法務省を実質上クビとなった
冠城亘は警視庁へ入庁。
警察官として杉下右京の元へ
真の相棒として舞い戻る!
目的達成の為にはとんでもない
突破力を持つ冠城を得た右京は…。
「相棒season15」
反町隆史演じる冠城亘が正式に特命係に配属され、刑事として活躍を開始したのがこのシーズン。第一話では、社のいる広報課配属(上層部の嫌がらせ)から、社への駆引き(脅し)で特命係へ戻る荒業を見せるが、強烈なしっぺ返しが最終話に…。その張本人は社であり、今シーズンからレギュラーになった警察嫌い青木年男。副総監の虎の威を借る狐として、表向きは米沢さんの代わりとしてのサイバー課担当として暗躍する。
私の感想だが…青木年男のキャラ設定及び暗躍、社のヤロポロクネタは相棒のストーリー上の大失敗だと思われる。前振りばかりで気分の悪い小ネタばかりの青木、どうにもならないロシアスパイ(結論のでようがない)ネタの社は正直冠城亘のダイナミックさや利口さを奪い足を引っ張ってしまった。ファンは相棒(杉下右京と冠城亘)の活躍、または気持ちの良い仲間(米沢、暇課長、捜一トリオ、大河内さん)の活躍が見たいのであって…気持ちの悪い小物が増えても視聴率が下がるだけだろう。(事実確か下がり始めた…)。
故に最終話「悪魔の証明」はまるで駄目だった。青木のつまらない小物ぶり、どうにもならないネタにこだわり、諍いを起こす相棒。あの程度の嘘で逃げ腰になるなら端から問題視しても結論など出るわけもないロシアネタ。確かに冠城亘を杉下右京の正義と反目させて、キャラ立てしようとするのは分かる。杉下右京の正義と考えが違っても、その能力の高さへの尊敬から相棒でいられるのは確かに強い。バランサーである官僚出身らしい。だが…それが最終話でネタとして残り…何も繋がらなかった。故に駄目なのだ。不信感や気持ち悪さが残る。官房長がつぶすのとは訳がちがう。
ただ…縦軸が駄目でも横軸としての各話の作りは悪くない。冠城亘自体が万能型だけにシリアス、コメディ共に対応でき、バランスよく作られている。第1話「守護神」はいきなりのオカルト回であり、不可思議な呪いによる殺人がとてつもない悲劇の連鎖であると言う結論、そして杉下右京の敗北と言う衝撃のスタート。大女優山本陽子さんの枯れた演技がまた良い。(罪人を裁けないのは右京さんの敗北。救えなかった…涙)シリアスな悲劇で選べば、第7話「フェイク」。安達祐実さんが難しい役を演じ、誘拐劇としてのミステリーサスペンスとして新しい(信用できない語り部を含む)上にラストの悲劇性が凄まじい。コメディかと思われたが悲劇として解明される第2話「チェイン」。一本のシガーを手掛かりに特命係二人が人探しをする冠城亘特命係初の事件。過去の悲劇を結果暴いてしまう。
コメディ回としての第3話「人生のお会計」、第4話「出来心」この2話は俳優さんありきの回。3話は古畑任三郎でもお馴染みの石井正則さんが余命を言い渡されたサラリーマンを演じ、無茶をしまくるネタ、4話は名優風間杜夫さんがケチな詐欺師を演じて笑いを誘う人情喜劇。第6話「嘘吐き」は被害者はたまったもんじゃないけど、怖いアパートの謎を追う回。全員が…で。コメディよりだけど人情ドラマに近いのは第17話「ラストワーク」。迷惑系のYoutuber問題から、実は一人の男の家族を思う人情ネタだったと言うこちらも俳優渡辺哲さんありきのお話。また人情ネタとして笹野高史さん演ずる前科者が匠な第12話「臭い飯」も俳優さんありきか。食品偽装ネタと前科者再雇用を巧みに組み合わせたシナリオも魅力。
ただ…人情もので今シーズン最高峰は角田課長主役回第9話「あとぴん〜角田課長の告白」。旧友の死から友情と恩師への感謝をノスタルジックに描いた珠玉の一編。ミステリーとしての小物(銀塩カメラ、フィルム)の使い方が巧みでゲストの相島さんの演技も見事。この方、官房長官役を後のシーズンで演じますが、圧倒的にこの回の役が似合ってます。
定番ですが…杉下右京の正義が発動する回が第8話「100%の女」。法務省の有能検事に鶴田真由さん。罪は罪、進退は犯した罪人が決める…遂に法務省日下部事務次官を敵に回す右京さん。(敵がいない為無理やりな気も…16の前振りにはなりますが…中途半端でしたね)。副総監を完全に敵に回す回が第11話「アンタッチャブル」。娘さんが目撃者に…とは言え、そんな怒らなくてもと言う感じでこちらも無理やり気味(大杉漣さん死去により副総監のキャラが変わってしまい、この前振りも中途半端に。)
更に無理やり映画版の因縁を作ったのが第13、14話「声なき者 籠城・突入」。映画版見ましたが…これあんまり効いてないよね。見なくても理解できちゃうし、この回をみたらお仕置きが足りない…。因縁の菅原大吉さん演じるDV野郎の集いはどうなったの…みたいになるし。ただ…籠城ものとしてのミステリーとしては巧みに出来ていて、だれなん?何故?動機は?とかなり気になり面白い。
ギミック部分で絵画、贋作と言うギミックになりやすいながらも新しいネタが面白い第5話「ブルーピカソ」。謎解きメインで語るため逮捕シーンが無いんですよね。また目が見えないと言う良くあるギミックをこちらも新しい視点で描いた第15話「パスワード」。純愛回でもありましたね。
で…サスペンスギミックとして最高峰はジョーカー並みの犯罪者が出てくる第10話「帰還」。ジョーカー対BATMAN対杉下右京(笑)これかなり異色な回で完全な愉快犯、快楽犯罪者がでてきてますからね。向こう側へ冠城亘を引きずり込もうとするあたりが、ダークナイトでしたね。向こう側と言えば快楽殺人者が成長してしまう…野間口徹さんが至高のシリアルキラーを演じた第16話「ギフト」もお気に入り。圧倒的な殺人鬼の凄まじさがたまらない…そしてその殺人鬼の弁護士である連城こと松尾諭さん。松尾諭さんのキャラがまたたまらなく、セミレギュラーになるのは当然か。右京さんとの対決も楽しみです。
結果として相棒の縦軸としてのストーリーに絡んでくる方全てが結果的に中途半端な因縁と絡み方になってしまい、失敗してしまってるのが冠城亘編の残念なところなんです。青木、副総監はコメディコンビになり、青木は退場。日下部さんは冠城亘への愛情が勝って中途半端に消えました。社は内調で中途半端な敵味方に。全部失敗してるから、冠城がいなくなり、目立たなくなってます。冠城亘、反町隆史が悪いわけでなく、全体のプロットと調整する役目の方が上手くないんですよね。その部分を差し引いても、良い回はあるし、他のドラマに比べ面白いのは間違いないんです。1話単発の刑事ドラマとしては間違いない品質です。是非差し引いて楽しんで下さい。