浅野公喜

ムカムカパラダイスの浅野公喜のレビュー・感想・評価

ムカムカパラダイス(1993年製作のアニメ)
3.9
「ジュラシック・パーク」を発端とする恐竜ブームの中放送されたペットショップを経営する父親が買ってきた卵から生まれた恐竜の子供・ムカムカを娘の小学生・鹿谷初葉が母親代わりとなって育てるコメディアニメ(初葉の名前の由来はシガニー・ウィーバー)。彼女のライバル・御殿場がボディコンスタイルで扇子を持ってる所、きんさんぎんさん風の双子のお婆さんが登場するのが平成初期らしいです。

初葉達が住む商店街や学校の人達との交流を描いた現代編と博士が作ったタイムマシンで恐竜時代へタイムスリップする二部構成となってますが、スポンサーであるバンダイの関係か恐竜時代が3分の2を占め、下町人情物としての側面も有った現代編が少な目なのが残念。

とは言ってもメインキャラだけでなくその家族や店舗・家ごとタイムスリップして生活を始める恐竜時代はさながら最近流行りの異世界モノの走りみたいですし、普通に日本語を喋る恐竜達や雪だるまにオネエ半魚人まで登場するカオスな世界観は雑ながら魅力的でムカムカもムスッとした表情ながらだんだんとかわいく見えてきます。また、恐竜達と交流するうちに、例えば約束したのに後回しでいつまでもそれを実現しないといった人間のダメな所が浮き彫りになり、それを自省し一人一人が約束を守ったり課題をこなすことが現代に戻るきっかけとなる終盤がやはり良い流れ。
初葉が意外と頑固で理屈っぽい性格に対し、両親は寛容で柔軟な考え方を持っているのが少しユニークかも。

印象的なエピソードは初葉達の担任の教師が母性に目覚める第8話「学校でムカムカ」、御殿場との距離が少し縮まる第25話「蘭華のヒ・ミ・ツ」、一人一人の考えが衝突する第36話「懐かしの商店街」、ガイコツが登場したり様々なギミックが面白い第38話「ムカムカ宝島」、「心の扉に鍵がかかっていない」といった名言も有る第47話「地図伯爵ブンドイ」等。他の詳しいレビューサイトでも書かれていますが、渡辺明夫3が作画監督の回の絵柄が特に好きです。

この前観た同時期放送の「GS美神」にも言えますが、あと1.2年早く生まれてたらリアルタイムで観てたんじゃないかな・・と思える雰囲気。強烈なインパクトが有る感じではないかもしれませんが、大事にしたい作品でありタイトルは覚えてないけど観た記憶は有るといった方も再見すれば新しい発見があるかもしれません。
浅野公喜

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