ろく

昭和元禄落語心中 -助六再び篇-のろくのレビュー・感想・評価

5.0
「生きてりゃあどうして言えないことなんざいくらでも出てくらぁ」

シーズン1が何とも言えない寄れば切れるような冷たい刀だとすれば、シーズン2はなんとも暖かな、なんでも包んでくれるような袢纏のような作品に仕上げてきた。この力量ね。

もうその温かさに参るのよ。僕らは何かに決着をつけなければいけないと思っているの。それは恋でも正義でも家族でも。でもね、そんなことはどうでもいいんだ。「生きているだけで丸儲け」。それでいいじゃないか。何もかも決めつけなくてもいい。何もかも認めてしまえ。そんな最後に泣いてしまう。

久々に観たけどもうとにかく、こんなに素敵な「おじいさん」はいないの。アニメ史上最年長の主役では。そう思いながらなんともかわいく、恰好よく。ああ、10話の桜のシーンなぞ、八雲の笑顔にふらふらしてしまう自分。ああ、それだけでこのアニメはありなんですよ。

かかる演目はついに「居残り」。幕末太陽伝で川島雄三がモデルにしたあの演目。さらには寿限無の無邪気なこと。自分もこどものときに最初に覚えた落語は寿限無だと思いだしたよ(2本目は子ほめ)。そして「たちきり」「明烏」。いいねえ、結構落語的には大ネタぞろい。「蒟蒻問答」で子どもを寝かしつけるシーンも好き。

そして最後は「死神」に終わる。このアニメは「死神」に始まり「死神」に終わる。でも死の世界があんな世界なら死ぬのもそれほど悪くない。

かな。
ろく

ろく