「渡る世間は鬼ばかり」は決して一人で観てはいけない。
なぜかと言うと、実に頭に来る連中がわんさか出て来るからだ。
観てるだけでカッカして来る。
そしてイライラして血圧が上がる。
だから一緒に観ている人と「あーでもない、こーでもない」と言い合って、ストレスを発散させなければならないのだ。

本作は岡倉家の５人の娘たちの悲喜こもごもを、48話という長い長い時間をかけて丁寧に描いている。

まずは何と言っても次女・五月(泉ピン子)一家だ。
ご存知、ラーメン屋「幸楽」である。
もしかしたら日本中で一番有名なラーメン屋かもしれない。
さらに有名なのは姑・キミの鬼っぷりだろう。
よくもまあ、あそこまで憎らしい姑を演じたものだ、赤木春恵。
とてもじゃないけと、桜中学の校長先生と同じ人物とは思えない。(by 金八先生)

小姑たちも最悪だ。
この二人の小姑・久子と邦子が出てくるたびに、私の血圧は200まで上がる。
実に心臓に悪い。
演じるのは、憎まれ役をやらせたらピカイチの沢田雅美と東てる美だ。
何かにつけて「遺産相続」の権利を振りかざし、文句を言い金をせびりに来る。
そして更に上を行くのが久子の旦那の健治である。
金の亡者だ。
この男が出て来るたびに、画面に塩を撒きたくなった。
とてもじゃないけど、1年B組新八先生と同じ人物とは思えない。(by 岸田智史)

しかし、この男よりタチの悪い男がまだいた。
長女の弥生(長山藍子)の旦那・良の前田吟である。
専業主婦で家事に追われる嫁を「三食昼寝付き」と罵り、家事や子育てを一切手伝わずふんぞり返っている。
縦のものを横にもしない横着っぷり。
気に入らないことがあると、すぐ怒鳴り散らす。
そして手も出る。
普段からそんな父親の様子を見ている二人の子供たちも母親を馬鹿にして、家政婦代わりにしか思っていない。
憎まれ口の叩き放題、当たり前のように母親をアゴで使う。
高校生の娘も中学生の息子も家事を一切手伝わない。
普段から何もやらせないので出来ないのだ。
掃除機すらもかけられない。

弥生が急用で出掛け、晩ご飯の支度が少し遅くなっただけで、旦那は烈火のように怒り、散々文句をたれたあと、バタバタと夕飯の支度をしている弥生の横で「寿司でも取ろう！寿司！特上寿司だ！３人分！」と言って自分と子供たちのぶんの寿司しか取らない。
最低である。
嫁のぶんも取れよ！
私はこの冷血ぶりに「私だったら即離婚だな」と思った。
食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
とてもじゃないけど、さくらの旦那のひろしと同じ人物とは思えない。(by 男はつらいよ)

まだまだある。
まだまだあるけど全部書いてると恐ろしく長くなりそうなので、今回はこの辺で勘弁してあげよう。
三女の文子(中田喜子)、四女の葉子(野村真美)、末っ子の長子(藤田朋子)にもひとこと言わせていただきたいが、それはこの次、第２シリーズを観た時のために取っておこう。

しかし、悪役がこんなに生き生きしてるドラマはなかなかないと思う。
気持ちいいくらいの悪役っぷりだ。
よくもまあ、こんな憎々しいドラマを書いたものだ橋田壽賀子。
ドラマを観る前と観たあとでは、私の血圧は確実に2〜30は上がっているはずだ。

今回の第１シリーズの一番の鬼は、やはり前田吟だろう。
彼には「食べ物の恨みは恐ろしいで賞」を捧げよう。
次のシリーズではどんな賞が出るのか楽しみである。

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文句ばかり書いてしまったが、最終回ではボロボロに泣いてしまった。
岡倉家の父・大吉(藤岡琢也)と母・節子(山岡久乃)は最高である。
特に山岡久乃の最終回での圧巻の演技。
それを観ただけでこの第１シリーズを最後まで観て良かったと思った。
母さん、あっぱれ！である。

• #ながいよ

このドラマは勿論知ってるが、さすがにシーズン1は初めてだから何気に見たら、予想を上回っておもしろかった。

当時の価値観の古さにギャップを感じつつ、今も各家庭に起きているエピソード自体は、さほど変わらない気もして逆にびっくり。頭では分かっていても、色んなことが、まだついてきてないんだなと思ったりした。

そんな中、絶対に再現できないのは、やはり岡倉夫妻。山岡久乃（私の叔母にそっくり）の絶妙な良さは前から分かっているつもりだが、驚いたのは藤岡琢也。一挙手一投足に深さと軽妙な相反する独特の味わいがあり、小さなシーンでも笑い転げるほど感動した。例えば、第6話で五月が幸楽から実家にテイクアウトした中華おつまみ各種をあてに昼飲みするシーン。一つひとつのしぐさ、セリフ、間合いが絶品で、ここだけでも何度も観たくなる。その前の第5話で、酔った前田吟を引き連れて三田村邦彦のマンションに押しかけるシーンも良かったな。「いやいや悪い酒だね、あんた、ちょっと」の言い方が最高! そんな連続

しかも華やかなのに、大仰さ派手さ説教臭さが全くない。なんて洗練された自然体なんだ。そうか、落語の世界を軽々と体現できる人なんだな。藤岡琢也って、こんなに魅力的な役者だったのか。はっきり言って昭和の宝だと思った。

長子の服装や髪型がバブルだわ。

節子3大語録
・バカバカしいったりゃありゃしない！
・淋しい思いはさせやしない！
・知りませんからね！