あくとる

一流シェフのファミリーレストラン シーズン1のあくとるのレビュー・感想・評価

4.5
"生業"

全くノーマークだったが、大好きな『アトランタ』のヒロ・ムライ氏が関わっていると知り鑑賞。
なんとも興味のわかない邦題で損している。

一流レストランのシェフだったカーミーは、自殺した兄のレストランを継ぐことに。
カーミーはレストランを存続させるために、個性豊かなスタッフたちと様々な困難と向き合う。
というのが大まかなストーリー。
基本1エピソード30分前後ということもあって、非常にテンポが良くサクサク進む。

冒頭から畳み掛けるようなテンポ感のラフでタフな会話の応酬に引き込まれる。
調理場もとい"現場"だからこその熱狂が見事に表現されている。
新人いびりは典型的だが、こういった職場のイザコザ、従業員同士の不和といった問題はどんな職場でも必ず起こることであり、多くの人に響くテーマではないだろうか。
特筆すべきは何と言っても第7話。
ひたすら怒りが高まるカオスな調理場を、臨場感のあるワンカット長回しで映し続けるのが衝撃的。

評価の高い本作だが、その要因はメンタルの問題を大きく扱っていることにあるだろう。
カーミーが経験した、並のブラック企業じゃ敵わない一流レストランのハードな世界で受けたトラウマ。
そのプレッシャーも原因なのか、アルコール依存症にもなっている。
陰の部分をしっかりと描いたことでキャラクターに深みが出た。
こうした日常にある辛い出来事をまざまざと描くのはヒロ・ムライの功績な気がする。

当然ながら出てくる料理は実に美味しそう。
観ていてお腹が空くので注意。