「ずっと友人だ。」幼い四人が交わした約束を戦争の業火が飲み込んでゆく。15世紀。百年戦争の時代。イングランド軍の捕虜に墜ちた友を救う方法はただひとつ、錬金術究極の秘法『賢者の石』を身に宿し不死身の超人『ユリス』と化すことだけだ。禁断の研究に身を捧げる少年モンモランシ。その前に妖精の女王アスタロトが現れて……。
ユリスになる方法を求め、ドンレミ村を訪れたモンモランシ。だがその地をめぐるフランス傭兵団とイングランド軍勢の戦いに巻き込まれてしまい……。乱戦の中で致命傷を負った少女ジャンヌ。その命を助けるために、モンモランシは虎の子の賢者の石を彼女の体内へ挿入する。「生きろ、ジャンヌ!」そして、暴虐の限りを尽くすイングランド軍勢の前に無敵のユリスが降臨する!
教会の異端審問を逃れるため、そして崩壊寸前のフランス軍を再編成するべく、モンモランシはジャンヌを“聖女”へとしたてあげる。目指すはフランス亡命宮廷。旧友シャルロット、リッシュモンとの再会を果たし、この戦争に終止符を打つのだ! ところがそれを良しとしない宰相ラ・トレムイユは卑劣な罠を張り巡らせて……。
陰謀渦巻く亡命宮廷。罠に落ちたモンモランシとリッシュモンに処刑の刃が迫る。そしてラ・トレムイユが放った刺客と戦うジャンヌには活動時間の限界が。絶体絶命! 重圧と孤独に押し潰され心を閉ざしたシャルロットに打つ手はあるのか? 一方、フランスとの和平交渉を進めるべく城を訪れたフィリップの前に、亡父の怨霊が現れ……。
「あの娘は悪魔と交わって人外の力を得たのだ!」ジャンヌにつきつけられた“処女検査”への出頭命令。これを断固拒否したモンモランシたちは危うい立場へと追い込まれていく。懊悩し涙するジャンヌ。モンモランシは彼女を励まし「死ぬまで傍らにつきそう」と約束を交わす。だがそれをひそかに見ていたリッシュモンは……。
乙女義勇軍、激戦の地オルレアンへ!「子供になにができる」と高をくくっていたアランソンも、人を超えたジャンヌの戦いぶりをまのあたりにして驚きを隠せない。だがイングランドのベドフォード公は、ジャンヌを葬り去るべく、超絶の戦士をふたり戦場へと解き放つ。その名はユリスを狩る者グラスデール、そしてユリス・ノワール! 超人対超人の激突は衝撃的な結末を迎え……。
心臓を破壊されたジャンヌを救うべく、アスタロトたちは魔剣エスカリボールの探索に旅立つ。一方モンモランシは故郷ブルターニュへ。「戦線を立て直すために2000人の援軍を。」祖父・赤髭のジャンに願い出るモンモランシだが、その代償として求められたのは美しき従妹カトリーヌとの近親婚だった……。
魔剣エスカリボール。その奇跡を求めているのはアスタロトたちだけではなかった。プロセリアンドの森の奥深く、イングランドの姫騎士トマスが一行に急襲をかける! アランソンは我が身を犠牲に活路を開く覚悟を決めるが……。一方、援軍を率いてオルレアンを目指すモンモランシの前にもラ・トレムイユの軍が立ちはだかる。時間はない。ジャンヌの命は風前の灯火だ。モンモランシたちはオルレアンに戻ることができるのか!?
ジャンヌの復活はフランス軍の士気を高める。トゥーレル要塞で激突する仏英両軍。そしてふたたび対峙するジャンヌとユリス・ノワール。グラスデールの必殺の弓がぴたりと狙いをつける中、ジャンヌはモンモランシがカトリーヌと夫婦の契りをかわしたことを知り、大きく動揺する。それを見たモンモランシは……。
天空に開いたバビロンの穴。そこからあふれ出したのは異形の神々だった。モンモランシの肉体を依り代に完全降臨を果たした神々の王エンリルが吠える。「さあ再びあの素晴らしき楽園を始めよう。その前に――人間共を掃除せねばならんな!」妖精の女王アスタロトと賢者の石の秘密、そして封印された歴史の真実がつまびらかになる。
ジャンヌは火刑に処される――やがてくる未来を知ったモンモランシは心を閉ざし、エンリルの支配に屈してしまう。救国の乙女ジャンヌにも活動限界時間が迫り、すでに人類に打つ手なし……!「モンモランシはすでに死んだ。」エンリルを葬り去る決断を下したユリス・ノワールに瀕死のジャンヌが叫ぶ。「モンモランシはまだここにいる。わたしにはわかる!」
「エンリル! てめえの出番は終わりだ。この世界は俺たちの手で作る!」 長きにわたる死闘はついに最終局面を迎える。手を携えて突撃するモンモランシとジャンヌ。だがその先になにがあるというのか。神々の去った世界を、ジャンヌが去る未来を、モンモランシはいかにして生きていくというのだろう。アスタロトですら見通すことのできない“その先”――血戦の果てにモンモランシが掴んだものとは?