うさこ

ダーマーのうさこのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
3.8
ダーマーという連続殺人犯をライアン・マーフィがエヴァン・ピーターズ主演でドラマ化。この二人の組み合わせといえばアメリカン・ホラー・ストーリーであり、第5作の「ホテル」には、まさにジェフリー・ダーマーが登場するエピソードがある。

しかし、本作はダーマーをフィクションのキャラクターとして描くのではなく、ドキュメンタリー調でおぞましい殺人に至る経過と、その後の被害者の悲しみを描いた。特に、聴覚障害者トニーについては生い立ちから、愛に包まれた家族の様子、彼の未来への希望、それを理不尽に断ち切られた様子を1つのエピソード全部を使って丁寧に描写することで、ドラマが伝える悲しみはより深くなった。愛情豊かに育った人とそうでない人の差が、残酷なまでに浮き彫りになったエピソードでもあった。

ここまでひどい殺人事件が起きてしまったのは、一つは彼自身の生い立ちであったわけだけれど、(放置しておきながら、動物の死体解体を教えるという最悪の父親であった)それとともに、有色人種に対する差別と警察の不作為があったということを初めて知った。ダーマーが有色人種ばかり選んで殺人をしていたのは、彼自身が黒人の命を軽んじていたこともあるだろうが、最も大きな理由は彼らが消えても警察が捜そうとしないということを長年の経験で学んでいたからだったのだ。このことを伝え続けるためのドラマ化だったのだろう。
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