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地下鉄道 ~自由への旅路~のmendeのレビュー・感想・評価

地下鉄道 ~自由への旅路~(2021年製作のドラマ)
4.1
原作からふくらませているシーンが後半になるほど増えていくが、登場人物の背景をしっかり見せてより複雑なキャラクターにしたり、新しい登場人物を登場させてエピソードを深めたりと、非常に的確なふくらませ方だったと思う。
特に白人の逃亡奴隷ハンター、リッジウェー(ジョエル・エドガートン)の背景は考えさせられるものがあった。

逃亡奴隷コーラ(スソ・ムベドゥ)は、主役であってもほとんど自発的に行動しない。最初の農園からの脱走ですらシーザーに何度も説得され応じたほど。その後の彼女の運命は二転三転するが、彼女に選択の余地はなかった。ただ死ななくてすむように生きていただけだ。

奴隷の状況は過酷で、正視できない場面もあった。人ではなくて所有物にされていたのがよくわかる。

差別されている人が被差別地域から脱出すること、現実ではないがかつてあったことをモチーフにしていることは『ハンドメイズ・テイル』(『侍女の物語』)と驚くほど似ている。黒人差別も女性差別もまだ終わっていないことも共通している。

バリー・ジェンキンスとコンビを組んでいるジェームズ・ラクストンの撮影はいつものように美しい。ニコラス・ブリテルの音楽も非常に印象的。楽器でないような、汽笛のような、身を切られるような音だ。
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