Nella

グリセルダのNellaのネタバレレビュー・内容・結末

グリセルダ(2024年製作のドラマ)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

今週からだそうで嬉しいんだけど、以前楽しみに待ってたメキシコのドラマが当日配信されなくて慌てた事があったので、本当に配信されるのか心配。ネトフリのチャットにまで聞いてしまったんだけど、日本語版の予告編作ってあっても当日になっても、日本での視聴率が見込めない場合は配信取りやめになる事もあるそうで…。(結局そのドラマは少し時間遅れて配信されたんだけど)
無事に見られたら追記で感想書きます。

【以下追記です】
無事に始まりました。「ナルコス:メキシコ編」のS3にイスマエル“マヨ”サンバダ役で出ていたアルベルト・ゲラが出ている…というのは知ってたんですが、冒頭からヴァネッサ・フェルリトが出てきてびっくり。タランティーノの「デス・プルーフinグラインドハウス」で、ビーサンでラップダンスを踊った女の子だよ。歳取って益々女っぷりが上がった感じで良いですねえ。
あっみんな大好き「ナルコス」S3パチョ役のアルベルト・アンマンも出てるし「メキシコ編」ナバ役のエルネスト・アルテリオも出てる。豪華キャストだ〜
全部見終わったらまた追記します。

【追記】これは間違いなく傑作。そもそも麻薬王を英雄視し、麻薬戦争をエンタメ題材として消費していいのか…という問題があるけど、「ナルコス」シリーズは、ありがちなエロと暴力を極力排除し、キャラの人物像や人間ドラマに焦点を当てて成功した。まあ排除しないと、エロ暴力が過剰になり食傷するという問題があったと思う。そしてほぼ製作陣が同じの今作もその路線で、エロ暴力は抑え気味に、グリセルダの人物像をフィクショナルに作り込むことで成功している。
ちょっと話逸れるが「ナルコス:メキシコ編」に登場する架空の女ナルコ、イザベラにモデルがいるそうで、もしかしたらこの人かも?詳しく調べてないのですが。女達に小分けにしてコカイン運ばせる所とか、頭の良さと度胸、売春婦上がりで舐めた辛酸から男を憎み、この屈辱を倍返ししたるわ!という根性が似てると思う。
この作品ポリコレ的にも非常によく出来ていて、一種のフェミニズムドラマでもある。女刑事ジューンと麻薬王グリゼルダ、対照的なふたりが男社会で信念を貫く困難さをも描いている。
てか、【女を嗤う男はインポ】という説は、私も随分前から唱えてるんですが、ジューンが全く同じ事言ってて笑った。職場で彼女の乳首をからかって嗤う男達は小学生にしか見えないし、小学生は個人差もあるけどまだ勃起できないもんね…女とまともな性交渉が持てない幼稚な男が、女を攻撃して嗤うという証拠だと思う。

ジューンは男社会での扱いにうんざりしつつも、ホモソの利用方法にも長けていて、同僚刑事に「『女の同僚なんて面倒だ』と情報屋に愚痴をこぼせば、仲良くなれて口を割るはずだ」とアドバイスする所など、こんな場面が今までの麻薬戦争ものや刑事ものにあっただろうか?と思うぐらい、女性にとっては本当あるあるな共感ネタなんだよね。
グリセルダは、子供を養うため、生活のためと言いながら意地で段々と後に引けなくなり、麻薬戦争に自ら身を投じていく訳だけど、同系の作品に「ブレイキング・バッド」がある。しかし主人公が勝利のマチズモに酔って止められなくなるのとは違い、やはり女性はどこかに「男への復讐」があるのよね。男社会とか、男が象徴する権力への復讐。そこが他の麻薬戦争ものにない面白さだと思う。女性だけれど成功して昇りつめると疑心暗鬼になり結局はヤクで破滅するのが、男性の麻薬王と同様でまた面白いなと思います。
あと、グリセルダが移民に靴を買ってあげたりするのが偽善的に映るのでは…という心配があるのでついでに書いておくのですが、メキシコのヘスス・マリベルデのような「義賊としての麻薬王」という伝統が背景にあると思います。彼らには金持ちになったら雇用を作ったりして民を養うという責任があり、それは本来ならば、国がやらなければいけない事である。国がやらないから仕方なく麻薬王がやっている、という側面の表現だと思います。”Mi madoirna”(名付け親)という呼び名も、「親は名前を付けたものに対して責任がある」という意味なのだと思います、たぶん聖書の創世記とかからきてると思う。立場の弱いキューバ移民を利用した、という点は否めないけど、同郷の男達からは「女はビジネスの相手にならない」とホモソでハブられて、仕方なかったと思う。
(マリエル移民のwikipediaとか読んでも何で12万人も亡命で流出したのかよくわかんないと思うので、カストロの圧政についてはレイナルド・アレナスの「夜になるまえに」がおすすめです)
リヴィのキャラは面白かったですね。カリフォルニアで東洋思想にでも被れたのかしら。アメリカに生まれてたら美大に行って詩人にでもなってたでしょうね。
アルトゥーロもだけど、グリゼルダの女の部分ではなく、カルテルのボスとしての才能を慕う男達もいた、っていうのがなんか羨ましく思います。

ところで、「ナルコス」のコロンビア編にも出てきたオチョア家の娘、マルタ・オチョアの夫がラファという事でいいんですかね、ファビオも出てくるし、こういう感じで「ナルコス」の裏で何が起きていたのか…みたいなマルチバース展開で、他にもリミテッドシリーズを作ってくれないかなあ。
「エル・チャポ」があまりにも…「ナルコス」からイケメンを全撤去した地味さで辛かったから…
Nella

Nella