本家「ゲーム・オブ・スローンズ」が王座をめぐる争いを描くアクションファンタジー作品なら、その前日譚にあたる今作は同じHBO作品「サクセッション」の系譜に連なる政治ドラマと言えるだろう。ただ、要所要所でGOTらしい凄惨な描写が顔を覗かせ、観るものを飽きさせない。
シーズンを通して出産シーンが印象的なことから分かる通り、今作の大きなテーマには「家」と「家父長制」、そしてその中に埋め込まれた「世継ぎを産む器」としての女性たちをどう描くか、というのがある。
これは本家GOTで描けなかったテーマで、同時にバックラッシュを浴びたポイントにも近いところがあるので、制作陣としてこの辺りに焦点を合わせて作劇していくことは悲願だったのかも。トキシックさと親愛が混ざったレイニラとヴィセーリスの関係、子供を駒として扱うオットー、そして言わずもがなのレイニラとアリセントの愛憎入り交じった友情（？）など、その辺りのさじ加減が本当に絶妙で重層的。人間ドラマとしての完成度の高さにも思わず舌を巻く。
GOT最終シーズンのしょぼくれ方もあって観る前はあまり期待してなかったのだけれど、予想に反して素晴らしい作品だった。自分の見る目のなさにはがっくりくるけど… 本家を観たことのない人にとっても十分楽しい作品だと思うので、未見の方は是非ここをゲートウェイに…！
