Yoshishun

葬送のフリーレンのYoshishunのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
4.5
勇者一行が魔王を倒した後を描く、魔法ファンタジー。
金曜ロードショーにて1〜4話が先行放送されたことでも話題になった本作だが、原作未読の状態で臨んだことで1話から衝撃の連続だった。魔王討伐を目的とした物語ではなく、完全に討伐した後平和になった世界での物語だが、一体何を描くのか、どう転ぶのかが全く読めなかったのだ。

フリーレンにとって新たな旅の始まりは、人を知るためのもの。個人的にも思い入れ深い『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のような、普通ならざる者が人生を歩みだす物語に心を掴まれやすいのだが、本作もその1つ。かつて勇者一行たちと同じ道を選びながらも、勇者の遺したものを辿りながらも前へ前へと進んでゆく。変に思い出に耽るわけでもなく、あくまで弟子の魔法使いフェルン、臆病な戦士シュタルク、そして一瞬だが確かな爪痕を残すザインとの、時にのんびりと、時に傷つきながらも激しい戦闘となる旅路となる。

前半はまさに旅の始まり、後半は一級魔法使い試験というわかりやすい2部構成であるが、確実にフェルンとシュタルクの成長具合も丁寧に描写しつつ、フリーレン自身の人を知る物語にも深みが増していく。

マイベストコミックが空知英秋先生『銀魂』なのだが、本作のユーモアというか、ギャグの語り口と少し似通っているようにも思う。さすがに斎藤圭一郎監督の前作『ぼっちざろっく!』のような作画も世界観も完全にカオス状態になるタイプではないが、静寂と間の取り方が絶妙かつフリーレンらの時折見せる顔芸も堪らない仕上がりとなっている。新八のような激しいツッコミではなく、銀時がたまに眼前の異常さに静かに突っ込むあのノリが堪らなく好きな自分にとっては本作のユーモアセンスとの相性は抜群だった。

終盤はやはり魔法使いによる選抜試験だったためシュタルクの出番が大幅に減ってしまったのが残念ではあるが、彼の不在を補填するかの如く、一癖も二癖もある魔法使い達の登場により全く飽きさせない。またぼざろで見せた謎に気合の入った作画も本作では健在で、それを含め顕著な作画崩壊も見られない。2クール、それも28話あっという間だった。斎藤監督はぼざろ劇場総集編、そして来るであろう2期の準備のため、本作の2期はまだ先になるだろうが、気長に待っていようと思う。
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