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エルピス—希望、あるいは災い—のgreendavidのレビュー・感想・評価

4.4
日本のテレビメディアの裏側、そして冤罪事件を巡って司法制度や警察、はたまた政治の欺瞞に迫った挑戦的なTVシリーズ。制作の過程ではたくさんの障害があったと聞くが、最終的に地上波での放映にこぎつけた制作陣の努力と胆力には脱帽するしかない。撮影や演出、劇伴のレベルもかなり高い水準にあり、プロデューサーを務める佐野亜祐美の確かな仕事ぶりには毎回驚かされるばかりだ。
で、この作品が他のリベラルの内輪ノリ的なボンクラ映像作品と一線を画するのは、こうした政治的テーマは今作を構成するひとつの要素でしかなく、作品の主眼は人間として如何に”真っ当に”生きるかという点に置かれているところだと思うのだ。このテーマを浅川・岸本・村井という3人の主人公を用いて描いていくのだが、ひとつのTVシリーズとしても、社会問題への意識を喚起していくにしても、最も親しみやすく間口の開かれた効果的な手法だなと改めて感じた。こういう作品がもっと増えてほしいな。

(少しネタバレになるが、今作のストーリーは2020年9月に幕を閉じるという設定になっている。これが例のあの人が日本の首相の座を降りた時期とぴったり一致するのはおそらく偶然ではないだろう。忖度を繰り返し「自分自身が本当に伝えたいこと」から目を背けることを止めた3人が再スタートを切るタイミングとしてはこの上なく、こういう細かい目配せの効いた演出が今作では他にもズバズバキマっている。)
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