浅野公喜

小公女セーラの浅野公喜のレビュー・感想・評価

小公女セーラ(1985年製作のアニメ)
4.7
大富豪の娘が突如無一文になってしまう、長きにわたって放映された世界名作劇場の中でも特に高い人気と知名度を誇るバーネット原作の物語。自分の誕生日がセーラと近いので少し親近感を抱きます。

ご存知の通り(?)ほぼ最初から最後までセーラがひたすらいじめ抜かれるのですが彼女は本当に強く真人間(+金持ちの娘に生まれたのは偶然でしかない、という考えも謙虚)。理不尽な目に遭ってもこれといった反抗もせず、ひたすら耐え忍び時に勉学に励む姿はスカッと系に慣れた現代人にとって模範とするにはあまりにハードルが高い上に見ているだけでも子供はおろか大人でさえもストレスが溜まる事請け合い。ですが少し前に観た同じ名作劇場の「ロミオの青い空」同様、だからこそ<もう一人の主人公>ベッキーや<仏(ほとけ)少年>ピーターをはじめとする彼女を救う人々の優しさが沁みる(ピーターに関しては、セーラがセーラと呼んで構わないと言ってもお嬢様と呼んでしまう所も○)。

そしてその優しさはセーラ自身が裕福というだけで崇められる事、貧乏というだけで蔑まれる事を嫌い、人間を公平に優しく接しているからこそ継続して差し伸べられるものであり、最終的には金や縁の力だと言われる終盤も、44話を見れば分かりますがやはりそれら以前にセーラのモラル・誠実さが無ければ救世主となるある人物の心を動かさなかったと思います。この姿勢を子供は学び、大人はちゃんと再認識出来たら良いのかもしれません。

多くの方が指摘している通り終盤が駆け足気味なのが気になりますし、<ドン引きコンビ>ミンチンやラビニアがもっと反省したりあるいはピーターがセーラの代わりに彼女らをやっつける展開(笑)が欲しかったりアメリア先生がミンチンにもっと早くもっと強く反論して欲しかったという不満も有りますが、道徳の教科書代わりにもなりそうな程に、様々な考えが湧いたり学びが有る作品である事には間違いないです。

どのエピソードも濃いですが、特に印象的なエピソードは最終話にも繋がる第23話「親切なパン屋さん」、ちょっとした番外編とも言える第29話「ベッキーの里帰り」、前述の第44話「おお この子だ!」。

オープニング「花のささやき」、エンディング「ひまわり」はどちらも名曲です。
浅野公喜

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