あくとる

ムーンナイトのあくとるのレビュー・感想・評価

ムーンナイト(2022年製作のドラマ)
4.5
"スーパーパワー"

完結したので改めて感想を。
結論、MCUのドラマでは断トツで好き。

MCU史上最も暗く悲しく"病んだ"オリジン。
個人的には最も感情移入できるヒーローの誕生が嬉しかった。
なぜなら自分は多重人格ではないものの、精神的な問題を抱えやすいタイプの人間だからだ。

特にEP4~6の構成は非常によく計算されていて隙がない。
EP1からEP4前半までの少しゲームっぽさ(作り物らしさ)も感じさせる順序立ったストーリー運びに、最初は脚本の不出来だと思っていたが、それを根底から覆す衝撃の展開。
感じた"作り物らしさ"は意図的であったことに思わず唸らされた。
続くEP5はマークとスティーブンの過去にひたすらフォーカスを当てる。
ここでのオスカー・アイザックの演技が素晴らしいとしか言いようがなく、鳥肌が立つような切実さで胸を打つ。
そして、EP6では自分の過去とついに向き合ったマークがヴィランであるハロウと最後の戦いになる。
ヒューマンドラマとしては素晴らしい一方で、ヒーロー作品としての物足りなさを少し感じていた自分の不満を補うように、EP6では観たかったムーンナイトのアクションをこれでもかと披露してくれて、まさに至れり尽くせり。

本作の勝因はなんと言ってもオスカー・アイザックとイーサン・ホークの起用につきる。
この2人の高い演技力によって画面のリッチさと、アメミットの「未来の罪人を裁く」ことの是非という深いテーマに説得力をもたらせていた。

既に沢山の作品を産み出してきたMCUだが、新たな可能性をまだまだ秘めていることを感じさせる堂々たる作品。
MCUの他作品とほとんど繋がりがない作品なので予習も不要。
病んだ作品が好きな人には強くオススメする。
病みもまた生き抜くための"スーパーパワー"なのだ。