鹿山

ゲーム・オブ・スローンズ 最終章の鹿山のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます












はぁ……徒労。徒労に次ぐ徒労。革命の暴走と内部崩壊。民族/人種主義のファシズムへの転換。マイノリティ連帯の不可能性。斬新な終幕だって?ばかを言うなよ……これまで僕達が散々味わってきたご恒例のやつじゃないか!北欧神話やファンタジー小説から暗喩を解読可能らしいが、無学なヒップホップ・ヘッズである僕の眼には、アフロ・アメリカンの各種アクティヴィズム(ネーション・オブ・イスラム~ブラックパンサー党~ヒップホップ~Black Lives Matter)がオーバーラップしたよ。わざわざ、僕の音楽観のバイブル『ジェフ・チャン - ヒップホップ・ジェネレーション』なんぞ開かなくても、『スパイク・リー - ドゥ・ザ・ライト・シング』を観ている君達ならわかるはず。「またこれかよ!」ってね。
(ちなみに音楽家/文筆家:菊地成孔曰く、マルコムXの演説はヒトラーを参照している形跡があるらしい。歴史はデナーリス女王をどのように判断するだろう?)

放送当時のバックラッシュや署名運動もとんだお笑い沙汰だね!君達にとって第6シーズンはなんだったんだ?神話が茶番だった、その腹癒せに投石するファンとやら、まるで劇中にみた愚衆じゃあないか!血統主義、階級制、男性中心主義、全体主義、宗教政治、すべてをひとつずつ去勢していこうが、「玉座」が存在する限り、人間の愚かしさは変わらない。当然じゃない、そんなに悔しかったかい?

あぁーーもうたくさんだ!本シリーズともようやくおさらばできる。全73話だぜ?毎回毎回似たような雁首ばっかり揃えやがって、僕もとっくにウンザリだったんで清々したよ!せめてもの報いだ、たかが洋ドラ一本ごとき、寝て起きてスッキリ忘れてやる!それじゃ、あーーーばよ!!はははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

はははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

はははははは……はははは………………。

……はは、なんでだろ、サムウェル・ターリーがジョン・スノウに見せる笑顔が離れない。アリア・スタークの勇ましい眼も。ティリオン・ラニスターの過剰なまである饒舌さや、サンダー・クレゲインのぶっきらぼうな優しさも。
本作が大衆の癪に障った理由はバッド・エンドだったからじゃあない。「図星」だったからだ。本シーズンは風呂敷を畳んでいくというよりかむしろ開陳、手品の種明かしに徹する。ティリオンによる「人々を繋げるのは物語」「選択肢がある」という発言や、ドロゴンが最後に下した判断は、さすがにメタメタしすぎる。が、誰も反論できまい。ここまで楽しんじゃったんだから。本シーズン第3話『長き夜』を最高傑作とする声が大半を占めているが、僕はその後、敵を失った共同体の空中分解を描いた第4話~第6話にこそ真骨頂があると考えている。個人的MVPは第5話『鐘』。物語としては無論、演出面においても途轍もない。

前述のとおり、このドラマ・シリーズはあらゆる旧態依然とした主義趣向、すなわち「物語をひとつずつ降りていく物語」であった。ならば最期に「ゲーム・オブ・スローンズ」という物語それ自体を降りていく、この有耶無耶な後味は運命付けられていたというほかない。僕らはまた、「物語」に負けた。ならどうすれば?ヒントは、戦のあと未開の地へと足を向けたアリア・スタークとジョン・スノウにあるはずだ。これは世紀の問題作というよりは、視聴者全員に与えられた宿題。決して容易ではない。僕は次の一文を書きあぐねている。
鹿山

鹿山