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ハケンの品格のzukaのレビュー・感想・評価

ハケンの品格(2007年製作のドラマ)
3.8
時代を感じる作品。

いつ契約を切られるか分からず奴隷のように扱われる〝ハケン〟社員と、いわゆる大企業に属する出世第一の正社員との間に起こる出来事を描いたドラマ。いまや終身雇用崩壊が叫ばれる中で、この作品は10年前ではいかに「大企業に属し続けて出世をすること」が世の常人の憧れだったのかを映し出している。

特に象徴的なのは、森や小笠原をめぐるエピソードである。保存媒体がCDであること、重要な記録がデジタル化されていないことなどから、現在であればツッコミどころ満載なエピソードが次々と現れる。

一方で、現代にも通じるようなメッセージも含まれている。一企業に迎合するような人生を送るのではなく、個人としての自分を信じ、1人でも生きていけるようなキャリアプランを立てるべきだとの主張が受け取れる。大前春子がそうであったように、社会は時として私たちを裏切ることがある。だからこそ、社会は基本的に裏切るものだと腹をくくって生きていくことは至極当然のことであるように思える。これは現代でも通じる、むしろ最近になってより流布してきた主張であり、興味深い。

本作品を通して、2人の派遣社員は、〝ハケン〟ではなく大前春子、森美雪として生きるようになる。大前は、会社に裏切られたことから人間までをも疑うようになってしまっていたが、S&F社員との仕事を通じて人を信じる大切さを思い出す。森はそもそも社会を知らないところからスタートし、一度裏切られかける経験を通じて会社を盲信する愚かさを学ぶ。2人とも、方向性は逆なれど、社会との歩み方を学んでいたように思える。

作品を通して、篠原涼子の一貫した演技と、大泉洋の(素の?)演技が素晴らしかった。エンディング直前のフラメンコの音楽がシュールさをかきたて、篠原と大泉のやりとりをコント化している。随所で挿入される効果音や、大前の口グセ「それが何か」が本作品を思い出させる導入剤になることは間違いない。
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