シズヲ

結城友奈は勇者である -結城友奈の章-のシズヲのレビュー・感想・評価

3.3
「大赦を潰す!」ってブチ切れた風ちゃんはとても真っ当で、どう考えても子供達で完結させてはならない事態を子供達の視点だけで回してる話なんだよな。そこには子供達を管理する“大人”が確かに存在するはずなのに、彼らは全く姿を現さないし子供達の心情に寄り添おうともしない。世界の命運を賭けた戦いを繰り広げているはずなのに大人が不自然なくらい希薄な存在なので、子供達は子供達のスケールで物事と向き合うしかない。子供が死ぬ気で戦うしかない世界観なのだから大人は全力で誠意を見せるべきだと思うが、そういうことしてる気配が全然感じられないんだよな。

圧倒的にケアが不足している大人に本来ならキレてもいい筈なのに、子供達が“極めて善良”なので結局過酷な運命を引き受けてしまう。風先輩がキレても東郷さんが壊れても、最終的には“子供の真っ直ぐな善性”によって前進を続けてしまう。そして子供達が血反吐を吐いてでも諦めずに戦い続ければご都合主義的に奇跡が起こる。大人の無責任な不在という根本的な問題を子供達の自己完結的な犠牲精神でぼかし、それが予定調和的に肯定される内容は正直言ってかなり嫌らしく感じる。“大人に駆り出された学徒兵達”を作劇的にわざとらしく追い詰めた挙げ句、最後はあざとい美談に仕立て上げたようなもどかしさがある。

本作のそういった構成ははっきり言って醜悪で引っ掛かるが、アニメ自体は何だかんだ面白い。ポスト『まどマギ』の系譜であることは容易に読み取れるけど、ダークな印象の強かったあちらと比べると前半は思いの外ユーモアがあって逆に新鮮。後半からは過酷な運命が現出してよりシリアスになっていくけど、それでも女子の友情や困難に立ち向かう意志が輝いているので(肝心の価値観はさておき)全編を通して前へ前へと進んでいくような活力がある。“満開”などのバトルヒロイン的要素にはまどマギ以上の爆発力があるし、終盤のにぼっしーの「勇者部5か条オオオオオオ!!!!」でブチ上がったのも事実。和をモチーフにした作中のイメージも中々に美しくて印象的。

二期以降はもっと大赦サイドにスポットライトが当てられるらしいので気になるけど、未だに見れてないんだなあ。
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