Yoshishun

ウマ娘 プリティーダービー Season 3のYoshishunのレビュー・感想・評価

3.4
Cygamesが誇る育成ゲーム『ウマ娘』TVシリーズ第3期。
第2期に登場したキタサンブラック、サトノダイヤモンドが主人公の本作は、それこそトウカイテイオーとメジロマックイーンのような良きライバルとしての成長、あるいは、テイオーとキタサン、マックイーンとサトダイという師弟コンビのやり取りも描いてほしいところだ。前作『ROAD TO THE TOP』や2期の完成度からも3期への期待は高まるばかり。

しかし、1期よりも低めの点数にせざるを得なかった。最終回で定番のうまぴょい伝説が流れても、2期のような高揚感は全く感じられなかった。今期1番期待していただけに失望感も大きかったのだが、何故3期は微妙な出来になってしまったのか、その原因は複数ある。

①キタサンブラックを主人公にする難しさ
史実によれば(まあアニメを観ていればわかるが)、キタサンブラックはG1勝利数歴代最多タイの名馬であり、競走馬時代は目立った、選手生命に関わる怪我などをしてこなかった。1期のサイレンススズカ、2期のテイオーとマックイーンのような栄光と挫折、そして奇跡の復活劇などが極めて描きづらい。キタサンの走る理由がお祭りウマ娘として人々を勇気づけたいと曖昧だったのも、最強すぎるが故に無理やり捻りだした理由に思えてくる。テイオーが3冠ウマ娘という明確な目標を掲げていただけに、抽象的過ぎる目標を目指すキタサンを見ても特に応援したくなる要素が見当たらないのである。
また、そもそもサトノダイヤモンドと同時期に走っていたのは1年程で、良きライバルとするにはかけ離れすぎていた。その影響か、作中まで一緒のレースを走っているのは、ものの2,3回程度に留まる。サトダイが凱旋門賞完敗で落ち込んでいる時に励ます描写も見当たらないので、本当に仲が良いのかも怪しい。
そして、最強すぎるが故に、チームスピカとの絡みが少な過ぎるのは致命的すぎる。トレーナーよりも、ライスシャワーとミホノブルボンとのトレーニングの方が印象に残っているし、スタッフにファンがいるのか知らないが、ナイスネイチャに助言を求める場面が多過ぎる。せっかく憧れのテイオーと同じチームなのに何故キタサンはテイオーに助けを求めないのか、逆にテイオーはキタサンを気にしていないのか。最終回で取って付けたように「ずっと見てたよ」って。尚更見てないでキタサンに絡んでいけよ!と感じてしまった。
あと惜しいところで連敗の続いていた中での天皇賞(春)、まさかのEDでダイジェストを流すという荒業。さすがに酷い。

②サイドストーリーを盛り込みすぎ
①のキタサンのメインストーリーだけでは1クール持たなかったせいか、3,6,12話でゴルシ、サトダイ、シュヴァル単体のストーリーで間を埋めている。1話完結型としては良いかもしれないが、主軸となるキタサンの成長ものとしては繋がりは薄い。突然路線変更して別のアニメが始まったのかと錯覚してしまう程。また、キービジュアルに描かれているサトノクラウンやサウンズオブアースは脇役に徹しすぎていたり、ドゥラメンテに至ってはまさかの前半でフェードアウト。史実だから仕方ないのだが、もっとドゥラメンテが凱旋門賞への想いを描写していれば完全に空気にならなかったのではと思う。

③露骨な小ネタの応酬
2期等でも無かったわけではないが、本作ではG1でのオタの会話や、史実に沿ったデムーロジャンプ等の小ネタがクドい程盛り込まれている。ゲームをしていれば登場するだけでテンションが上がるウマ娘のカップリングや、ゲームのBGM程度で抑えておけばいいものを、競馬ファンを必死に取り込もうという下心丸出しな描写の数々は本当にクドい(実際運営が原因でオワコン化が進んでいるコンテンツだが)。

④そもそも制作体制に問題が?
最終回放映直後に発表された、シリーズ初の劇場版。劇場版はRTTTと同じCygames Picturesが手掛け、企画段階からCygamesが全面協力しているのは想像に難くない。しかし、本作はどうやらシリーズ構成からCygamesが離脱しており、その影響で前述の問題点が浮き彫りになってしまったようにも思う。2期の体制でいけば、ナイスネイチャをゴリ推しすることも無かっただろう。贔屓目で見ても今回の3期は劇場版に全振りした結果生まれた残り滓で作られた作品だったのかもしれない。


さて、ここまで長く3期の問題点を述べたが、勿論3期ならではの新しい視点は評価できる。

それは、ウマ娘としての“衰え”を初めて描いた点にある。
骨折や負傷による明確な挫折とは違い、自然と衰えていく自身の体力と向き合うことになる。連勝していたキタサンが突然の9着という結果に終わり、それまで以上に息切れが激しい様子が映し出される。突然追い込まれていくキタサンの苦悩は良かった。最終回近くでは息切れを起こすタイミングも従来より早くなっており、自身の引き際を見定めるキタサンにはこちらも見ていて胸が苦しくなる。
また、レースの描写はRTTT程の狂気や興奮はないにせよ、ウマ娘としては及第点の出来だったといえる。観客に紛れた解説役が五月蝿かったのが完全にノイズになっていたが。

確実にピークは過ぎたコンテンツなだけに、来年5月公開予定の劇場版でどれだけ集客できるか。ウマ娘のアニメシリーズ存続の命運はそこに掛かっている。少なくとも、3期は過去作と比較しても視点が混雑し過ぎており、またファンが求めるものとの乖離を感じられる作品だった。個人的にもゲームは1年以上続けている程気に入っているので、何とか今後もウマ娘たちの熱き闘いを拝みたいところ。
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