玉生洋一

ちむどんどんの玉生洋一のネタバレレビュー・内容・結末

ちむどんどん(2021年製作のドラマ)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

#22
子供時代は子役たちのかわいさもあって楽しく見ていたが
高校生になってからの話はどうもモヤモヤする。
終始フワフワしている。

ニーニーがバカでろくでなしなのは
そういう男はたくさんいるし、バカはほぼ一生治らないものだし
そもそも物語的にそういう要員なのだから問題ない。
母親がバカ息子に甘甘なのも、そういう母親のほうが
割合的には多いくらいなのだろうから理解できる。

理解できないのは暢子の怒りだ。
東京に行きたければ、半年なり1年なり
自分でバイトをして費用を工面してから行けばいいのでは。
なぜ他人になんとかしてもらえると思っているのだろう。
「トラウマのせいでワガママになっている」という立ち位置の主人公というわけでもないし、
主人公の振舞としてはちょっとフワフワし過ぎでは。

結局、「父の不慮の死」「多額の借金」という苦難を背負った
数年間を各登場人物が日々生きてきたというリアリティが
感じられないのがフワフワの原因では。
それが感じられるのは川口春奈くらい。

「ストーリーにグイグイ引き込まれるドラマ」
「作中で描かれる人生や人間模様にグイグイ引き込まれるドラマ」
が見たい。
「朝ドラのフォーマットに則って、人物やストーリーを配置・組合せました」的な匂いが強いと、
離脱者も増えてしまうのではないだろうか。


#23
貧困に立ち向かっている一家のドラマがようやく描かれたという印象。
ニーニーがいなくなった効果だろうか。


#24
娘を東京に行かせてくれと土下座する母親のシーン。
普通なら感動するシーンなのだが
そもそも両親が借金して家を建てずにもっと小さな家でつつましく暮らしていればよかったし、
母親がニーニーの詐欺に引っかからなければさらなる借金を背負うこともなかったわけで
まるで感情移入できない。
お涙頂戴ではなく
「子供のためを思って」と親がとった行動が逆に子供を不幸にする
という矛盾をはらんだ現実問題として取り上げれば
興味深いドラマになるだろうにもったいない。

そこに降って湧いた「ニーニーがボクサーになって大金を手にしたから借金返せる」展開。
緻密な伏線があったわけでもなく、これは夢オチに近いシラケ展開では。

「貧乏だが学問に打ち込んでいた少女が、夢の留学を、宝くじに当たったことで叶えられた」という棚ボタストーリーがあったとして、誰が「すてきな物語!」と思えるのだろう。

どうしてもニーニーをボクシングで成功させなければいけないとしても、
真面目に修行して立ち直る様子を丁寧に描かないと視聴者は感情移入できない。

ここまで視聴者の心の動きを無視した
「緻密の真逆」をいく
いきあたりばったりの脚本は逆に恐ろしくて凄い。

脚本家の人は
周囲からいろいろと注文をつけられすぎて
あてつけでやっているのだろうか。

ジェンダー問題や
沖縄返還50周年を
作中に過剰に入れるのはNHKの他番組の編成上
マストだったことが伺えるし。

そう考えると脚本家の人には同情するが、
NHKの制作姿勢はまるで評価できない。
結果的に作品も楽しめない仕上がりになっていると感じたし(これで傑作が仕上がっていたら文句はないわけだが)。

4K映像の美しさや
俳優陣の姿は堪能したいが
これを見続けるのはさすがに人生の浪費な気がするので
残り少ない人生をより有意義に過ごすには
離脱しないといけないのかもしれないと
真剣に悩む。

俳優陣のせっかくの熱演をぶちこわす、
演出家や脚本家の熱意に勝手な口出しをする
背広組の横暴があるなら害悪でしかない。


#79-80
最低ランクの酷い回。
日本が誇る優秀な役者を揃えて
いったい何を作っているのかと嘆く。

ニーニーがもはや
「ストーリーの都合上異常な行動をとっている役者さん」
にしか見えないので感情移入のしようがない。
「ニーニーは貧乏で栄養失調になるといけないから
このお店に来たら私(暢子)がいつでもおいしいものを食べさせてあげるから」とか
大失恋等で追い込まれた精神状態にあったとか
そのような伏線が丁寧に描かれていれば
同じ行動をとったとしても違和感は少なくできただろうに。

長女が嫁いだ先の家族も同様。
できの悪いコントにしか見えない。
長女と、嫁ぎ先の祖母や母との関係をもう少し描くだけで
解決するくだりに説得力をもたせられただろうに。

なぜこんなことになってしまっているのかが
本当に不思議。


#114
店が成功。
その流れ自体はご都合主義で構わないのだが、
「豚肉等の素材をよくする」
「メニューを沖縄言葉に戻して異国感を出す」
等は、素人の視聴者の誰もが
「そうでしょうね」
としか思わない要素なので、
実際の沖縄出身者や、飲食店経営者しか
思いつかないような成功の秘訣を
もうひとつ織り込まなければいけなかったのでは。
取材した中からでもいいし
まったくの創作(デタラメ)でもいいので。


#115

正月休み前の矢作が暢子に色々と語って謝るシーンいらない。
厨房外での配膳を率先してやったり
口が悪いながらも暢子の体を気遣うシーンだけで
すべてが察せて十分なのになぜ余計なシーンで上塗りしてしまうのか。
そんな矢作は見たくないのに。

宮沢氷魚が空気(薄すぎて名前が思い出せなかったが和彦)。
沖縄がテーマということで、料理に専念する暢子と表裏一体となって
沖縄の食文化や諸問題についていろいろと紹介する役割となるのだろうと
思っていたのにほぼ機能せず。
和彦が渾身で取材したものが暢子の料理のヒントとなって
新メニューができるというエピソードがあってもよかったと思うが
残り話数を考えてももうなさそうか。
今の状態だと矢作と恋愛関係になって結婚するという流れのほうが
ドラマチックだったということにもなりそう。


#最終話
結局最後まで見たが、グウの音も出ないほどだった。
点数は、日本を代表するテレビ局の看板ドラマという観点でのもの。
(中学生や高校生がはじめて作ったドラマという観点でなら
3点は付くことになる)

なぜこんなことになったかといえば
脚本(物語)の質が低いせい、
それに伴う演出、構成がよくないせいで、
この脚本を通したプロデューサーのせいなのだろうと思う。
役者陣はよかった。

ストーリーが薄味なのはいいとして
「ちぐはぐ」
「筋が通っていない」
「まとまってない」
のが問題だと思う。

なんてことのない薄味ストーリーだったとしても
魅力的な役者陣が演じて
「一応かっこうがついてまとまっている」
ならば、「傑作ではないけれどまぁ楽しめたね」という感想になり
ここまで批判が出ることにはならなかったのでは。

脚本上、よかったのは矢作。