シュローダー

地球外少年少女のシュローダーのレビュー・感想・評価

地球外少年少女(2022年製作のアニメ)
4.8
今期は「平家物語」「スローループ」「その着せ替え人形は恋をする」など、地上波でも高品質のアニメが多いのに、ネトフリド級の傑作アニメが来てしまったので、僕の脳みそは破裂寸前。高品質の作画の中にセンスオブワンダーが詰め込まれたアニメーションそれ自体も大いに楽しいのだが、とにかくこのアニメが巧いのは脚本。宮崎駿のアニメの文法を踏襲し、「1番下に落ちてから這い上がる話」として構成されたプロットの中に、非常に今日的なインフルエンサー描写や、宇宙という極限状況の中で繰り広げられる生きるためのサバイバル。偏見を抱えた人間同士の交流と和解。テロリストとのバトルなどのエンタメ要素が無理なく詰め込まれ、それらが全て伏線とエモーションとなって最後の最後にはこれ以上ない程の「SF」になる。セリフでモロに示されるオマージュとしてわかりやすいのはジェイムズティプトリージュニアの「たったひとつの冴えたやりかた」だが、テーマ的な帰着点はアーサーCクラークの「地球幼年期の終わり」であるし、終盤のとある展開は完全に「2010年」のそれだったり、ヒロインの名前と彼女の設定は筒井康隆の「エディプスの恋人」から引っ張っていたり。といったSF小説の古典の引用が連発される。しかし、それが単なる引用に終わらず、この作品はそれらの物語の「先」の結論を描くことに成功している。特に「エディプスの恋人」に対しては完全にアンチテーゼをカマしているのにも関わらず、それが少年漫画的エモーショナルに直結しているので余計に感動してしまった。「人類はこれから何処に向かうべきなのか」という超デカい物語と、イニシエーションを経て「大人」になっていく少年少女たちのジュブナイル物が見事に調和した素晴らしい作品だった。1話30分全6話なのですぐに観れるのも好感度高し。