から見た自分の感情で>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

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原作となるノンフィクション本は未読。後に #MeToo 運動が広まる契機となる、ハーヴェイ・ワインスタインの長きに渡る女性に対する性的暴行を告発するNYタイムズ記事が世に出るまでを描く。

終盤、NY
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

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テレビ塔という“縦に長い”本作の舞台を、“横に長い”映画のスクリーンによって切り取ることで、画面には大きな“余白”が生じている。その“余白”を埋めるのが、地の果てまで続く荒野であり、全体が映らないテレ>>続きを読む

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)

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『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』に続く“復讐3部作”完結編(とはいえ3作品とも独立しているので、どれから観てもいいし、ぜんぶ観る必要もない)。「復讐の手段の陰惨さ」では3部作の中ではいちばん>>続きを読む

オールド・ボーイ(2003年製作の映画)

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「長きに渡って謎の監禁をされた男が事の真相を追う」設定は原作の漫画版と共通ながら、原作の「ダラダラと引き伸ばされていく“戦争”」とは異なるアプローチが試みられている。原作を読んだ身からすると「まとまっ>>続きを読む

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)

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とにかく“水のある場所”を死のイメージで満たしていくことに注力した作品である。そして、その“水のある場所”での死が“自殺”、“事故”、“殺人”と見事なグラデーションをなしていることで、本作におけるすべ>>続きを読む

JSA(2000年製作の映画)

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すでに起こってしまった惨劇の背景に何があったのかを紐解いていく構成。男だけが関係する事の真相の面白さよりも、「何があったのか」をきちんと現場の証拠品からロジカルに推理していく探偵役を務めるスイス軍少佐>>続きを読む

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

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屋外は一面の雪景色。その寒々しさが侵食してきているかのように、部屋の中は暗い寒色に染まっている。部屋を照らす蝋燭の炎も、画面上に明るさや温かみもたらすことはなく、作品全体を覆っている妖しさを強め、部屋>>続きを読む

アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~(2023年製作の映画)

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2012年に放送が開始した当初から観ていたTVアニメ『アイカツ!』の新作。「ここのところ会えていなかった知人の顔を久々に見にいく」くらいの軽い心持ちで劇場に足を運んだところ、時の流れをしみじみ感じるこ>>続きを読む

金の国 水の国(2023年製作の映画)

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原作は未読。異国情緒が溢れる美術も良いが、効果音の付け方が細やかだった。特に食事シーンで金属の皿にカトラリーがぶつかるカチャカチャ音は、通り一遍ではない感じがした。“金の国”の城に仕込まれているの絡繰>>続きを読む