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シー・ハルク:ザ・アトーニーのSQURのレビュー・感想・評価

4.0
面白い。
Filmarksでは現在3.7、IMDBでは5.1と、はっきり言ってかなり不当な評価を受けてるドラマです。
原因としてはおそらく3つ。
まず、「派手なアクションがないし、ヒーローの話でもない」という点です。ドラマ中盤で展開される裁判要素は、SF世界を舞台とした裁判ものコメディとしてよくできています。魔術の使用権を巡った論争など、特殊設定ミステリー好きであればきっと気にいるはずです。またMCUのキャラクターを使用していることでおかしさも倍増しています。惜しむらくは、ドクター・ストレンジやスター・ロードなどの主役級キャラを引っ張ってこられなかったところですが。このノリだけでももう何話か作って欲しかったですね。というわけでコメディとしてはよくできてるのですが、「正義のためにアクションするヒーローもの」以外の物語に対する感受性の低い視聴者には面白みがわからなかったのかもしれません。
次に、メタ的な要素の部分も評価の分かれる点でしょう。画面に向かって話しかける演出は私もやや苦手ですが、『フリーバッグ』よりもしっかり抑制されていて演出として馴染んでいたように思いました。また、終盤の展開については、自己言及的に「2つのアイデンティティに悩むというテーマのドラマ」と言っていましたが、確かにこの部分は達成できていません。しかし、それは、MCU自体がときとしてテーマに向き合いきれず、超展開によって観客を驚かすことで誤魔化してきたことに対するメタ的な自己批判としてあえて回収しなかったとも言えそうです。また、そうして「超展開」として用意された『スタンリーパラブル』的(?)なメタ要素も、取ってつけたようなものではなく、ちゃんとウィットに飛んでいて面白いものでしたので、私としては手放しに褒め称えてます。
さて、Filmarksの3.7とは「やや受け入れにくいところもあり、でも基本的には面白い」くらいの点数です。以上のことからすると、私としては不服ですが、妥当な評価とも言えなくはなさそうです。
ですが、IMDB5.1は違います。IMDBの5点台は通常誰にとっても見るに値しないほどひどいドラマに与えられる点数です。私の感覚的には、このドラマは8点前後が妥当に思えます。ではその差分の3点はどこから来るかというと、お分かりだと思いますが、ミソジニーです。この作品は”悪しき男性性”に対する皮肉が頻繁に出てきます(テーマと言ってもいいのですが)。といっても、攻撃的ではなく、穏やかな口調で、ほとんどの人にとってはコメディとして自然に受け入れられるものなのですが、一部の熱心なミソジニストにとってはどうも受け入れ難いもののようです(嫌なら見なければいいのに……あ、見ないで評価してるのかもしれないですね!)。

ということで久しぶりに面白いMCU作品でした。
ネットの謎のヘイターに負けずにぜひ観てほしいドラマ作品です。
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